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プロローグ ＆ １．２０２０年 ２月
【プロローグ】
僕は久しぶりに、部屋の外へ出た。
多分、三年ぶりの外出だ。そして、もうこの地へは、戻ってこないだろう。
なぜなら、僕は、これまでの生活にピリオドを打ったのだ。そして、生活をリスタートするために、僕はこの部屋から、そして、この東京という街から離れることになった。
僕の荷物は、スマホだけ。それ以外は、必要なかった。
【１．２０２０年 ２月】
僕は、東京での生活をスタートさせた。
それまでは、家の周りには、大きな木が幾本も聳え立ち、清流でそれなりに有名らしい川が家のすぐ脇を流れ、近所のコンビニまでは自転車で片道二十分、最寄り駅には、一時間に二本も電車が止まり、夜になると、晴れている日には必ず天の川を見ることができる、とても恵まれた環境で生活していた。
しかし、大学進学を機に、僕は上京した。そして、僕の価値観は覆された。
東京は、それまで恵まれた環境だと思っていた僕の世界とはまるで違っていた。大きなビルが幾本も聳え立ち、ビルとビルは、空中の通路で繋がっている。コンビニは、ない場所を探すのが難しいほど至る所にあり、数分待つだけで、すぐに次の電車に乗ることができた。東京の夜は明るくて、残念ながら天の川は全く見えないけれど、その代わりに、煌びやかなネオンが夜遅くまで輝いている。
そんな街に僕は心を奪われた。これからは、ここが僕の居場所になるのかと思うと、新生活が楽しみで仕方なかった。
