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異きのこる  作者: 紅天狗
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七十二日目

なんだかんだと日が進み、より寒くなって来た今日この頃。イリは俺から得た精蜜により、高い魔力を維持するようになった。里に帰ったら仲間に泣かれたらしい。その時の落ち込み様はかなりのもの。なので顔をペロペロしてあげたんだが思いっきり叩かれた。鉢ごと倒れてしまいえらい事になってしまったものだ。


あれから何度か人間達がやってきたが、俺たちを見つける事はできない様だった。現在地が木の上10mといった所だしな。太い枝が張り出しているので下からはほぼ見えない。


まあ何度もヤっちゃっていると脅威と見做されて、増員、最悪軍隊を派遣されるかも知れない。そうなったらイリでも対処できないだろう。

なので、場所を特定されないよう行動するようにしてもらっている。あとは極力俺の中で過ごしてもらう。そうすれば探査魔法にもかからない様だし、寝床が特定される事も無いだろう。


『ねえ』


なんざんしょ?


話を聞いてみると、近場に生えていた紫の花の話だった。どうやら寒くなり、また俺が移動した事で誘引される虫が激減。力なく倒れ、萎びているとの事。内側の触手、これまた少し伸ばせるので洞の外へと出して地上へ視線を向けると、ぐったりと倒れている花が一本。


『あれ、どうするの?』


花だし種とか作るんじゃ?


どうやら植物寄りではあるが魔物なので種は作れなくは無いが難しいとの事。

あの種の魔物は植物から変質したタイプ、つまり俺と同じようなタイプらしく一点もの。同じ花から変質した仲間が居ればなんとかなったかも知れないが、一匹だと枯れる運命だとか。


アイツは俺の引き寄せた虫を横取りするヤツだ。枯れてザマァと笑ってやろうと思ったが、アイツが居なかったら精気酵母も手に入れれなかったかもしれない。誘引の事も気付かず飢えて死んでいたかもしれない。

アイツに助けられた。だから今回俺が助けるべきだ。


と言う事で、ヤツも洞に入れて貰えないかお願いしてみた。イリは俺の話の最初の方を聞いて顔を(しか)めていたが、最後は満面の笑みをもって頷いてくれた。どうやら正解だった様だ。

イリに見放されると俺は飢えて死ぬしかないだろう。注意して行かないとな。


とりあえず周りの土ごと鉢植え化してもらう。この洞はそれなりに大きいので紫花と並んでも余裕だ。ぐったりしている花の口へ舌管を持って行き、効くか分からないが治療液を流し込んでみた。

しばらくこれで様子を見る事にしよう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


スリスリ・・・スリスリ・・・


あれから数時間後、紫花・・・面倒なので紫と名付けよう。こやつが元気になった。最初はなんとか動こうとしていた、と言う感じだったが、何度か治療液を提供する事で持ち直した模様。今では前の様に元気になっており、しきりに俺に体を擦り付けて来るように。

どうも懐かれたらしい。それなりに知性があるんだな。魔物ってスゲェわ。


こいつは俺と違って植物タイプみたいだし、光合成した方が良いはずだ。なのでイリに洞の外に判りにくくカモフラージュしてもらった台を枝の間に作ってもらい、そこに置く事にした。倒れないように固定してもらう事も忘れない。


水は定期的にイリの魔法で提供してもらう。適度に日当たりもよさそうだし問題ないだろう。鉢も大き目にしてある。イリに意思疎通の魔法を試して貰ったが、まだ明確な理性は無いらしく話は通じない様子。

まあこのまま育てて行けば何らかの変化があるだろう、との事だ。


ちなみにイリは良く虫と間違われて食いつかれている。毎度、消化兼誘引用の蜜にベタベタにされるので、俺が掃除をする。

なんと言うか、この世界に来てからどうなるかと思ったが、なかなか楽しい生活が出来ているじゃないの。


これから本格的な冬になっていく。冬は俺たち植物・・・菌類は植物じゃなかったかな?

まあ俺たちには厳しい季節だが、俺は魔物でしのげる。紫も光にある程度当てておいて肉などを分けてあげれば耐えれるだろう。雪が降ったら洞に匿えばいけるんじゃね?


どうなるか分からないが、この世界を楽しんで生きて行きたい。俺の傘に腰かけるイリ、視界の先で揺れる紫を見つつそう思った。

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