表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/241

第91話 僕の妄想だったとか

〇(地球の暦では9月6日)テラ



 あれ? もしかして……

 外から馬のいななきが聞こえる。

 風花は隊商が戻るのは今日だって言っていたけど、まずは広場でバザールだよね……

 念のために、作業をやめて工房の外に出てみる。


 いた!


「お帰り!」


 背中にいっぱいに荷物を積んだ二頭の馬を、井戸端の木に繋いでいるリュザールの元に駆けよる。


「ただいまー。元気なのは知っていたけど、やっぱり顔をみるとホッとするね」


 私もだよ。


「直接こっちに来たんだ」


「うん、今回はバザールで売るものが何もないんだ」


 ということは……


「その荷物は全部工房の?」


「そうだよ」


 すごい!

 鉄だけじゃなくて、他の鉱物もたくさん仕入れてくれたんだ。


「あーあ、荷馬車があったらバザール用のも運べたんだけどな……」


 あはは、早く作らないとずっと言われちゃいそう。


「それじゃ、みんなに……」

「お! 誰かと思ったらリュザールじゃねえか」


 工房にリュザールが帰ってきたことを知らせようとしたら、鍛冶工房の方からパルフィがやってきた。


「休憩?」


「ああ、なんか急に外の空気を吸いたくなってな。ちょうどよかったぜ」


 いいタイミング。もしかして、カンが働いたのかな。それとも、鉄の匂いが漂ってきたとかだったりして……


「リュザール、元気そうで何よりだ。それで、坩堝るつぼはどこだ」


 パルフィがいつものように挨拶もそこそこに本題に入ると、


「ちょっと待って」


 リュザールも慣れた様子で織物で厳重に包んだツボのような物を馬から降ろし、パルフィの前で開いた。


「よし、これだ!」


 これなんだ……

 底の方が狭く、上に行くにしたがってだんだんと広くなっていて、しいて言うなら分厚い植木鉢って感じ。もちろん底は塞がっているから溶けた金属が漏れることは無いと思う。でも、


「あまり大きくないね」


「まあ、最初はな。人が増えてきたら坩堝も炉も大きくしていく予定さ」


 効率を重視して大きくしても、重たくて持てなかったら意味がないもんね。


「それじゃ、早速……」


「ちょっと待って!」


 パルフィが坩堝を担いで鍛冶工房に帰ろうとするのを、リュザールが慌てて引き留めた。


「伝えたいことがあるから、聞いて!」


「なんだい? こちとら急いでんだ。その様子なら、鉄も手に入ってんだろう。それは後からでも構わねえ。とにかく早く炉の調整をしねえと、おめえの次の出発に間に合わなくなるぞ」


「そ、それは急いでもらいたいけど、まずは聞いて」


 リュザールはパルフィのお母さんから頼まれたこと、そして……


「ほんとか! ようやくこれでまともな仕事ができるようになるぜ」


 パルフィのおやじさんが、鍛冶工房の職人さんを探してくれたことを伝えた。

 私は地球で風花から聞いていたけど、パルフィを驚かせるために黙っていたんだよね。


「パルフィ、一緒に迎えに行く?」


 その職人さんたちは父さんが村の人に紹介した後にこちらに来るはずだけど、バザールを見に行くつもりならそこで挨拶してもいいだろう。


「いや、あたいは仕事してっからよ。後は頼むぜ」


 パルフィは、改めて坩堝を担ぎなおし鍛冶工房の中に消えていった。


「ははは、パルフィらしいや。それで、ユーリルは?」


「人に見られたら困るからって、今日は朝から籠ってるよ」


 家の方を見る。


「そっか……間に合いそう?」


「うーん、たぶん」


「わかった。ボクも明日から手伝うよ。一台より二台、数が多い方が安心して出発できる。さてと、ソルはこれからバザールに行くでしょ」


 もちろん! うんと頷く。


「ボクも一緒に行くから、荷物を降ろすまで待ってて」


「あ、手伝う。というか、みんなに知らせなきゃ」


 リュザールが持ってきてくれたのは工房の荷物なんだから、みんなで運んだ方が早くバザールに行けるはずだ。





〇9月6日(水)地球



「海渡、あの後あの子に会った?」


 放課後の武研の帰り道、キョロキョロとあたりを見渡すことが多くなった海渡に声を掛ける。


「いえ……」


 やっぱり……海渡が教えてくれた特徴の女の子を誰も見ていない。


「旅行で来てただけだったのかな」


「でもさ、海渡はその子は一人だったと言ってたぜ。朝早くから、外国から来た女の子が一人で出歩くか?」


 日本は治安はいい方だけど、他の国はそうではないと聞いている。竹下の言う通り、そんなところから来た子が、いきなり一人で町に出るとは考えにくい。だから、こちらに引っ越して来てて、すでに何度か散歩をしている子なんじゃないかって思っていたんだけど……


「その子も海渡くんの気配を感じて、思わず出てきちゃったのかもね」


「そ、そうなのでしょうか。あの子の存在自体、僕の妄想だったとか……」


 自分一人しか見てなかったら、不安になっても仕方がないか……


「海渡、今はきっと時期じゃなかったんだよ」


「そうそう、樹がそういうんだからそういうことだな」


 ん?


「だね。のんびりと構えていたらボクみたいに引き寄せてくれるよ」


 ええ!?


「はい! その時が来たら、きっと樹先輩が導いてくれるはずです」


 慌てて首を振る。

 無理だよ、そんなことできないよ。って、みんなも頷かないでー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=onツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ