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彼は彼女を忘れられない  作者: 瞳湖
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知らされた事実

 知らされた事実


 その日は仕事が終わってから朔のマンションに行った、最近は毎週金曜日と土曜日を朔のマンションで過ごしている。

食事の片付けを済ましお風呂に入ると入れ違いで朔がお風呂に入る、彼の寝室で彼を待つのもルーティンとなっている。

上がって来た朔が

「本当にごめん、鹿子木が酷いこと言っただろ」

「もういいよ、私も負けてなかったから大丈夫」

「大学病院での前期研修で付き纏われて辟易して長良に戻ったんだ」

「そうだったのね」

「俺に話し掛ける女性に片っ端から威圧的に攻撃してさ、看護師や、事務員と仕事しにくくて困ってたから」

「モテる男は辛いね」

「なっ!本当に困ってたのに!俺が愛して欲しいのは凛々だけだから」

そう言うと朔は徐ろに凛々を押し倒して覆い被さって来たではないか、凛々はまだこの状態に慣れずドキドキして、でも期待してしまうのは愛する人との睦み合いは気持ちいいと知ってしまったからだ。

「あっ!明日二人で来てって父さんが言ってたから」

凛々の返事は朔の深い口付けに飲み込まれていった。


 翌日、朔と二人で朔の実家を訪ねると久しぶりにお兄さんの漣さんが居て出迎えてくれた。

「凛々さんいらっしゃい、お久しぶりだね」

「そうですね、あの時以来ですから」

「朔の想いが叶って良かったよ」

朔とは違う甘いマスクのイケメンは話し方も優しい。

「兄さん、俺の凛々取らないでよ」

後ろから朔にハグされて戸惑っていると

「男の嫉妬と独占欲は嫌われるよ、朔」

「大丈夫、凛々はそんなことで俺を嫌いにならないから、ねっ?」

私の顔を覗き込んでそう言う朔が可愛いと思うのだから仕方ない。

リビングに誘導されて入ると朔のお母様の百合さんにハグされて

「春海の娘さんだったのね」

と耳元で囁かれた。

「お母様もうちの母をご存知ですか?」

「春海と朔の実母の深雪と私は看護学校の同級生なのよ」

詳しいことは主人からとソファーに座るように促されたので朔と二人腰掛けてお父様を待った。


 程なくお父様がリビングに来られて私と朔の前に腰掛けると

「凛々さん、今日はわざわざ呼び立てて申し訳なかったね」

「いいえ、この間は母のお墓にお参り頂いてありがとうございました」

「そのことで二人に話そうかどうしようか悩んでいたのだがね、二人はこの先の人生をどう考えているのだろうか」

「父さん、俺は凛々さえ許してくれるのなら直ぐにでもウチで一緒に暮らしたいし、ゆくゆくは一緒になりたいと考えています」

深く頷いたお父様は

「凛々さんは?」

「私も許されるのなら朔さんと一緒になりたいです」

「そうか、二人はこの先を一緒に歩みたいと思っているのだね、ならばやはり伝えなければならない、聞いた上で二人がどうするのか話し合ってくれればいい」

実はと切り出したお父様の話は私たち二人を失望落胆させるのに充分な話であった。

 私の両親は幼馴染同士で結婚したという、父は医大に通い母は看護学校に進んだ。

そこで知り合った其々の仲間たちといつしかグループ交際のようになり、朔のお父様の司とお母様の百合、朔の実父の裕司と実母の深雪の三組は結婚しても仲の良い親友だったという。

「貴方たちは小さくて覚えていないでしょうけど、朔が一つ、凛々さんが三つ、漣が六つの時に一緒に動物園行ったの、漣が凛々さんをお嫁さんにするってずっと手を繋いでたのよ、それが朔とお付き合いを始めるなんて縁は分からないものね」

「朔、凛々さん、今から話すことは伝えなくても良いことなのかもしれない、けれど他所からそれを知ったら君たちがどんなに動揺するか考えたら先に伝えるべきだと思ったんだ、それを知った上でこの先のことを改めて考えてみて欲しい」

お父様は目の前の緑茶を一口含んだ後おずおずと話し始めた。

「この間、春海さんのお墓で会ったのことに意味があったんだろうな、朔の両親が亡くなったのは交通事故だったことは凛々さんも知っていると思う、その事故で亡くなったのは三人でね、もう一人は凛々さん、貴女のお父さんである高瀬義人だ」

凛々は驚いてお父様から目が離せないでいた。

(お父さんが朔のご両親と共に亡くなった?)

「事故の原因は裕司の居眠り運転だと言われた、学会からの帰り道で、学会に出るために無理して勤務していたからその疲れが出てしまったのだろう」

「俺の実の父が凛々のお父さんを事故に巻き込んでしまったということ?」

「裕司と深雪さんのご両親はもう亡くなっていて遠い親戚ばかりだったし、朔は漣に懐いていた、何より自分たちに何かあったら後を頼むと二人に託されていたから君を養子に迎えた、春海さんは誰も責めなかったよ、ただこの先子供たちがそのことを知って心を痛めたら可哀想だから、朔を引き取る私たちとは距離を置くことにすると言ってね、連絡を取ることも無くなっていったんだ」

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