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第75話 学校どうするの?

「あーあ、終わっちゃいました……」


 まさにフィナーレと呼ぶにふさわしく、大輪の花を夜空一面に咲かせていた打ち上げ花火。徐々にその姿が消えていき、薄っすらと残っていた煙までも風に流され見えなくなってしまった。


 そして、終焉と共にこれまで気付かなかった周りの喧騒が耳に届いてくる。


「ほら、お前たち、遅くならないうちに帰るぞ」


 最後まで僕たちに付き合ってくれた由紀ちゃんと一緒に会場を後にする。


「今日は先生がいてくれて助かりました」


「見回りの途中にお前たちがいたから声をかけたまでだ。気にするな」


 僕たちは中学生だから、夜遅くまで出店を手伝うことができない。それに保護者もいないので、僕たちだけで会場に残って花火を見るわけにはいかなくて、帰ろうとしたときに由紀ちゃんに会ったというわけ。


「おかげで真下から大迫力で花火を見ることができました。大感謝です!」


 海渡、大はしゃぎだったもんね。


「ま、私も今年は賑やかに花火を楽しむことができたから、おあいこだな」


 今年はって、由紀ちゃん、去年も一人だったの?


「あのー、先生の家もこちらなんですか?」


 風花は由紀ちゃんも一緒の方向に歩いているのが不思議みたい。


「そうか、小さい頃の風花とはあまり絡んでなかったな。私もこいつらの近くに住んでんだ」


 そうそう、由紀ちゃんの家も僕たちと同じ町内。10歳年上だから一緒に遊ぶことは無かったけど、親同士の仲がよかったからお祭りや子供会の時にはよく面倒をみてくれていたんだ。だから、一応由紀ちゃんも幼馴染になるのかな。


「風花先輩。由紀ちゃん先生は学校帰りに僕の家で惣菜を買ってくれるんですよ」


 へぇ、そうなんだ。


「でも、いつも一人分なのですが、彼氏さんはいらっしゃらないのでしょうか?」


「余計なお世話だ!」


 由紀ちゃん、やっぱり一人なのかな……


「先生、ほんとに彼氏いないの? 好きなタイプはどんな方ですか?」


 あーあ、風花が食いついちゃった。


「なあ、樹」


 竹下が近づいて来て、ちょんちょんと和服の袖を引っ張ってきた。


「あのさ、今日の花火だけど、どうする? 決めとかないと、ルーミンがみんなに話しちゃうぞ」


 由紀ちゃんの方も気になるけど、竹下がわざわざ聞いてくるということは急ぎだよね。

 えっと、あちらでルーミンが花火の話をしたらみんな喜ぶんじゃ。何か不味いことでも……あっ!


「火薬だ……」


 竹下はうんと頷いた。

 風花たちは……まだ先生とじゃれあってる。


「話しちゃダメって、二人には後から伝えておこう」


 花火には火薬が必要で、その火薬は古代中国で使われていたと以前調べたことがある。中国で作られたのなら、陸続きのカインでも隊商の情報網を利用して材料を揃えることができるはずだから、花火を作ることは可能だと思う。ただ、それをやっちゃうとあちらに火薬を持ち込むことと一緒なので……

 みんなが見て楽しむだけで満足してくれたらいいんだけど、もし盗賊の手に渡っちゃったら村を襲うときに火薬を使うはずだし、村は村で火薬を使ってそれを迎撃しようとして……ただでさえ人が少ないのに、そんなことになったらあちらの世界は滅んじゃうよ。


「ところでさ、海渡って、前からあんな感じだった。武研の時も思ったんだけど、なんか違和感が……」


 海渡は風花と一緒に、由紀ちゃんのタイプを聞き出そうと躍起になっている。


「んー、もしかして距離感?」


「そうだ! 女性に対しての距離感が近くなってんだ。あ、そういや樹も前からそうだな」


 気にしたことなかったけど、僕は相手が女の子だからって遠慮することはないかも。


「なあ、俺にもできるかな」


 竹下が?


「無理」


「即答!」


「だって、下心あるでしょ」


 たぶん海渡もそうだと思うんだけど、僕の場合は女の子に対しても同性の友達と同じように付き合っているだけ。


「そんなことないって、だって俺のタイプが年上なのは知っているだろう」


「知っているけど、同級生の女の子に対して鼻の下を伸ばしているもの知っているよ」


「だ、だって女の子って可愛いし……」


「チャンスがあればと思っている間はダメ」


 竹下はがっくりと肩を落としちゃった。こちらで運命の人が見つかってないから一生懸命なのかもしれないけど、そういう考えだと女の子はすぐに気づいちゃう。


「ところで、竹下は由紀ちゃんのタイプって気にならないの?」


 確か10歳差くらいは問題なかったはず。


「気にならないことは無いけど、由紀ちゃん、彼氏いるぜ」


 竹下が、僕だけに聞こえるようにそっとささやいてきた。


「マジ?」


「マジ。2ヶ月くらい前にさ、うちに由紀ちゃんのおばちゃんが黒留袖くろとめそで(既婚女性の第一礼装)を買いに来たらしいんだ。もうすぐ由紀ちゃんの結納だからって」


 結納ということは、彼氏どころか婚約者だ。


「そろそろ仕立て上がる頃だから、結婚も間近なんじゃね」


 確か結納のあと数ヶ月して結婚だよね。


「相手は?」


「それは知らないけど、遠くに住んでいるらしい」


 遠くか……


「学校どうするの?」


「さあ、俺が直接話したわけじゃないから」


 由紀ちゃん、武研の顧問なのにどうなるんだろう……

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