プロローグ
プロローグ
公園の片隅に大きな土管がある、大人が腰を屈めて歩けるくらいの土管だ。
まさか、こんな所が俺の墓場になるとは思いもしなかったけどこれが運命というやつなのかもしれない。
今まで当たり前に俺の居場所だと思っていた所がそうではないと分かって暴れた結果がこれだ。
育ててやったのに恩を仇で返しやがってと思われるのだろうか?そんなことを言う人たちじゃないと知っているのに最後まで憎まれ口を叩いて俺はどうしようもない馬鹿野郎だ。
なんか熱い、どっか折れてるかもな。
そう感じながら俺はウトウト寝てしまった。
突然のゲリラ豪雨に傘を持っていなかった私は昨夜からの雨が朝は上がっていたからうっかり忘れたのを悔しく思いながら近くの公園の土管を思い出した。
あそこなら直ぐだし雨宿り出来ると思ってやって来て中に入ってビックリした。
先客がいたから。
「ごめんなさい、私も雨宿りさせて下さい」
そう声を掛けたのに返事がないので、そこまで嫌がらなくてもと相手の様子を伺って驚いた。
一瞬死んでいるのかと思ったのだ。
「えっ?何?死んでるの?」
高校生だろうか?怖いもの見たさで近づいて見ると眠っているようだったがとても具合が悪そうだ。
「ねぇ?ちょっと貴方!大丈夫?」
ユサユサと身体を揺さぶって見ると微かに目を開けたその人は
「誰?天使?俺死んだの?」
コラコラわたしが天使に見えるのか?
「死んでないし、私は天使じゃないし、ねぇしっかりして」
そう言って彼の額に手をやるとあまりの熱さにビックリした。
「これはダメなやつだ、今救急車呼ぶからね、待ってね」
携帯を取り出して掛けようとした手を突然熱い手で握られた。
「救急車ヤダ、病院嫌い」
「嫌いとか言ってる場合?ホントに死んじゃうよ」
「なら死ぬ」
「何言って……」
彼は私の言葉を遮るように
「病院行くくらいなら死ぬ」
そう言うと雨の中土管から出ようとするではないか!
「わっ、分かった、救急車呼ばないからここにいて!」
「ちょっと待ってて」
私は土管を出ると駅前のドラッグストア目指して全力で走った。
風邪薬、解熱剤、額に貼る熱冷まし、スポーツドリンクと小さい怪我を幾つかしてるようだったから消毒液と絆創膏とオニギリ、ヨーグルトを買って土管に戻って来た。
彼は大人しくそこにいた、というか動けないようだった。
「本当に病院行かなくていいのかな?」
「大丈夫だから」
「おっ、起きてたんだ、ならね、少し身体起こせる?手伝うから」
彼の上半身を起こして背中に彼の横に転がってるカバンを挟んだ。
「いきなりクスリ飲めないからね、ヨーグルト食べられる?おにぎりもあるよ」
「ヨーグルト…」
蚊の鳴くような声でそう呟く彼にヨーグルトを渡しても自分では億劫なのか食べないので私はスプーンで掬って一口ずつ食べさせた。
「これ、解熱剤、いい子だから飲んで」
飲み込ませたの方が合ってるかもしれない、スポーツドリンクで流し込んで貰った。
一体どうしてこんな所にいるのか聞いてみても悪くはないと思うのよ、こんなになるほど雨に濡れてたなら昨夜一晩雨の中を動いていたのかしら?
「昨日ずっと雨の中動いていたの?」
「あぁ…」
「こんなになるまで?アンポンタンだねぇ」
彼はムッとした様子で
「子ども扱いするな」
「子どもでしょう?濡れ鼠でどうなるかわかるでしょうに、アンポンタンです」
「ほっとけば良かっただろ、俺のことなんか、どうせ誰も気にしやしない」
「なんかあったの?気にするでしょ、目の前で倒れてればさ」
「どうせ俺なんか死んだ方がマシ、居ない方がいいんだ」
「ちょっとちょっと、それは助けようとしてる私に失礼じゃない?死んだ方がいい人もいない方がいい人いないのよ」
「煩い!俺なんか!」
「煩いのは君、なんかって自分を卑下しないの、私は貴方が元気になってくれたら嬉しいよ、きっと今はしんどくても生きていて良かったと思える時が来るからさ、今は助けようとしてる私のために生きようと思ってよ」
「俺……生きていていいの?」
「いいよ、当たり前だよ」
「お姉さん、なんて名前?俺、長良朔【ながらさく】」
「私は高瀬凛々【たかせりり】さっ、少し眠るといいよ」
「凛々、起きた時にいてくれる?俺の前にいてくれる?」
「いる、約束するから安心して、朔、さっ眠ろ」
「うん」
暫く様子を見ていた凛々は朔が兄さんと何度か寝言を発するのを聞いて両親に連絡して欲しくないならばお兄さんに連絡しようと申し訳ないが彼の鞄から携帯を探すと兄と思われる人のナンバーを押した。
その後、自分のノートを破ると朔宛ての手紙をしたため彼の鞄に忍ばせたのだった。