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魔術師はやがて白魔法師になる。  作者: はづき
第1章  術学師養成学校
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0話 火の魔術師は試験を受ける。

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 ヘッドフォンから聴こえる電子音で、俺の脳は覚醒した。


 簡素な電子音。


 ドシラソと軽快な4分音符が流れ、ファの音を知らせる少し長めの2分音符を感じる。


 俺は対戦相手の、黒々としたローブを纏った女性を睨みつけた。


 だが、相手の方はこちらを視界にも入れていない。


(ほう、俺は脅威ではないということか……)




『3……2……1……』




 緑色のログメッセージが目の前に堂々と現れ、武器のロングソードを構える余裕が3秒だけ与えられる。

 

 剣を右手に託し、体勢を整える。


 一方、相手は武器を使用していない。おそらく、魔法のみだろう。


 つまり、自らの魔法に自信があるということだ。俺はその態度に、少しだけ苛立ちを感じた。


 所詮、相手の女性は魔法師。


 俺のデータオプションには、彼女の情報がすべて記されているであろう。彼女の生い立ちから、学校、出身地、性格、スリーサイズまで。


 どうでもいいことが頭に過り、俺は舌打ちを小さくした。


 絶対に俺は、自らの手を汚さずに父母を殺めた魔法師たちを絶対に許さない。その決意が揺らぐことは、必ずないはずだ。


 精神を研ぎ澄ます。 

 

 相手はやはり先ほどからこちらを見ず、天に向かって手のひらを向けている。


 たがいに集中し、そして、




【Game start!】




 俺はいつも通りに、相手に向けて武器を向けた。


「たあっ!」


 戦いの先手を握ったのは、喜ばしくこの俺だ。


 相手を重点的に視界は映しだす。


 この戦闘相手を重点的に映し出すという能力に名前はないのだが、獰猛の瞳と呼ばれている。敵が攻撃を繰り出すことを3秒前に知らせてくれるので非常に便利だ。そのため、戦いでは先手を握りやすい。また、相手の動きを先読んで、攻撃のアシストが特典のようについている。

 火の魔術ならではの能力とも言えるだろう。

 

 俺はそれを利用し、相手の動きを読んだ。


 相手は光の魔法で創られたロングソードで対抗してくる、そう読めた。

 

 剣には剣で、魔法には魔法で、というのが彼女のスタイルだろう。


 その律儀な心柄は嫌いではない。だがそれは、戦闘では命取りだ!


 咄嗟に俺は彼女の傍まで跳躍し、剣を薙ぎ払う。


「くっ……」


 相手は術のかかった俺のロングソードで痛めつけられた腹を押さえている。だが、この剣で斬られた人間の部位はもう元には戻らない。確実に、死へといたる。


「く、そっ……火の魔術師め……」

「意外と弱小で繊細な人間なんだね、君は。すごく、弱い」



 魔術や魔法は出血などはしないが、じわじわと痛みは広がる。



「見慣れない剣術、能力……さすがあの親の息子、」

「黙ってくれるかい?」 


 そう言って、再び攻撃を与える。


 今度こそ彼女は動きも、話もしない。



【Win!】



 勝利を獲得したことを実感するには十分なログメッセージが現れた。


 俺は剣を鞘に収め、彼女と同じように草原に体を預ける。


 全身から疲労感がどっと溢れ、溜息が思わず漏れた。



『合格。第1回実力テストを終了します』



 耳元のヘッドフォンから機械的な音声が聞こえ、俺の体は光に包まれてその場から消えた。


 


 

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