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オンライン生活、辞めました。  作者: 田古 みゆう


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10/23

10.2021年 6月

 ついに僕の元にも、ワクチン摂取の案内が届いた。しかし、未だに、ワクチン摂取を肯定するだけの情報を、僕は得られていない。


 政府は、ワクチン摂取率を高める為に、病院以外に、職場や学校での摂取を認めており、僕の通う大学でも、集団摂取を予定していると、大学事務局からメールで案内があった。


 僕は、ワクチン摂取には、かなり消極的ではあったが、彼女の望みであるデートを敢行する為には、耐えねばならないマストイベントであるとも思えて、一人、苦悶の息をつくばかりの日々を過ごす。


 そんな折、所属サークルである『eスポーツ研究会』の仲間たちと、オンライン活動をしながら駄弁っていると、ワクチン摂取の話題となった。


 ちょうど良い機会だと思い、仲間にワクチン摂取について迷っている旨を相談すると、徹底して自宅に篭っているのだから、必要がないだろうと、皆に鼻で笑われた。


 彼女のことについては、これまで友人たちに話すのも気恥ずかしく、これと言って話題にした事はなかったのだが、これを機に、僕の心の内に住み着いた人の存在を明かし、少しでも早く彼女の希望を叶えてあげたいのだと胸の内を明かした。


 彼女の名前を告げると、それだけで数名から反応があった。どうやら彼女は、大学内でも有数の美女として有名らしい。ただ、仲間たちは彼女との接点がほとんどなく、言葉を交わした事のない者ばかりのようで、僕を羨む声がいくつも聞かれた。


 片や僕は、毎日のように言葉を交わしてはいるものの、生身の彼女を瞳に映した事はなく、自分の意思とはいえ、自宅に篭っていることが、どうにも悔やまれてならなかった。やはり、早々にワクチンを摂取して、久しぶりの外出を試みるべきだろうか。


 そんな僕らの話題は、堂々巡りに終始した。僕らは、まだ十九歳。eスポーツなどのゲームに傾倒しているせいか、女性との接触経験は、無いに等しい輩ばかり。そんな奴らが寄り集まったところで妙案が浮かぶはずもなく、僕の苦悶は、糸口を見つけられずにいた。


 それでも、活動の終わり間際に、仲間内で、彼女をこの研究会に誘ってみてはどうかという案が出た。


 考えてみれば、僕と彼女の出会いもオンラインゲームなのだから、『eスポーツ研究会』にも興味を示してくれるかもしれない。そしたら、今よりも接点が増えるだろうという事で、僕らは彼女を勧誘する事に決めた。

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