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魔術師はやがて白魔法師になる。  作者: はづき
第1章  術学師養成学校
3/20

2話 火の魔術師と新たな友達。

02



「だっ……誰だ?」

「な、何よ」



 教室に入った瞬間、そんな普通な発言をしてしまった。

 誰もいないと思っていた教室に、少女がいたからだ。

 席に腰かけて、端末で小説を読んでいたよう。一人で何か呟いていた。

 俺が誰もいないと決めつけてしまったのが悪いのだが……どうやら怒らせてしまったようだ。

 とりあえず、この少女に謝ろう。



「ごめんなさい」

「えっ? あ、ああ……うん。私こそ変な態度してごめんなさい」



 彼女の言う変な態度とは、独り言と「な、何よ」と言ったことだろう。

 まあ、あんまり気にしていないが。

 とりあえず、俺の席を探す。空中に指で十字を切ると、マイページが表示された。タブレットを使う必要がない、と言う人もいる。

 それは正論だ。だからタブレットは近年あまり使われていない。が、学校側の配慮で配られている。主に俺は書物を読むときなどに使うことが多い。

 

 席をページで確認する。ここか、と納得して顔を見上げた。すると、その少女の隣だということが分かる。

 これも何かの奇跡か、それとも必然か。と考えて頭を振る。そんなのはどうでもいいことだ。

 俺は指定された席に着いた。



「隣の席なんですね」

「え、ああ。はい。ところで、何を読まれているのですか?」

「これですか? ある魔術師の書いた自伝です。とても面白いですよ」



 少女はとても楽しそうに笑顔でそう言った。

 彼女にバレないように、そっと視線を集中させる。

 その対象物に視線を向け、数秒集中させることで情報を読み取ることが出来るという能力は、とても便利だ。

 情報はデータウインドウに自動的に表示される。そのため、マイページを開いても、自動的にデータウインドウに切り替えられるのだ。


 彼女の名前は、天響≪てぃな≫というらしい。もちろん性別は女性。まあ、こういう情報は公開設定されているものだけしかわからない。当たり前か。

 そして、気になる情報。魔術師か魔法師か。スクロールして見ていくと、



「ところで、」

「あ、はい!」



 声をかけられた。咄嗟にデータウインドウを2回タップして閉じる。

 多分気づかれていないだろう。隠し事は得意。



「隣の席でしかも同じクラス。これを縁に、友達になりましょう!」

「あ、うん。いいよ」



 俺はマイページを表示して、フレンド登録ボタンをタップ。

 昔でいうメルアド交換というやつと似ている。ちなみにメルアドという言葉は死語である。

 一般的な友達になろう、というのはフレンド登録を済ませることだ。

 自分のIDを相手と交換して、フレンド登録を完了する。

 フレンド登録すれば、通話もチャットも現在地も把握できるのだ。それに、情報公開されているものも気軽に見ることができるという便利さ。



「これでいいですね」

「うん。っていうかその敬語! なんか堅苦しいというか……」



 彼女は俺の敬語に不満を抱いているようだ。

 そういう貴方もさっきまで敬語だっただろう、というツッコミは決して言わないでおこう。



「じゃあタメ口?」

「うん。あと呼び名で呼び合おうよ。私の事は天響でいいからさ。じゃあ君の事は……京也って呼んでいいのかな?」

「うん、別にかまわないよ」

「じゃあそれで!」



 彼女は実にフレンドリーな人だ。嫌いではないが、俺はあまり人と関わることが

好きではない。まあ、1人2人はあまり変わらないし、気にはならないが。

 仲間が数人いる方が、生活的に困ることもないだろう。そう判断して、自分を鎮めた。



 そうこうしているうちに、窓の外から人々の声が聞こえてきた。

 ずいぶんと人が増えたものだ。入学式までのころ30分を切ったとなると、それはおかしいことではないのかもしれない。

 俺はおとなしく黙っておいた。

 天響はずっと小説を読んでいた。

 

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