表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼は彼女を忘れられない  作者: 瞳湖
11/19

お墓参りと近づく心

お墓参りと近づく心

        

 「父さんもお墓参り?」

「朔?凛々さんも一緒か?」

「凛々のお母さんの祥月命日だから」

「祥月命日…凛々さんは高瀬さんだったね、もしかしてお父さんは高瀬義人という名前ではないですか?お母さんは春海と…」

「そうです、お父様は父と母をご存知ですか?」

「そうでしたか……、義人と春海のお子さんだったんですね、二人は私の親友とその奥さんでした」

「えっ?ではお父様はうちの母にお参りして下さったのですか?」

頷いた朔の父を見て凛々は

「ありがとうございます、母もきっと喜んでおります」

と頭を下げた。

「朔、凛々さんをちゃんとエスコートして送り届けるんだぞ」

「あぁ、分かってる」

「凛々さん、ではお先に失礼します」

頭を軽く下げ朔のお父様は帰られた。

「世の中って狭いね、朔のお父様とうちの両親が知り合いだったなんてびっくりしちゃったね」

「うん、なんか親父おかしかったような気がしたんだけど気のせいかな」

 

 お墓参りの翌週は朔の代わりに女医の鹿子木愛佳が長良医療総合病院からやって来た。

小柄で見た感じは愛らしいのだが医者とは思えない香水の付け方でむせかえるようだった。

案内する為について歩いているだろう有村先生も鼻の前に手を当て苦笑いを凛々に向けて来たのでフッと笑ったら

「何?貴女突然笑って気持ち悪いわね」

「えっ?ごめんなさい、ちょっと思い出し笑いです」

「ふん、気を付けなさい」

マズイと思ったのか有村先生が間に入って

「鹿子木先生、こちら受付の高瀬さん、高瀬さん、こちら長良先生の代わりに本日勤務して下さる鹿子木先生です」

「そうでしたか、失礼致しました、受付の高瀬です」

と挨拶をしている凛々の前を横切り

「受付相手に挨拶する必要もないわ、有村先生行きましょう」

と言うとスタスタと歩いて行ってしまった、後ろから着いて歩く有村先生が鹿子木先生に

「そういう物言いは感心しませんね」

と注意しているところを見ると彼より後輩なのかもしれない。

「あぁいう感じの悪い先生が時々いるのよ、凛々さん朝から嫌な思いしたね、忘れて頑張ろう」

瞳さんが声を掛けてくれたので

「そうですね、今日も頑張りましょう」

と力こぶを見せて二人で笑った。


 その後もまた次の週も朔ではなく鹿子木先生が来られた、朔からは鹿子木先生が後期研修中の為ウチの外科へ行くように長良院長から話があって行けないと先々週の金曜日の夜に連絡があった。

それでも土曜日には朔の家に料理を作りに訪れているので逢えないという寂しさはなかった。

朔の家で何でもない話をしてDVDを観たり、料理を一緒に作って食べたら片付けて、ほんわかした時間を過ごして寝るだけだけど満たされていたのは朔が優しいから。

「待つのは慣れっこだからね、ゆっくり俺を好きになってくれたら良い」

好きと認識してひと月も経つともう胸いっぱい気持ちが溢れてきて自分の中で収めておけなくなってしまった。

「どうしたんですか?今日の凛々は少しおかしいですね」

「おかしい?」

「なんかソワソワしています、何か心配事があるのですか?」

「心配というか、告白というか…」

「告白?」

「さっ、朔!お待たせしました」

首を傾げ不安気に

「凛々?」

と呟いた朔は凛々の意図に気が付いたようで途端に満開の向日葵のように眩い笑顔を見せて

「凛々、もしかして俺と付き合うって決めてくれたの?俺を男として認識してくれたの?」

恥ずかしくて顔を上げられない私の顔を下から覗き込んで聞いてくるので黙って何度も首を縦に振ったら抱き締められてクルクル回された。

「朔、目が回る」

「あっ、ごめん、嬉し過ぎてつい、凛々ありがとう、本当にありがとう、何ものからも守るから、愛してる」

「恋愛に疎い私で本当に良い?」

返事は甘く啄む口付けで凛々は狼狽えながら受け止めた。

朔の唇が離れていくとそれを追うように凛々は朔を見上げた。

「凛々少し口を開けて」

素直に従うとそこに再度唇を寄せた朔が舌を侵入させて来たので、驚いて舌を引っ込めた凛々は、朔の舌が我が物顔で口内を蹂躙し凛々の舌を捉えると絡めて扱いて来たので離れようとしたのに後頭部を押さえられ身動きが取れなかった。

そのうち気持ち良さでウットリした口の端から飲み込めなかった唾液が溢れてあまりの卑猥さに身震いしてしまった。

「凛々の嫌がることはしない、全部俺に任せて」

膝裏に手を差し込まれ横抱きにされると朔の寝室に連れて行かれた。

泊まりに来ても別々の部屋で寝ていたから初めて入る朔の部屋、ベッドとサイドテーブル以外何もないシンプルな部屋だった。

なんだか朔らしいと感じていたらベッドに横たわらされてその上に朔が覆い被さって来た。

「こんな歳になって経験がないなんて引くと思うんだけど現実だから隠せないもんね、面倒な女でごめんね」

目を見開き驚いた顔を見せた朔は

「凛々が面倒なわけない、俺は嬉しい、だって愛しい凛々の初めてが俺で!生涯俺だけにしてね」

夜の帳に二人の心と身体が融け合い、初めてだというのに朔は、優しく優しくと思う気持ちを本能が理性を飛ばして何度も何度も求め合う長い長い夜となった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ