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彼は彼女を忘れられない  作者: 瞳湖
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凛々の立ち位置

凛々の立ち位置


 土曜日に仕事に行ってみると受付に小児科の原田先生、外科の有村先生、内科の安河先生が来て

「貴女が高瀬凛々さん?朔から色々守るように頼まれてるから何かあったら僕らに言って下さいね」

とニッコリ微笑んで行ってしまった。

何だったんだろう今の3人は?と首を傾げていると瞳さんが

「何かしら?昨日からトキメキが貴女の周りで飛び回ってるけど」

と些か興奮気味に話しかけられた。

「今日は朝から眼福トリオに囲まれてどうしたのよ」

「眼福トリオ?」

「そうよ、うちのイケメントリオ、内科の安河先生はその上うちの御曹司だし、後の二人も見たら分かると思うけどキリっとスラっとした爽やかな男前でしょ!だから人気凄いのよ」

「その3人に朝から囲まれて凛々さんは一体何者?」

「イヤイヤ何者でもありませんから、朔に頼まれたらしくて何か困ったことが有ったら言いなさいって」

「おお〜っ眼福トリオが護衛隊なんて凄過ぎるわ」

「凛々さん、長良先生に物凄く愛されてるのね、付き合ってないなんて嘘ばっかり!もうっこのこのぉ羨ましいわ」

昼休みの前にはすっかり広まった私の立ち位置。

【長良先生の大切な恋人】


 女性従業員からのイジメを懸念していた私の考えは取り越し苦労になったようで周りの人たちの目はとても優しい。

それにしても長良先生の大切な恋人はおかしい、そんな仲ではないのにどうしたらいいの?

朔は何処をどう見てもカッコいいし素敵な男性だけれど私の彼氏ってイヤイヤあり得ないから。

私だって自分のことは理解している、綺麗でもなく可愛くもない、グラマーで色っぽい訳でもない極々平凡なんだから。

165cmと女性にしては高めの身長に小顔というだけが自慢の化粧映えしない顔。

あの端麗な顔と並べていいはずがない。

退勤までの間にあの3人が代わる代わる顔を出し

「大丈夫?問題ない?」

って声を掛けてくれるものだからその度に後ろから

「眼福だわぁ!高瀬さん様々」

と手を合わせられる。

止めてください、私を拝むのは……。


 そんなことがあった翌週の木曜日の帰り間際に院長先生に呼び出された私は何がどうなってるんだ、私が何をした?パニックになり掛けながら院長室の扉を叩いたのだった。

「失礼致します、事務の高瀬ですがお呼びでしょうか?」

「高瀬さん、終わり掛けに悪いね、そのソファーに腰掛けてくれるかな」

院長先生の指したソファーには60歳前かと思われるにこやかな男性が腰掛けていた。

「お隣宜しいでしょうか?」

「えぇ、此方にどうぞ、凛々さん」

「えっ?」

突然名前を呼ばれて驚いてその男性を見ると

「長良朔の父親です、息子を助けて頂いたのにお礼がこんなに遅くなって申し訳ありません、本当にありがとうございました」

「朔…あっ!なっ、長良先生のお父様でしたか、そんな私大したことしてませんから頭を上げてください」

立ち上がってお父様に向かい私も頭を下げてそう伝えたのだが、お父様は息子を私たちの元へ返してくれたのは貴女だからと両手を握って再度お礼を言われてしまった。

あの日の少し前から朔は素直な優等生から突如、粗暴な不良学生になり毎日ケンカをしたり家族に罵声を浴びせたり散々な態度を取っていたらしい。

その理由というのが彼が長良家の養子であることを知ったからだと言うのだ。

自分が好きな家族と血が繋がっていないことへのショックと、だから自分は両親に叱られたことがなかったのかと思うと絶望感でいっぱいになって、自分の居場所なんかない、死んでも誰も悲しまないと思ったのだと後々語ったのだと言う。

そんなドン底で出逢った高瀬凛々という女性にきっといつか生きていて良かったと思える日が来るから、今は私のためだと思って生きていて欲しいと言われて俺は生きていても良いんだと思えたんだ、父さん、彼女がいなかったら俺は死んでいたよ、そう笑顔で語ったのだと教えてくれた。

「さく……」

「貴女のお蔭で私たちは息子を取り戻せた、息子が貴女の為にこれからの人生を生きるというなら私たちは全力で応援しますから」

えっ?何か話が違う方へ転がってる?どういうこと?朔?何がどうなってるのか私は訳が分からなくなっていた。

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