エピローグ
エピローグ
〜あれからの未来〜
あれからの凛々は忙しい。
もう一度安河で雇って貰えるかと思ったけれど良い機会だから思い切って看護学校へ行きたいと朔にお願いをした。
昔からの夢を諦めたままにしていたけれど、朔と別れて生きていかなければと考えた時、生きがいになるものが自分にはないと気付いたのだ。
そう言うと朔は
「凛々と俺は別れて生きていかないんだから」
とムスッとしたけれど夢を追うことは良いことだと看護学校に入るための勉強も入ってからの勉強もこんな近くに優秀な先生がいるのだから使って頂戴と家庭教師してくれている。
お陰で看護学校も一発で合格出来て今私は花も恥じらう女学生だ。
日々の授業に悪戦苦闘しながらも家では朔に教えて貰い
(人の命に関わることだからと朔の授業はとても厳しい、学校の先生より厳しいから以外と学校の授業では私が周りに教えることもあるのだ)
同期生は私が結婚していると知った時
(入学前に『籍だけ入れたい』と朔に泣きつかれ入れたのだが)
驚かれ更に相手が長良医療総合病院の医師だと言うと
「えっ?長良さんってウソっ!長良漣先生?朔先生?どっち?」
と何人かに詰め寄られて
「朔…」
「朔先生なの!マジか、ヤダ、ウソだと言ってぇ〜!!」
「なんで?どうした?えっ?」
朔は看護学生にも人気があったらしい。
非番の日に学校まで迎えに来てくれた朔を見た同期生の響めきと悲鳴の中で手を振り車に乗り込む時に少しだけ優越感を感じたことは誰にも内緒だけど。
久々に朔と二人まったりした休日を過ごしていた私は
「朔?安河先生がね、看護師になれたらうちにおいでって言ってくれたの」
と言った途端
「ダメ!絶対ダメだから!凛々は長良の嫁さんなんだよ!うちに就職して!」
「雇ってくれるの?」
「当たり前でしょう!優秀な看護師は一人でも多く確保したいです、正樹のとこは絶対ダメだからね」
朔は安河先生が絡むと俄然独占欲を見せるようになったが何故なのか私にはさっぱり分からない。
「卒業したら直ぐに結婚式だからね」
と朔がソファーの横にいた私を抱き上げ自分の膝に横抱きに座らせる。
「国家試験に卒業式、結婚式と凛々には忙しい毎日になってしまうけど俺が出来ることは全部するから」
「幸せなことで忙しいのは楽しいから大丈夫だよ」
こんなこと言って一所懸命頑張る凛々が俺は可愛くて愛しくて堪らない。
「沢山お色直しするよりも来て下さった方々と話したいから式で着るウェディングドレスでお迎えをして、カクテルドレスで入場出来るハウスウェディングがいいって凛々言ってただろ?会場の予約が出来たよ」
「ホント?朔ありがとう、会場探し任せてごめんね」
「いいよ、凛々は国家試験が終わるまでは落ち着かないだろう?その分試験頑張れ!」
「うん!」
力こぶを見せる凛々があまりに可愛くて昼間から盛ってしまったのは俺の所為ではないと思う。
「さっ、朔ぅ〜!まだお昼だから!」
凛々の抗議は完全無視した。
「凛々、今日はゆっくり愛し合おう、俺のこと癒やしてくれないの?ダメなの?ねぇ凛々?」
冷静沈着、クールで殆ど笑わないイケメンが私には上目遣いなんてズルいよ、こんな風に言われたら私が拒否することなんて出来ないってわかってるくせに!
「お手柔らかにお願いします、明日学校あるんだからね」
「分かってるって!」
満面の笑顔を浮かべた朔がお手柔らかなはずもなく今日も今日とて貪られた凛々であった。
二月に受けた国家試験の結果は本日発表される。
三月に入り卒業式と結婚式を経て長良院長も漣兄様も
「凛々さん待っているよ」
と言ってくれた。
お母様は春海の娘が私の娘になってくれて同じ看護師の道に進んでくれたのか嬉しいと泣かれてしまった。
(お母さん、今の私の精一杯が報われますように助けてね)
朔は病院で連絡を待ってくれている。
今時は合格発表はPCでされる。
(いざ、向き合わん!来い!)
ハナモモ咲き誇る中を笑顔で手を繋ぎ、通勤する長良夫婦の初々しい姿が目に優しい春の日である。
fin