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異きのこる  作者: 紅天狗
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八十九日目(後半)

一時避難先である俺が居る木の洞へと戻ったイリ。そして疲れ切った状態のミール。ミールをこんなにも疲弊させるとはビアダルオヤジめ、いずれ後悔させないとな!

俺が口を開き二人を受け入れる。ミールの顔が面白いように恐怖に歪んでいる。


二人を引き入れ、とりあえず口を閉じる。いつもの様にイリが魔法を行使。光の魔法だ。小さな光体が口腔内に浮遊し内部を照らす。ひとまずミールを拘束しているボンテージを外していくイリ。うーん、ちょっと残念。


説明は後にして、落ちた体力の回復を促す事にする。と言うことで口腔内の肉壁にミールを押し付けて貰い、触手で覆い体を固定する。触手から治療粘液を染み出させ、治療開始。

食事は大量に摂取させられていたはずなのでしばらくは保留だな。


『ミール、ここにいればひとまず安全よ。まずはあなたの体をこの子に治療して貰うわ。その後、この場所から引き揚げる。話は引き上げた後にしましょう。とりあえず暫く眠りなさい。疲れてるでしょう?』


『イリお姉さま・・・あの、本当にここは安全なのですか?どう見ても魔物の腹の中なのですが・・・。』


『ええ、この子は私と協力関係にあるわ。危害を加えればどうなるかは分からないけど、何もしなければ何もされないはずよ。』


『はい・・・判りました。あの・・・ごめんなさい・・・もう・・・』


『ええ、また起こしてあげるから。今はゆっくりして。起きたら沢山飛んでもらわないといけないわ。』


『はい・・・おね・・・さ・・・』


肉壁が気持ちよかったのか、意識を手放したミール。この子は暫く安静にする必要があるだろう。数日だがあんな場所に囚われて居たんだしな。何らかの心の傷を負っている可能性が高い。


『さて。あなた。本当にありがとう。あんなに早く見つけ出して、こんなに早く街から助け出してくれるなんて思ってなかった。』


『花妖精のイリ。この度の恩、命を懸けてあなたへお返しします。』


なんかキリっとしつつ朱の刺した顔で語り掛けて来るイリ。舌を使って頭を撫でる。いや舐めた。ベチャっと粘液がしたたり落ちる。フフっと笑い、舌に抱き付いてくる。好感度アップ来たわぁぁぁ!


『さてっと。とりあえずミールの体力回復はしばらくかかるでしょうけど、飛ぶだけなら数時間もあれば大丈夫になるわ。この場から引き上げるのは決定ね。元の場所に戻る?』


うーん、少し場所を変えた方がいいかもしれない。ほかにいい場所ってあるんだろうか。


『何か所かは見つけてあるわ。私たちが移動した後に紫を迎えに行きましょう。人間がミールを逃がした事に気付いて追いかけて来る可能性が高いし。どうしたらいいかしら?』


とりあえず早急に伸ばした菌糸を回収中。あと30分もすれば回収が終わるので、終わり次第俺を持って移動して貰う事を伝える。ミールはそのまま内部で治療すればいい。


『そっか、ミールに飛んでもらう必要は無いわね。うん、じゃあ準備が終わったら移動しましょう。』


20分後。一応少量の菌糸をギルド施設内などに残して状況を監視。どうやらビアダルマスターはあの後、最後までお楽しみの上、秘書を下がらせた。一服してから隠し部屋を確認。ミールが居ない事に気付き、大声をあげて発狂。

隠し部屋にあった金銀財宝をぶっ飛ばしつつミールを探す。居ない事を理解した後、お楽しみ部屋へと駆け戻り、誰かを呼びつける。


来たのは強そうなオッサンや魔術師たち。唾を飛ばしつつ指示を出して見送った後、ドカリと椅子に座る。


ドン!


と机をたたき、コメカミに青筋を立てて貧乏ゆすり。どうやら追っ手を放ったらしい。もう少し撤収に時間がかかるが、まあすべてを回収する必要もあるまい。イリへと即時撤収を伝え、別のポイントへと移動を開始した。


菌糸を離すと制御下から離れる。はやり接続が切れると操作できないみたいだな。残っているのは地下退避管とギルド内部の監視網くらいだ。見つかる事は無かろう。イリの飛行速度はとても早く、人間が追いつけるスピードでは無い。まあ捕まる事はないだろう。


別のポイントに着くと、イリは紫の回収へと向かった。20分もすると紫を浮かせて戻って来る。はええな。あとは周囲の隠ぺい工作を行って俺たちの居場所を分かりにくくし、落ち着いた。


『はあ。これでしばらくは逃げれるはずよ。前の場所とはかなり離れてるから。ミールの様子はどう?』


可愛らしい寝息を立てて眠っておられます。体の治療はもう少し時間がかかりそうだ。捕まった際、相当暴れたのだろう。変な方向に腕が曲がっていたりと痛々しい状況だ。触手を使って矯正しつつ治療している。


『そう、よかった。あなたも疲れてるでしょう?』


いえ、キノコですので。生命力はまだ余裕。魔力が低めと言った所だろうか。


『わかったわ。じゃあ・・・ね?』


と言うことで魔力を補充してもらった。イリのハッスルぶりが凄い。好感度アップが原因だろう。たっぷり魔力の素を頂き、回収。うむ、イリが居るお蔭で魔力に余裕が出来るのでありがたい。


『はぁ・・・はぁ・・・私も・・・あなたが居てくれて良かった。』


疲れたのだろう。そのまま寝入るイリ。口腔内は温かいが、粘液まみれだと冷えてしまう。のでそっと触手で包んで休んでもらう。明日は忙しそうだ。

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