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異きのこる  作者: 紅天狗
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六十三日目

翌日。果物やらなんやらを集めて貰う。これから冬になるらしいが、食事はどうすればいいんだろうか。イリ曰く、植物は雪の下に埋もれてしまう。花も枯れる。本来であれば秋までに大量の蜜や精気を食べて体内に貯蔵。冬眠するとの事。イリは俺を見つけなければいずれは精気が足らずに狂って死んでいただろうとの事だ。まあ何年ってスパンで見た場合の話の様だけど。


しかし今は俺と言うイレギュラーな存在が居る。冬だろうと肉を食えれば蜜を作り出せると言うチート菌類。なので冬でも活動できるだろうとの事だ。しかし雪の下に埋もれてしまうのは不味い。

イリを寒さから守る必要がある。そうすると発熱するため、エネルギーとして俺の生命力と魔力が必要となる。どれほど消費するかは分からないが、あまり耐えれるとは思えない。


『どうするの?あなたを引っこ抜いて、引っ越しする?』


なんか痛そうなのでご勘弁願いたい。ひとまず何か方法は無いかと考える。そう言えば手に入れた菌魔法って何ができるんだ?

使い方を感じ取ってみる。ほーん、菌類を操作する魔法かぁ。


これってかなりヤバくね?


菌類と言えば黄色葡萄球菌や大腸菌。納豆菌、麹カビ。その他諸々、世界中にそれこそ数えられない種と数が居る。そんなのを操れるのかと。あ、やっぱりレベルが低いとヤバイ菌は操れないらしい。

しかしこれはチート魔法だ。使い方によっては炭そ菌を増殖させて噴霧とか出来る訳だろ?


あとカテゴリ的に菌類と言えない俺も操作対象みたいだな。これって動けるって事かね?

まあ菌類を操れる事はイリに伝えてもピンと来ないだろうし、俺を含む仲間を操作できる事を伝える。


『キノコを操ってナニすんのよ。使えないわね。』


ごもっともです。ただ、キノコを生やして木を腐らせることも出来る訳で、それなりに使い道があるとだけ伝える。


『なるほどね。確かに言われてみれば、そこらじゅう毒キノコだらけにされたら困るわね。』


さて、俺も操作対象と言うことで実際にトライしてみよう。まずは俺が動けるかどうかだ。動けぇぇぇと念じてみるも動かない。うーん、菌糸を伸ばす事は出来るか。あとは作った菌糸の破棄も出来ると。その際少しだけ生命力として還元できるみたいだな。

なかなか効率の良い魔法だ。


あれだな。ここはまた前世の引継ぎし記憶を使う時だ。俺は知っている。移動する植物がある事に。


その名はウォーキングパーム。


読んでそのまま。ヤシの木の仲間。根を地面より幾分か上から生やして伸ばす。それを地面へと刺して行く変わった木だ。

より光が当たる方向に優先して根を張る性質があり、反対側は朽ちさせる事で結果どんどんと光が当たる場所へと動くという。


同じようにちょっとずつ菌糸を生やして引っ張って朽ちさせて行けばいい訳だ。ふふ。完璧である。


『じりじりと真横に動くキノコとかすごい気持ち悪いわね。』


イリが見ている映像を想像してみる。某イタリアの配管工のビアダルヒゲオヤジがブロックをぶっ壊して、亀を蹴って、キノコ食って太ってキノコ食って腹を壊すゲーム。それに出て来るキノコそのものだ。あれだな、二作目に出演した毒キノコがしっくり来る。


すいーっと横に動くキノコ。リアルに考えて欲しい。キモいよな?


魔法と言うだけあって、菌糸を張る速度は自然のそれとは比べものにならない物がある。が、限界はある様で遅い。結果、俺が動く速度はナメクジが這う程度に留まる。


しかしこれは革命だ。動けるキノコとかすごくね?

気付けばキノコが迫って来る。速攻で引っこ抜かれる自信があるね!


まあこれで雪に埋もれる前に木の洞などに退避できる訳で、一つ問題が解決したと考えていいだろう。

イリに木の洞に魔法で植木鉢を作っておいてもらう。洞に直接土入れたりすると木が弱るかもしれないからな。俺たちを守ってもらう訳だから、ちゃんと配慮しないとね。


植木鉢は土を固めるだけなので問題ないらしい。浅めの鉢を作ってもらって、そこに腐葉土を入れてもらう。菌床の出来上がりだ。

移住先の整備が終わったので移動する事にしてみた。


『木を垂直に這って行くのね。あなた、本当に気持ち悪いわ。でも・・・そんな所が好き。』


ディスられてデレられる。ツンデレではない。ディスデレである。

なんか釈然としないが、まあ好かれている事に違いないので問題ない。なんだろうか、何かに目覚めてしまったご様子。やはり出合い頭に舌攻めしたからだろうか。気持ち悪い物が好きになったとか?

まあそれはいいか。


しかしだ。キノコの壁登りとは元の世界ならインターネットのビデオサイトで億越えの再生数をゲットできるコンテンツだろう。キノコスキー眉唾モノだ。


自重でもげないかヒヤヒヤしながら1時間ほどだろうか。なんとか洞の植木鉢へと移動を済ませ、腐葉土へと定着してみる。うむ、生命力の減衰などは起こらないようだ。問題ない事をイリへと伝える。

定期的に腐葉土を補充してもらえば良いだろう。これで雪対策は完了。


ちなみに洞といってもちょっと窪んでる程度。雪がかからないくらいか。

イリに頑張って食べ物を貢いでもらって、おれはより良い精蜜を提供できるよう努力するとしよう。

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