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第82話 お米を上手に炊けました

〇(地球の暦では8月15日)テラ



 ちゅん、ちゅん

 鳥のさえずりが……起きなきゃ。


「うーん」


 一伸びして辺りを見わたす。

 木窓の周りがぼんやりと明るい。そろそろ日の出。いつもの時間だ。

 みんなを起こして……あ、ルーミンが動き出した。


「はえ?」


 はえ???

 手を見たり、頬をつねったり……まだ夢でも見てるのかな?


「えっ!? なんで?」


 どうしたんだろう。ちょっと様子が……あ、こちらに気が付いた。


「そ、ソルさんちょっとこっちへ来てください!」


「え、え、何?」


 ルーミンに手を引かれ、女の子部屋から井戸のところまで連れて行かれる。


「どうしたの?」


「た、大変です。私、地球と切れちゃったかもしれません!」


 切れちゃったって……


「まさか、海渡と?」


「は、はい。そうです」


「どういう……」


 あ、みんなの声が……井戸に来ちゃう。


「ルーミン、こっちに」


 隣の工房の陰に連れて行く。


「何があったか教えてくれる?」


「え、えっと……あちらの今日ってものすごく忙しくて、朝が特別早かったんです」


 うんと頷く。

 海渡は、何艘もの精霊船しょうろうぶねの担ぎ手さんたちのお弁当を頼まれていて、おかずの他に何百個ものおにぎりを握らないといけないから朝から大忙しなんですぅと言っていた。


「目覚ましを3時にかけてその時間に起きたのですが、その時はまだ切り替わってなくて……」


 切り替わってなかった?


「ということは、寝た時と同じだったってこと?」


「はい、私にならずに海渡のままでした」


 私たちは夜眠った後、朝、目が覚めた時には違う世界の自分になっているんだけど、その詳しい条件というのがいまいちわかっていない。


「寝直す時間は無かったので、支度をして家族と一緒に仕込みを始めました」


 海渡の家族は海渡とルーミンの事情を知らないから、それは仕方のないことだと思う。


「気分が悪かったとかは?」


「まったく。ただ、いつもはまだ寝ている時間なので眠たかっただけです。それで、途中の休憩の時にひと眠りしたら切り替わるのかなと思ってお米を研いでいたのですが、突然目の前が真っ暗になって気がついたらルーミンになってました……」


 突然……


「海渡がどうなったかは……わからないよね」


「はい。海渡、もしかしたら死んじゃって、それで……」


 あわわ、ルーミンがみるみる涙目に……


「そ、そんなことないから、たぶんその時間に切り替わるようになってただけ。こちらで寝たら、明日はちゃんと地球でお米研いでるところから始まるはずだよ」


 ルーミンをギュッと抱きしめ、落ち着かせる。


「え、えへ。きっとそうですね。お騒がせしました」


 ルーミンは涙を拭ったけど、止まり切っているわけではないみたい。


「後から、二人にも話してみよう」


 ユーリルとリュザールに聞いてもらって対策を考えないと……






 食事が終わった後、工房の仕事が始まる前にユーリルとリュザールも呼び、ルーミンのことを伝える。


「なるほど……確かに、こちらにいる間は地球ことを何もわかんねえんだよな」


「うう、やっぱり海渡は死んじゃってるですぅ……」


 またルーミンの目に涙が……


「まあ、落ち着け。海渡がどうこうというより、俺たちが気付かないうちに地球が無くなってしまってるかもしれないぜ」


 地球が……

 あ、ルーミンの涙が止まった。


「えへへ、皆さんと一緒なら死んじゃっててもいいです」


 それでいいんだ。


「俺はそんなの嫌だから、地球はそのまま存在していると仮定して、たぶん時間になったから強制的に切り替わったんじゃねえのかな」


 やっぱりそうだよね。


「ルーミンちゃん、それは何時頃だったの?」


「3時に起きてちょっとしてからだったので……3時半にはなってないと思います」


 いつもなら寝ている時間だ。


「やっぱり、時間なのかな……切り替わりの条件を調べなきゃって思ってたんだ。あー、こんな事なら先にやっとくべきだったぜ」


「私が知ってたらよかったんだけど……」


 寝てないといけないとか、時間なら何時なのかとか。


「樹先輩もソルさんも一度寝たら朝までぐっすりなので、仕方がないですよ」


 うう、だって夜はすぐに眠たくなるし、気付いたら朝だもん。


「ソルだけじゃないよ。ボクも地球と繋がってから寝つきが良くなったし、途中で目が覚めることが無くなった」


「それは俺だって一緒。あまりにも気持ちよく眠れるから、途中で起きてみようという気になんねえんだよな。それで、試すのが後回しになってた」


 そうなんだ。


「ところでリュザールは、隊商で寝ずの番とか無かったのか?」


 そうだ、寝ずの番をしていたら、途中で切り替わったのがわかるはず。


「野宿の時だけ交代でやって、隊商宿で寝るときはたいして危険はないからみんな一緒に寝てるね。そういえば地球と繋がってからは野宿してないや」


 それで、リュザールは気付かなかったんだ。


「ま、あれだけ元気な海渡がどうかなっているとは思えないから、こっちで寝たら……えっと、米研ぎの途中だっけ?」


 ルーミンはうんと頷く。


「その続きから始まると思うから、米をぶちまけないように注意しろよな」


 そうだよ。こっちで寝た瞬間に地球の続きから始まるんだから、気を付けとかないと戸惑っちゃう。


「ほんとですね……って、米研ぎの時でよかった。包丁使っている時なら、危ないところでした」


 はは、ケガしちゃうよ。





〇8月15日(火)地球



「んっ……」


 外はまだ暗い……いつもよりも早く目が覚めたみたい。


 枕もとのスマホに手を伸ばす。

 5時か……

 あ、メッセージが届いてる。

 海渡だ!


「……ふう、よかったぁ」


 ふふ、お米を上手に炊けましたって。ちゃんとテラの記憶も残ってる。

 おっと、陸に返信。


「夕方は予定通りいつもの場所に集合……」


 海渡のおかげで、テラとの切り替わる時間がわかったかも。もし徹夜しないといけなくなった時には、そのことを頭に入れておかなくちゃいけないね。

海渡が起きた時間を2時から3時に修正しました。(9/23)

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