Ctrl+Alt+Del 強制終了。
Ctrl+Alt+Del
強制終了。
あなたが飽きたら私はまた終了を迎えるのですか?
私が見えないのでしょうか?
私の声はあなたには届いていないのでしょうか?
毎日、毎日……会っているのに。
貴方は目もあけてくれない。
貴方の綺麗な瞳をここ何年か見ていない。
口に運ぶ食べ物は、入り口で止まって流れてしまう。
貴方の声をここ何年か聞いたことがない。
握った冷たい手は、握り返してさえくれない。
貴方の温もりをここ何年か感じていない。
「目を、開けて下さい」
瞳に指を滑らせます。
それでも貴方は目をあけてくれないから。
「お話をして下さい」
そういって本を差し出します。
それでも貴方は話してくれないから。
私は――おバカな私は理解してしまったのです。
「ああ、貴方は……君は…」
「冷たい、のです」
途端に体が震え始めました。
痛い、寂しい、一人にしないで。
「もう、いいだろう?」
小さく零れ落ちた言葉。
彼の、最後の言葉。
「頑張った、お前は頑張ったよ」
そういって動かない彼は、動かないはずの彼は……ゆっくり私にキスをして、飽きて、私に、動かない私に、動かないのは彼で―――。
――強制終了――
Ctrl+Alt+Del
ああ、わかっていた。
最初から分かっていたのです。
ただ認めたくなかったのです。
彼の瞳が見えなかったのは、私の目が開かなかったからなのです。
彼の言葉が聞こえなったのは、私の耳が機能していなかったからです。
食べ物を食べられなかったのは、彼ではなく私。
握ってくれた手を握り返せなかったのは、彼ではなく――私。
「小夜は貴方のお役にたてなかったのです」
「小夜は貴方を好きです」
「小夜は、小夜は……まだ言いたいことがたくさんっ」
取り乱す私の頭を撫ぜて、
「安心しろ」
本能的に、直感的に、体が安心する強い声で彼は言いました。
「全部、聞いてやるから」
笑ったはずの私の顔はきっと引きつっていたでしょう。
最期のキー音が鳴った時、いえそれからずっと、私の温もりは消えることはなくただそこに存在していました。
今でも願うのは――、
飽きられたのではなく、彼が私への思いを心に乗せたまま、こちらに会いに来てくれることです。
贅沢を言うなら、満面の笑顔ではなく、照れ隠しにそっぽを向いて、
「聞きに来てやった」
くらい、言ってほしいものですね。
天の国から小夜。
小夜は人間だったのか←そっからw
小夜は死にます。
でも、飽きられて死ぬより愛されながら逝ったほうが幸せだと思います。
2011.08.23 麦茶。