出逢
差し込む日差しの暖かい昼下がり。
午後からの講義のために、僕は大学の構内を1人歩いていた。
少しウトウトしながら気だるく。
中庭の見える大きな通路。
25メートルくらいの距離、窓から中庭が見えるのだ。
気持ちのいい日差しに照らされて、芝生や花が煌いていた。
ここの景色が好きだった。
こんなに綺麗に整えられた中庭なのに、この場所を知っている学生はほとんどいない。
みんな、この通路を何気なく通り過ぎているらしい。
ただそこにある絵画のように、誰もが見過ごしているらしい。
もしかしたら、中庭の存在すら気づいていないのだろうと思う。
中庭には簡単なつくりの木製ベンチもあったが、誰かがその中庭にいるのを僕は見たことがない。
とは言っても。
僕自身も、この中庭に足を踏み入れたことがなく、いつも中から眺めるだけだった。
今日も、何気なく目をやった。
いつもと変わらない美しい中庭。
ハッとした。
女の子が2人、その中庭にいた。
1人はあの木製のベンチに座り、もう1人はその女の子の前に立っていた。
この中庭を利用する人がいるのだと、僕は初めて知った。
横目で眺めながら歩いている僕に、2人は気づかないようだ。