5話 火の魔術師と和風美人で個性的な先生。
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教室に入ると、一気にざわめきが起こった。
話している内容はそう、今から行われるホームルーム。
ホームルームという言葉でまとめても良いのか、いやそれ以外に適切なものが見つからない。うーん、入学にあたっての説明と言っておこう。
担任はすぐ現れた。
エル先生。
名前によらず、なかなか和風美人な人だ。まずは、その和服。
和服といっても着物に似た服だ。だが、着物ではない。
こういった服は何と説明したらよいか解らないから困る。とりあえず、着物と想定して考えよう。
長い黒髪をサイドテールと言われるヘアスタイルにしている。
こう言ったところは、すごく若い女性らしさがにじみ溢れていると思った。
ちなみに、髪留めは綺麗な桜をモチーフとした簪だ。
着物は、もちろん白。この学校は先生も黒と白らしい。そういうきまりなのか、
と疑問に感じた。
まあ、いい。着物の柄は蝶(色は問うまでもない)で、黒いラインが綺麗に滑らかに、川のように流れている。まるで信濃川のようだ。
その丈の長さは少々……いや、よく考えてみれば結構短い。うーん、先生だからあまり良くないような、と思いとどまる。そういえば、ここは校則が緩いのだ。それにまあ、タイトスカートというスカートもあるし、一段可笑しいわけではあるまい。逆に今どきでオシャレだと言えるだろう。
「静かにしなさーい。いいかしら? では、自己紹介しまーす」
教室が、シンと静まり返る。その反応に担任は満足したのか、うんと頷いた。
そして、再び話を始める。
「私が、この特級クラスの担任。エルだ。まあよろしく、少年少女諸君。
まあまあ、そんな緊張しないでくんな。先生は気楽に生きたいからさ。気楽に生きたい往きたい逝きたい……ってね。そんなことはいいとして。
えー、自己紹介がまだか。名前はさっき言った通り。カタカナ名前なのは、中2の時に改名したから。好きなことは言葉遊び」
……なんというかその、個性的な先生だとそう感じた。まあ、嫌いではないタイプ。すごく面白そうな先生だ。
それに改名した時が中2とは。先生はきっと中二病だったのだろう。うん、期待を裏切らない性格のようだ。
そして趣味が言葉遊びとは、かなりの超人だ。というか変人?
「まあー、変わった先生だなって思っている人も居るだろう! まっ、最初の方は
そんなものさ。気にしないでくれ。
先生の齢は23歳だ。若いのは今の内だってね。私は水の魔術と火の魔術師でね。
まー、火の魔術師は嫌われちゃったりしてるけど。武器は鎌のハルバード。
先生になったのは、20歳になってすぐ……だったね。
先生からは以上! よろしくなー」
いい先生に恵まれたようだ。決して悪そうではない。
それに……火の魔術師とは。同じ魔術を志す者、属性にする者として、なんだか気になる。あと、なぜ火の魔術と相性の悪い水の魔術を属性としたのかがすごく気になってしまう。いつか訊いてみよう。
「んじゃ、今から入学にあたっての説明をする。電子パネルを使うから、
前を向いていてなー。寝るんじゃないぞー」
そう窘め、先生は収納してある電子パネルを表示した。