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第55話 さてと……風花、やっちゃったね

〇7月3日(月)地球



「みんな、静かにしろ! 早速だが、転校生を紹介するぞ」


 朝、まだ騒がしさが残る教室に担任の戸部とべ由紀ゆき先生が現れた。


「今頃?」

「先生、女の子?」


「まあ、確かに卒業までそんなにないが、親の仕事の都合でこっち来てるからみんな仲良くしてやってくれ。それと、女子だ。男子よかったな」


 男子、女子双方から声が上がる。


「先生とどっちが可愛い?」


「うーん、可愛さはあっちかな。若さにはかなわん。だが、女の魅力なら私が断然上だろうな」


「由紀ちゃん、恋人いないじゃん」


 ドッと上がる笑い声。


「山下、うるさい! それに先生を付けろ!」


 あーあ、また山下だよ。あいつはすぐ調子に乗るからな。

 転校生はきっと風花だ。やっぱり僕たちのクラスだったね。


「ほら、静かにしろ、転校生が入れないから。立花、入ってこい!」


 たちばな? といってみんなが僕の方を見たけど、すぐに前の扉が開いたのでそっちを向いてしまった。


「ここに来て自己紹介をしろ」


 中学の制服を着たミドルヘアの女の子はピンと背を伸ばし、壇上で挨拶を始めた。


「初めまして、立花風花です。東京から来ました。卒業までの間、よろしくお願いします」


 風花の苗字は立花だった。小さい頃は気にしなかったけど一緒だったみたい。でも親戚というわけじゃなくて、お母さんたちが偶然同じ苗字の人と結婚したんだって。


「立花は小さい頃こっちにいたそうだ。知っている者もいるんじゃないか?」


 みんな首をひねっている。山下は子供のころから付き合いがあるから、知っているはずなんだけど……


「まあいい、席は……とりあえず立花……は二人になったのか。じゃあ、樹の隣、二学期には席替えするからそれまで立花同士二人仲良く並んでてくれ」


 隣の席までやってきた風花に目で合図をする。

 待ってたよ。


「……よし。まず、今日の予定は――」


 由紀ちゃんは風花が席についたのを確認して、ホームルームを始めた。


「風花、いらっしゃい」


 ちょっとだけ、風花の方に寄ってみる。


「よろしく、樹くん」


 風花もこちらを向いて微笑んでくれた。くぅー、可愛い……


「ほら、そこ! いくら苗字が一緒だからって、仲良くなるのが早すぎだろう」


 突然の先生からの注意にみんなから『結婚はいつ?』とか『もうやったの?』とか冷やかされ、顔が赤くなってくるのがわかる。チラッと見た隣の風花も俯いて頬を染めていた。





「え? 立花さんってふーくんなの?」


「うん、山下くん、久しぶりだね」


 放課後、竹下たちと風花に学校の案内をしてる途中、売店前で山下とばったり会った。


「お、女の子になっちゃったの?」


 そう思うよね。


「山下先輩、風花先輩は昔から女の子でしたよ」


「ウソだー。普通に俺たちと一緒に転げまわって遊んでたじゃん」


 確かにそうだった。だから、僕たちもずっと男の子だと思っていたんだ。


「お、ちょうどいいところに、立花……の風花の方!」


 由紀ちゃんだ。見回りの途中かな。


「はい、先生」


「転校したてでって、まあ、お前には知っている者がいるみたいだから大丈夫みたいだが、もし何か困ったことがあったら――」


 由紀ちゃんは、僕たちのことを気にかけてくれるいい先生なんだよねーって、山下ぁー。

 風花に後ろから忍び足で近寄る山下。それを止めようと思って、体を動かそうとしたら竹下から止められた。


 でも、それだと……


 風花の真後ろにいたはずの山下はいつの間にかひっくり返っていて、風花は山下の首に手刀をあてていた。

 まあ、そうなっちゃうよ。風花はリュザールの技を使えるから。


「あ、ごめん山下くん。後ろからだったから思わずやっちゃった」


 風花は舌をペロッとだし、山下から離れた。


「え? え? なに?」


 山下は呆然としている。


「風花! お、お前その技!?」


 由紀ちゃんはなぜか興奮してて、


「す、すごい! 女子が男子を手玉にとった!」


 売店の周りにいたギャラリーは、他の人が聞いたら誤解しそうなことを言っている。


「由紀先生、ちょっとご相談が」


「え、竹下。私は風花に聞きたいことが……」


「いいからいいから、その件で……」


 竹下は由紀ちゃんをどこかに連れて行ってしまった。


 そして残された僕たちの周りには人だかりができてきたので、


「えっと、移動しようか」


 まだ呆けている山下を残して、その場を離れることにした。





 


「ここまでくれば……」


 いつもの渡り廊下は部活動の生徒がいる時間なので、階段の踊り場で一息つく。


「さてと……風花、やっちゃったね」


 風花はうんと頷く。


「まあ、あれは仕方なかったですよ。山下先輩、風花先輩の胸を揉もうとしてましたから」


 海渡は風花に向かって手をワキワキとさせている。

 確かにそんな手つきしてた。

 それは竹下も見ていたはずなのに、どうして止めなかったのかな? そのままにしていたら、風花が山下を投げ飛ばすのはわかっていたと思うんだけど……


「で、どうされます? 竹下先輩は由紀ちゃん先生と一緒にどこかに行っちゃいました」


 学校の案内もあらかた終わっているし……


「いつ戻って来るかわからないし、先に帰ろうか」


 用事があるなら連絡とってくるだろう。


「わかりました。それでは僕はカバン取ってきます」


「海渡、下駄箱でね」


 階段を駆け上がる海渡に向かって声を掛けると、かしこまりましたーという声が階段に響いた。


「僕たちもカバン取ってこよう」


 帰り支度をして風花と一緒に教室を出る。

 階段に差し掛かった時、下の方から見慣れた髪型が現れた。竹下だ。


「あ、お前たちまだいたんだ。よかった、話があるから、二人ともこれから俺んちに来てくれる。っと、海渡には……」


「下駄箱で待ち合わせているよ」


「りょ! 俺もすぐ行くから、待ってて」


 急ぎの話があるみたいだけど、さっきのことと関係があるのかな。

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