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彼は彼女を忘れられない  作者: 瞳湖
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13年後

 13年後


 私、高瀬凛々は医療事務をしている。

少し前まで11年勤めた病院の院長先生が80歳になって引退して病院を閉めると決めてしまったので、院長先生からの紹介状を持って面接して貰ったのが二週間前。

有り難く採用されたのがこの町では一二を争う大きさの安河総合病院の受付を含む医療事務で、働き始めたのが今週の月曜日で今日が金曜日だから明日でやっと1週間が終わるなぁって感じ。

「高瀬さんお昼一緒に行かない?」

声を掛けてくれたのは事務仲間の成井さんで年は4つ下の27歳だけれどここでは大先輩だった。

「ありがとうございます、今日はお弁当じゃないんですか?」

「そうなの、旦那が寝坊して作ってくれなかったの」

成井さんの旦那さんはうちの理学療法士をしていて社内結婚組なのだ。

「お弁当は旦那さんの係りですか?」

「朝ご飯とお弁当は彼、夕ご飯と休みの日の昼ご飯は私なのよ」

「いいですね、料理の出来る男性って」

「イヤイヤ、それを覚えて貰うまでがホント大変だったことをお伝えしたい、結婚の条件だったから彼もやらざるを得なかったんだよね」

「おー!惚れさせた強みですね」

「あっ!高瀬さん、私が職場では先輩だけど高瀬さんの方がお姉ちゃんだから敬語使わなくていいよ、凛々さんって呼んでいい?私のことは瞳でいーからね」

「イヤイヤそれこそ恐れ多いから瞳さんで!」

病院の食堂は職員も使用可能なので、瞳さんと向かった。

職員割引で各メニュー2割引になるのでカレーライスなどは味噌汁付き500円が400円、唐揚げ定食は唐揚げ、サラダ、ご飯と味噌汁に小鉢が付いて650円のところ520円と財布に優しい。

瞳さんと横並びでご飯を食べているとココ空いてますか?と向かい側に座ったスクラブ姿の男性を見て瞳さんが

「あっ!長良先生珍しいですね、食堂で食べられるなんて」

「午後から手術なので軽く食べとこうかと思いまして」

「そうなんですね、あっ!高瀬さん、こちら金曜日だけ非常勤でお見えになられてる外科の長良先生、先生、こちら新しい事務の高瀬さんです」

「今度事務に入りました高瀬凛々です、宜しくお願いします」

通りいっぺんの普通の挨拶をしただけだったはずなんだけど紹介された長良先生は何も発しないので、私は顔を上げて先生の顔を見るとどこをどう切り取っても眉目秀麗、容姿端麗、めっちゃイケメンの彼が大きく目と口を開いて軽く震えていた。

「先生?」

瞳さんが声を掛ける。

「先生?」

私も声を掛けてみると、先生は突然テーブルを回り込んで私の前に立ち私を抱き締めて

「凛々!!逢いたかった!やっと見つけた」

「えっ?なっ!何?」

「凛々!俺、長良朔だよ、サ、ク、まさか忘れちゃった?」

身体を離し顔を覗き込むと

「サク?長良朔!ホントに朔なの?」

大きく頷いた彼は

「凛々、逢いたかった」

そう言って再度私を抱き締めて頬ずりをする。

「さっ、朔、とっ取り敢えず離して苦しい」

「あっ!ごめん」

脇にいた瞳さんが

「ふっ、二人はお知り合いなの?」

 食事を一緒に取った後、朔から帰りに迎えに行くから待っていてくれと言われた。

別に待ってるけど、待っていてくれないと手術頑張れないなんて言われたら絶対待ってるしと言ってしまうよね普通。

瞳さんには朔のあの時の事情も詳しく分からないから倒れてた彼を助けたとは言わずに高校生の頃の彼と少し関わりがあったと話した。

瞳さんがいうのには

「長良先生ってね、もう一つこの町にある大きな長良医療総合病院の次男で、毎週金曜日だけうちに勤務されてるんだけど、あの年で腕が良いと評判の外科医であの容姿でしょう、人気も凄いんだけど患者さんには優しいのにそれ以外には超クール対応で有名なのよ、あんな風に興奮した長良先生見たの初めて…貴重なもん見た感じ」

「そうなんですか、朔がねぇ」

生きていていいのかと問うていた彼が立派なお医者様になっていた、とっても頑張ったんだね、朔凄いよ。


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