民の意思
日本における第二の機関、「特務第五会」はある決断を行おうとしていた。
「我が国を統括しようとしている新たな機関、「委員会」なるものをいかに排除するか。」
「いや、西条くん、この現在の日本という集団に身を削るほどの価値があるのかね?」
と都場流隆士は、西条国英に言うのだった。
「我々の存在意義とは、我々が考え実行することにあるんだよ。」
と、国英は返した。
八谷香は、しばらく沈黙を守ったまま、
「日本という生物が次の段階へ移ろうとしていて、我々が手を出すことで、その息の根を止めてしまうのならば、我々は、このまま日本の変革を黙ってみていればいいのではないか。」
その場にいた全員が言葉を失った。
しばらくの沈黙が続いたのちに
1人の男性が、
「‘サカイ事件,の様な事にならなければ、私たちは介入しないということでよろしいですね。」
と確認を行った。それは大変に機械的な発言であった。
「ミカエル、君の調査報告を聞かせてもらえるかな。」
市川徹は、目の前に立っているミカエルと言われる男性とも女性とも捉える事が出来る様相を呈した人物に問いただす。
するとミカエルは、
不敵な笑みを浮かべて2人が共有する思考空間である窓のついた室内の色を目まぐるしく変えていく。
「貴様らは、自身の未来を理解しているのか、それとも場当たり的な行動で彷徨っているのか、理解しづらい存在だな。
バベルの塔のような逸話を考え出すわりには、今の貴様らの置かれた状況を理解できていない。」
市川は、腕を組む姿勢で、ミカエルの言葉を聞く。
彼には、時間がなかったのだった。
「もはや、開戦までの時間は、秒読み段階だ。例の新薬を大量散布した場合に死滅する人口数を教えてほしい。」
ミカエルは、目をつぶり頭を横にふる。肩をおろし、大きなため息をついた。
「例の2人は、なんとか確保できたのかな?
まさか通路を歪めただけで、君への仕事の依頼は、完了するわけではないだろう。」
市川が、ハワードに対して行った提案は、ミカエルからの指示であった。
そして市川は、取引として日本国民の遺伝子のある部分の変更を頼んだのであった。
「日本人が遺伝子変異したところで、自体はさほど変わらない。
だが君があの2人を管理下に置けば、今後の自体は大きく変わるんだよ。」
乾いた風がその空間を流れる。
2人がそう意識したのか、もはや不明だが風の訪れと共に、ミカエルと市川の前に
チャールズとトビオが、現れていた。
「閉ざされた空間に同期して、進入してくるなんて。」
と市川は、驚きのあまり尻もちをついて倒れる。
「君たちは、戦争を起こして人の完全なる意識体への誘導を行おうとしている。
でもそれは、大きな喪失を発生させるだけだ。」
とブロックは、訴えた。
「ミカエルあんたは、市川が、思考探査していた際に偶然を装って、遭遇してこの取引を行わせた。
なぜだ?観察者があんたらの存在を知ってもなお、沈黙を守っていたのになぜだ?」
とトビオがミカエルに強い口調で問いただす。
「キリストのことか。彼は、愛を持つ事訴えていた。私たちがそれを望んでいる事を知ったからだ。
しかしどうだろう。
今の人間に必要なものは、便宜的な愛であった、孤独を埋めるだけのツールになり果てた。
私が今回、接触を試みたのは、民の意思が、滅亡を望んだからなんだよ。」
どうやらミカエルのその言葉には、市川も初耳の事が多々あったらしく、
市川は瞳孔と口を開いて驚きを隠せずにいた。
空間が飽和していた。
気付けば、彼らは、大きな駅前の人ごみの中にいた。
「同期化がはじまったようだね。」
とミカエルはいった。そしてつづけて、
「ちなみに私は、ミカエルと言われる時もあるし、宇宙人と言われたこともあった。私は、天使という言葉は、君たち人類の作り出した素晴らしい言葉であると思うが、
君たちの想像の世界とこちら側には、違いが多くある。
概念共有体といえば、少しはわかるかな。君たちは、私たちに近づいてきているという事だよ。」
ミカエルはそう言うと大きく手を広げて、中を浮き始めたのだった。
「戦争は起きない。
薬の散布も意味がない。」
とチャールズとトビオは、同時に言った。
「なんだって。」
市川は、愕然とした。
「日本を鼓舞するのは、日本自身なんだ。それの大きな流れのきっかけがこの、、、」
市川は、意思の力が弱くなってしまったのか、姿を消してしまった。
「君たちは、何をしたんだ。」
ミカエルは、小さな声でそう言った。
「遺伝子をさらに変えたんだ。」
「自分自身を見つめられれば、それでいい。戦争なんてして、これ以上、日本がさらに深い闇を見る必要なんてない。毎日、闇を見させられているのだからね。」
「私たちは、介入しなかったのでは、無かったのだな。
介入が出来なかったのか。」
ミカエルは、そうつぶやく。
「世界の在り方が違うから、最終的には、歯車がもとに戻るんだよ。」
とトビオは、言った。
「帰りな、もといた所に。」
とチャールズは、ミカエルに提案した。
曇っていた空は、すっかり晴れて陽がさしていた。
人々は、またしても下を向いて、陽の明るさを知らない。
しかし、雲ひとつない晴天からたくさんの水の粒が降ってきた。
市川の用意した薬品と思われた。
しかし、今となっては、ただの液体である。
人々は、それにきづくと空を見上げた。
空の明るさを知った。
情緒か、実利的なものか。
そんなことばかり考えてますが、両方が互いに競っている程度がちょうどいいのかなとも思ったりします。
次回は、SFは、抜きにして何か書きたいと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございます。




