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第50話 カァルくん、実は人間だとか?

「パルフィ、問題ない。服を着て大丈夫」


 コペルから大事な部分を見られていたパルフィは、ドキドキしたぜと言いながら下着を履いている。

 ふぅ、よかった。これでパルフィも問題なく受け入れられそう。

 コペルも最近ではお母さんを手伝って女の人の診療を見ているみたいだから、そのあたりのことも教えてもらっているんだろう。


「そ、ソルさん」


 ルーミンにつつかれてそちらの方を見ると、診察で濡れた手を洗っていたコペルが難しい顔をしてこちらを見ている。


「そこの二人、隠し事は良くない。すべて白状する」


 ルーミンと顔を見合わせる。


「な、なんのことかな」


「ソルが旅に出た後、しばらくして急にルーミンが不安そうになった」


 たぶん私たちが盗賊に襲われて、リュザールたちが討伐しないといけなくなった頃だ。


「それが、この前から突然機嫌が良くなって、今日は一日中ソワソワしてた。そしてソルたちが帰ってきた。たぶん、ルーミンはソルが帰ってくることを知ってた。なぜ?」


 あーもう、ルーミンったら隠す気ないじゃん。







「ソルはずっとちきゅうという所でルーミンと会ってた?」


 これは隠し通せることはできないと思った私は、こちらでいくらルーミンと離れていても違う世界(地球)ではルーミンと会うことができることをコペルとパルフィに教えた。


「つまりその地球という世界には、もう一人のソルとルーミンがいるということだな」


 パルフィは呑み込みが早い。


「もう一人のソルたち?」


「ああ、ソルとルーミンは朝になったら地球で違う人間として生きているみたいだぜ」


「それがさっきソルたちの目が男みたいだったのと関係がある?」


「たぶんな、きっとソルとルーミンはそっちの世界じゃ男なんだろう。違うか?」


「ち、違わない」


「なら、パルフィは男の目で見て魅力的だということ、でも私はたまにしか見られてない」


「たまにじゃないです。コペルさんは魅力的です」


 ルーミンの言葉に私も頷く。コペルってほんと美少女だから、そういう対象としてみてはいけないような気がするからかもしれない。


「だな、コペルは可愛いぜ。自信持てよ。それで他に誰かいるのか?」


「ユーリルとリュザール」


「ユーリル! それにリュザールもか!」


「う、うん」


「四人だけ?」


「今のところは……」


「ほぉー……今のところはということは、増えることもあるんだな」


「う、うん」


「ついでに、それも話す」


 コペルには隠し事はできなさそうだ。


「匂い?」


 繋がっている四人に共通している匂いについて伝える。


「ソル、早く嗅いでみる」


 ルーミンと一緒にコペルの首元に近づく。


「あー……」


 普通の匂いだ。コペルしょげちゃった……ごめんね。私ではどうすることもできないんだ。


「繋がる可能性があると違う匂いがするのか? どれ……」


 パルフィが私の首元に……


「お、ソル、おめえいい匂いするな!」


 マジ!

 慌ててパルフィの首元を嗅ぐ……


「あ!」


 どんな匂いとは言えないんだけど、何か特別な感じがする。


「合格ってことか? で、誰と繋がるんだ?」


「それはまだ。夜に私と手を繋いで寝て、パルフィが夢を見たらその人が見ている景色かも」


「寝るときに……ソル、今晩頼むな」


 うんと頷く。


「お? なんだ?」


 ドアの近くにいたパルフィが何かに気付く。

 カリカリという音が……


「あ、カァルだからドアを開けて」








「カァル、あちらも終わったの?」


「にゃおん!」


 私の膝の上でくつろいでいるカァルは、顔をあげて返事してくれた。


「へぇ、賢いな。ソルの言っていることがわかっているのか?」


「カァルくんはソルさんに限らず、私たちが話していることもわかっているみたいですよ」


「そうなの?!」


 適当に返事してくれていると思っていたらわかっていたんだ……って、さすがにそれは無いんじゃないかな。


「私の考えなんですけど、地球で聞いたソルさんたちのことを話したら一緒に心配したり、喜んだりしてくれたのでおそらく……」


「本当なの、カァル?」


「にゃおん!」


 カァルぅー、誇らしげに鳴いているけど、よくわからないよ。


「まあ、喋らねえからそうなのかどうかわからねえが、頭が良さそうなのは違いねえな。さっきもあたいたちが挨拶する間は黙って待ってやがった」


 確かに、あの時は真っ先に飛び込んでくるかと思ったら、まずは馬の方に挨拶に行っていた。もしかしたら私たちの様子を見て、すぐには私のところに来れそうにないと思ってそうしたのかもしれない。


「カァルくん、実は人間だとか?」


「さ、さあ……」


 この世界に人をユキヒョウに変える魔法はないと思うけど……いや、ないとも言えないのかわからないことだらけだから。でも、もし人間なら……


「……ソルさん、何をやっているんですか?」


「あっ!」


 逃げられちゃった。


「いやー、カァルが人間ならキスしたら戻るかなって思って……」


「なるほど、ソルさんが意外に乙女なのはわかりましたが、カァルくんには通じなかったようですね」


 カァルは、新しく仲間になったパルフィの膝の上で丸くなってしまった。


「ところでよぉ、あたいユキヒョウって初めてなんだが、こんなに懐くもんなのか?」


 パルフィはカァルを恐る恐る撫でている。仕草は猫っぽい感じなんだけど、一応肉食動物だからね。怖くても仕方がない。


「カァルは特別だと思う。普通は近寄りさえもしないよ」


 あれだけ旅をしているセムトおじさんも、一、二回しか見たことが無いって言っていたし、私もカァルに会うまでは本物のユキヒョウを見たことは無かった。


「そうなんだ。……それでよ、ソル。お前が言ってたあたいの旦那……ユーリル。村に着いてからずっと話かけてきてた奴だろう。最初は見てくれは悪くねえが背が低くて頼んねえなって思っていたんだが、話してみたら頭が良さそうでよ。感心してたんだ」


 おお、好印象だよ。


「ただなぁ……あの体でおやじに勝てると思うか?」


 ほらね、見たらそう思うよ。


「たぶん、たぶんだけどね、これからリュザールが技を教えてくれることになっているから、何とかなると思うんだ」


「リュザールがねえ……間に合うのか?」


「こっちだけじゃなくてあっちでもやるから、大丈夫なんじゃないかな」


 こればかりはやってみないとわからないけど、リュザールと風花が何とかしてくれると思う。


「こっちとあっち……つまり時間を倍使えるということか。やっぱすげえなおめえたち」


 ほんとパルフィは理解が早い。地頭がいいのかも。


「時間が二倍……たくさん織物ができて羨ましい。ちきゅうにも私がほしい」


 地球のコペルか。私が何とか出来たらいいんだけど……


「あ……ソルごめん。私は今のままでも満足。ただ、技と言うのには興味があるからやってみたい」


「うん、みんなで一緒に教えてもらおう」


 リュザールが隊商で出ているときは、私たちと一緒に自主練したらいいからね。


 コンコン!


 ん?


「ソル姉、まだ終わらないの? 父さん帰って来たよ」


 いけない、話に夢中で忘れてた。


「みんな、急ごう、怒られちゃう」


 新たに二人が増えた久しぶりの我が家の食卓は、賑やかでとても暖かだった。

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