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彼は彼女を忘れられない  作者: 瞳湖
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長良朔先生

長良朔先生


 「凛々?終われそう?」

定時を15分ほど過ぎた所で朔が事務所に顔を出して聞いて来た。

「うん、大丈夫、今から上がるとこ」

「じゃぁ、更衣室の前で待ってるから」

朔が立ち去ると事務仲間の女性たちが私の周りを囲って

「ちょっと!何?成井さんの言ってたこと本当なの?高瀬さん、長良先生と付き合ってるの?」

「えっ?付き合ってないですよ、知り合いなだけです、久しぶりに会ったから」

「そうなの?羨ましい〜、見た?長良先生の顔?あんなに朗らかな顔は見たことないよ」

そうなんですねぇ〜と後退りして急いで更衣室に飛び込んだ。

(凄い!朔人気者じゃないの、私どうしよう、悪目立ちするんじゃないかな)

そんなことを考えながら着替えて更衣室を出ると反対側の壁にもたれて携帯を見てる朔がいて、そんな彼を遠巻きに見つめる女性従業員たちがいた。

不意に顔を上げた朔は私を見つけると途端に破顔して

「凛々、うわぁ可愛いね」

なんてとんでもない爆弾を落としたので朔を見ていた女性たちから悲鳴が上がったではないか!

「朔!行こう」

私は彼の腕を掴んで急いでその場を離れたのだった。

彼の車に乗せられて

「朔?自覚ないの?貴方凄い人気者なんだけど」

「ん?」

「あんな所で可愛いなんて嬉しいけど私明日から殺されるよ」

「凛々が殺されるなんて!それは困る、なんとかする」

何をどうするつもりかわからないが

「朔?女の嫉妬ほど怖いものはないからね」

「凛々を怖い目には遭わせない」

「で、何処に行くつもりなのかな?」

「ご飯食べに行こう、話したいことがいっぱいあるんだ、食べられないものってある?」

「何でも食べられるよ、私も聞きたいことがいっぱいあるしね」


 朔が連れて来てくれたのは郊外のイタリアンで隠れ家みたいで可愛いらしい店構えだった。

「友だちの店だからゆっくり出来るよ」

さりげないエスコートが心地よい。

(あんなに粋がってた高校生がこんなことが普通に出来る大人の男性になったんだなぁ)

「いらっしゃい、個室って言ってたけど女性と?朔が珍しい!雨が降る」

「煩い、大切な人だから美味しい料理頼む」

「美味しいもんしか出さないけど、大切な人?可愛い人だね」

「見ないで」

と言って朔は私を自分の後ろに隠した。

「こんばんは、お世話になります」

笑顔でシェフに声を掛ければ

「凛々、テーブルに行こう」

と促されて手を繋がれた。

「凛々さんって言うんだ、益々可愛い」

シェフの言葉を遮るように

「道哉!お任せでお願い」

と注文をして個室のテーブルに着いた。

 

 「ごめんね、道哉は悪い奴じゃないんだけど俺が女性なんて連れてるから揶揄って来て…ごめん」

「シェフが朔の友だちなんだね」

「高校の時の同級生で親友なんだ、だからあの時俺が暴れた原因も知ってるし、凛々が助けてくれた後、俺が凛々を探し回ってたのも知ってる」

「探し回ってくれてたの?」

「当たり前だよ、約束したのに、目を覚ました時いてくれるって言ったのにいなかったから……」

「ごめんね……嘘を吐くつもりはなかったんだけど」

下を向いてしまった私の前に席を立って跪いた朔は

「凛々、凛々を責めるつもりなんて少しもないよ、理由はあの時残してくれた手紙でちゃんと分かってるし何より凛々は俺の命の恩人なんだから」

「命の恩人なんて大仰なもんじゃないから」

「あの時、凛々に出逢わなければ俺は死んでいたよ、仮に身体は助かったとしても心は死んでいた、凛々が俺を助けてくれたんだ、生きていていい、私のために生きてと言ってくれたから」

「朔…私の言葉が貴方の生きる糧になっていたのならこんなに嬉しいことはないわ、生きていてくれてありがとう」

「だから俺はあの時に誓ったんだ、この命は凛々のもの、助けられた命でこの先は凛々を守ろうって!だからこれからは俺に守らせてね」

「▲※○×☆*んっ?はぁ?」

朔は何を言ってるの?守る?私を?訳がわからなくて呆けてる私を和かに見つめて

「さっ!ご飯を食べよう、凛々は呑める口?」

「かっ、乾杯くらいかな…」

「グラスワイン貰う?」

「ううん、オレンジジュースで」

「ブラッドオレンジ飲む?美味しいよ」

「じゃあそれで」

上手く思考が纏まらないまま飲み物を頼んで、食事をした。

終始笑顔の朔が頭に残ったままの状態で家まで送って貰った。

「今日はありがとう」

「うん、逢えて良かった、また食事行こうね、さっ早く家へ入って鍵してね、それを見届けたら俺行くから」

朔はやっと見つけた凛々が独身であることは勤務中に院長のところに行って確認していた。

院長は父の義弟だったから彼から事務長に聞いて貰ったり、自分にとって命より大切な人だから不当に扱われることがないように気に掛けて欲しいと既に依頼済みだった。


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