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オンライン生活、辞めました。  作者: 田古 みゆう


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8.2021年 2月

【第二次緊急事態宣言】


 自室に籠ること九ヶ月。年の瀬は、いつもなら、親、兄弟、親戚が寄り集まって、騒がしく過ごす時期。それなのに、一人きりは流石に少し寂しく、そして、少し浮かれた気分で、普段はほとんど連絡をしない僕が、年明けと同時に、ビデオ通話で実家と繋がっていた。


 繋がったら繋がったで、親からは、全く連絡を寄越さないだの、太っただの、髪が伸び過ぎだの、見た目がダラシなくなっただの、耳の痛いことを言われ放題。あまりの苦行に、早々に通話を終了し、一人不貞寝を決め込んだ。


 世間でも年越しに皆が浮かれていたようで、二月に入ると、その皺寄せとでも言うかのように、二回目の緊急事態宣言が発出される事態となった。殺人ウィルスの蔓延から、一年が経とうとしているのに、なぜ人々は、学ばないのか。自宅に籠ることが、最大のウィルス感染予防となるということを。


 当然、万全なる感染予防を行っている僕には、緊急事態宣言など全く関係ない。オンラインにて、大学の後期試験を無事に終えると、長い春休みへと突入した。


 夏休みが開けてからは、学業を優先するため、細々と行っていたデータ入力のアルバイトを、春休み中は目一杯請負、お金を稼ぐことに注力した。


 自室に籠っているだけの僕がなぜ、アルバイトを必死にこなすのかと言えば、それは、(ひとえ)に彼女への愛、故である。


 同じ大学に通う彼女ももちろん、後期試験を終了した後は、春休みになっているのだが、バレンタインが近くなった頃、僕は、いつものようにオンラインゲーム内で、彼女との会話を楽しんでいる最中に、彼女の苦悩を知ってしまった。


 初めのうちは、長い休みの間に、是非とも会えないか、直接会ってバレンタインを一緒に楽しみたいと、いつもと変わらぬ、僕にとって嬉しいが、とても苦しいお誘いをしてくる彼女に、今の事態が落ち着いた暁にはと、常套句のように断り、くだらない会話を楽しく繰り広げていたはずだった。


 しかし、いつの間にやら、会話は彼女の苦悩へと移っていた。彼女自身ははっきりとは言わなかったのだが、どうやら、お金に困っているようだった。殺人ウィルスの影響で、アルバイト先が経営不振になり、辞めざるを得なくなった。このままでは、大学へ行けなくなってしまうかもしれないと、彼女はマイク越しに鼻を啜っていた。


 そんな彼女の力に少しでもなりたくて、僕は、夏休み以上にデータ入力のアルバイトに精を出すことにしたのだ。

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