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異きのこる  作者: 紅天狗
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八十八日目

異世界に来て米日が経った。米って字は八十八と書く。なので米寿などは八十八歳の誕生日を祝う。まあ当たり前の知識なので意味は無い。

子作りに関してはあの後も色々と話し合った。托卵管を見せて貰ったり。(つがい)の相手にしか見せる事は無い秘部との事だが、俺は特別らしく問題ないらしい。あんな所があんな風になるんですね。ビックリですわ。

まあ、なんというか、男の象徴と同じような機能を持っている事が分かった。用途は卵を託すために使う訳だが。


大きくしすぎた卵はやはり託す側も苦痛だそうで。普通に考えたらそうだわな。デカい尿路結石が通っていく様なもんだろ。

あと托卵管に刺激を与えると特殊な体液を分泌する模様。薬毒生成の技能で解析を試みた結果、どうやら相手の体を弛緩させる効果がありそう、と言う事が判明。ありそう、と曖昧なのは俺の技能レベルでは正確には判らなかったからだ。


なんとなく、そんな効果がありそう。と言うのは判ったので、多分あっているだろう。

つまりこの体液を相手へと吸収させれば、ある程度大きな卵でも受け入れる事が出来る様になると言う事だ。


生命の神秘ですな。


ちなみに妖精の体に骨は無い。代わりに軟骨のようなもので体格を保っているとの事。なので妖精が死ぬと骨も残らない。この軟骨は骨よりは柔らかいが、力を受け過ぎると折れる。例の分泌物はこれを緩めるのではないかと考えている。

そしてこの分泌物は産卵時、つまり託された側が産む際も体内で分泌されるんじゃないかと思っている。


しかし話を聞くと、元の里では産卵時に骨盤がズタボロになっていたと言うので、母体側は分泌できない可能性もある。なので最悪、お産の際にオス側が与える必要があるのかも知れない。


『今夜もまたお願いね?』


色々と調べるために色々した結果、色々な事になった。今となっては全身マッサージに組み込まれてしまった。まあ元の世界と同じような行為にて子を宿すのが正解であろう事は分かったのでいいが・・・ちょっと節操がないな。

どうも未知の刺激だったらしく仕方ないだろう。元の世界と同じかは分からないが、食欲、睡眠欲、性欲は生命とは切っても切り離せない欲求だし。


『じゃあ行ってくるわね。いいの狩って来るから期待してて。』


今日は肉狩りの日。貯めておいた魔物肉が心もとなくなったので補充する。イリには定期的に周囲を確認してもらっている。ここ最近はめっきりと人間が減った。まあバレないよう注意してもらう。見つかっても返り討ちは余裕だろう。


羽音を立てずにスィーっと飛び立つイリ。羽は動かす必要が無いので殆ど音はしない。不思議な飛び方である。俺は紫に栄養液を与えつつイリの帰宅を待つ。舌管を使えば日向へ紫を移動させることが出来る。そんな訳で紫の世話は基本的に俺がしている。

日光を浴びて気持ちよさそうに花を揺らす。一面雪景色に花。違和感バリバリだ。


まあ真下あたりからは見えないようになっているのでバレる事は無かろう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


しばらくしてイリが魔物を狩って戻って来た。菌魔法で細菌の活動低下を施した後、近場の木の上に作った肉置場へと獲物を置く。魔法で雪をかぶせて見えなくすれば作業終了。


イリが俺の口内へと入って来る。魔法で体温を保持しているため冷え切っている、と言う事はない。イリの表情が暗い。どうしたのだろうか?


『私の居た里の同族が一人、人間に攫われてしまったみたいなの。』


妖精は固まって冬を超える。危険を察知すると用意しておいた別の場所へと移動する。また危険が無いか、最低限の人員を割いて巡回しているらしい。その中で、蜜を上手く集めれなかった子が居たらしく、巡回中に倒れてしまった。もともと監視していた人間がその子を拉致して街へと連れて行ってしまったらしい。


冬を超えれなった妖精は自然の掟に従い息絶える。と言うかどうにもできない。蜜が無いのだ。隠れ家で息絶えたなら弔ってもらえるが、外でだとどうにもならない。


『今の私なら力があるわ。その子を助けようと思うの。』


拉致されたのは五日前と言う事なので、すでに街へと戻っているはずだ。つまり街に助けに行かなければならない。街の防衛体制はどうなっているのか聞くと、魔法による結界が張られているとの事だ。上空から侵入する事は難しいだろう。


『今の魔力があれば街の結界なら壊せると思う。』


しかし結界を壊した後で拉致された子を助けれるのか?

答えは否。結界を壊すだけで精一杯だろう。街に住む魔術師が日々、魔石の大結晶に魔力を蓄えている。それを全て消費させなければすぐさま結界が張られてしまう。


入れたとしても、そのまま結界に塞がれて逃げ道を失う訳だ。


『そうよね・・・人間はいつもそう。自分たちの事しか考えていない。その子、ミールって言うの。体が小さくて、力も弱くて。今まではみんなに蜜を分けて貰ってなんとか暮らせてた。私と同じで里では疎まれてたわ。私とも良く話したの。同じ境遇だから。でも、今年は花が少なくて蜜が上手く集めれなかったみたい。』


『・・・あなたなら・・・なんとかできない?』


ふむ。とりあえず出来るか分からないが、試してみる価値はあるか。とりあえず街の近くで人間に見つかり難い場所は無いか探してくれませんかね。


『!!!・・・ええ、今から探して来るわ!』


あ、人里に近付くから見つからないように注意するように。


『当たり前よ。見つかったとしても私に対抗できるような人間は居ないわ。』


よし、俺もどうにかできないか考えておくとするか。うーん何かいい方法は・・・

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