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彼は彼女を忘れられない  作者: 瞳湖
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どういうこと?

どういうこと?


 安河総合病院で働き始めてもうすぐ1ヶ月、五月は母の祥月命日で早いものだなと思いながら一日を過ごした。

 

 今夜は朔のお宅で夕飯を作る約束になっていて、グラタンとハンバーグが食べたいなんて言うから合体させてハンバーググラタンにすることにした。

ミモザサラダの付き合わせとご飯とオニオンスープで良いかな、ハンバーグはあといくつか作ってラップしておこう、一口ガンモと椎茸、大根の抱き合わせと定番の肉じゃがはタッパに詰めて冷蔵庫に置いておけばサッとレンジでチンすれば食べられると思ってそれも用意することにして材料は朔に伝えてある。

 朔のマンションはこの町で一番の高層マンションで二十四時間コンシェルジュ在中というとんでもないセレブ仕様で、買い物も頼んでおくとして貰えるらしく私が頼んだ材料はこの人たちが買って来てくれたものだった。

「凛々、本当に美味しかった」

「そう言って貰えると作った甲斐があったわ、冷凍庫にハンバーグが二つと冷蔵庫にガンモ、椎茸、大根の炊き合わせと肉じゃがをタッパに入れてあるからチンして食べるんだよ、ご飯も一膳ずつラップしておくからね、ちゃんと食べてね」

「短時間にそんなことまでしてくれてたなんて、凛々!」

朔が後片付けを手伝いながら抱きつこうとしたので

「コラ!泡ぶくの手で抱きつかないで」

「あっ!ごめんなさい」

謝って下を向く朔が、項垂れてシュンとした仔犬のようで思わず発動してしまった愛おしいと思う気持ちに自分でドギマギしてしまった。

「怒ってるわけじゃないからね」

私の一言でパッと明るい笑顔を見せるなんて私いつまで心がもつだろうか。

 さらに、朔のマンションには私の部屋なるものまであって

「いつ凛々に逢っても良いようにココに越した時からあるよ、いつ泊まりに来ても良いからね、凛々に逢ってからは洋服も何着か買ったけど流石にインナーは分からないからこの間一緒に買ったし身体一つで来てくれたら良い、なんなら一緒に住んで欲しい」

いやいやそれはダメだろう……。

「朔って私の二つ下だから今年30歳になるよね、めちゃくちゃ頑張ったんだね、こんな凄いマンションに住めるくらいにさ、私はダメだな、看護師になる夢も諦めてしまったし」

朔が目を見開いて私を見ていた。

「んっ?どうしたの?」

「凛々はやっぱりちゃんと見てくれてるんだね、普通はこう言われるんだよ『ボンボンは良いな』ってね、俺の頑張りとか関係ないわけ、大きな病院の息子ってとこしか見てないから」

「でも、朔のお父様って無闇矢鱈に甘やかすタイプには見えなかったけどね」

「凛々?親父には一度会っただけだと思ったけど?」

「そうだよ」

「凛々の言うように親父は甘いだけの人じゃない、厳しくも温かくて、あちこちぶつかりながら俺が進むのをじっと見てくれてる人だよ、相談すればヒントはくれるけどね、凛々は看護師になりたかったの?これから頑張れば?こんなに近くに家庭教師もいることだしね」

そうだ、朔のお父様は確かにそんな人に見えたと頷けば朔が嬉しそうに微笑んでいた、看護師になるのに朔が助けてくれるならこんなに力強いことはないけど。


 「凛々、来週の予定は?」

「あぁ、来週の日曜日は母のお墓参りに行くの」

「お墓参り?あっ!俺と逢ったのが四九日だったから…そうか今月は命日…」

「うん」

「俺も一緒に行ってもいいですか?」

「えっ?朔が?」

「だって、俺のもう一人の命の恩人じゃないですか」

「朔……」

朔は私にとても優しい、けれどそれは私を彼が命の恩人と思っているからで私を生きる糧にしてくれていたからで…。

男女の恋愛から私が好きだというのではないのではないか?私は男性としての朔に惹かれ始めてるからなんだか無性にそのことが気になりそして、哀しく思えてしまうのだった。


 お墓参りに朔も一緒に来てくれた。

「凛々の家のお墓は隣町だったんだな、探しても見つからないわけだ」

母のお墓に行くと先に誰かお参りしてくれていたようでお花とお線香が供えてあった。

今さっき帰られたような感じに周りを見渡すと朔が声を上げた。

「父さん?父さん!」

(えっ?どういうこと?)

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