第49話 そこの二人! 目が男の子!
〇(地球の暦では7月1日)テラ
「ここがカイン村か……ほんと山と草原しかねえな」
私と並んで歩くパルフィは、興味深そうにあたりを見渡している。
「田舎でびっくりしたでしょう」
「なあに、こういうところが鍛冶に集中できていいんだぜ」
そう言ってくれると嬉しいよ。
私とパルフィとアラルクの三人は広場で隊商の人たちと別れ、村の一番……いや東から二番目にある我が家に向かって進んでいる。
荷物を括り付けた二頭の馬は、リュザールが盗賊討伐の報酬として得たもの。それを私たちに貸してくれたから、この道中、荷物を持たずに済んでほんと助かった。
「ねえ、ソル。いきなり行って、僕、いじめられたりしないかな……」
アラルクって体は大きいのに気が弱いみたい。剣の腕も立つみたいだから、もっと自信を持ったらいいのにね。
「心配しなくても、みんなやさしいよ」
新参者に辛く当たるような人は誰もいないけど、アラルクが来ることは竹下と海渡に伝えているから、ユーリルとルーミンが上手くフォローしてくれるはずだ。
「お、誰か来るぜ」
前から来るのは……
「えっと、ちっこいのが弟のテムスで、それにこの前うちに来たユーリルとルーミンだね」
隊商が到着したって誰かが知らせてくれたんだ。
いつものようにテムスが飛び出して、それをユーリルが追いかけて……訂正、テムスとルーミンが飛び出して、ユーリルが追いかけて来たんじゃないかな。
「ちょっと待って……大変だ! 何かに追われているよ」
三人の後ろに見えるのは……
「あの子は大丈夫」
カァルも来ちゃったか。
「ソル姉ー!」
飛びついてきたテムスを抱きかかえる。
「テムス! 元気にしてた?」
「してた! ソル姉遅いよ! みんなで心配してたんだから」
一応予定通りなんだけど、待っている方は長く感じるんだよね。
「ところで、ソル姉。この馬、どうしたの?」
テムスったら、あっという間に私から離れてもう馬たちの顔を撫でているよ。ユーリルにいろいろ教えてもらっているみたいだから、馬のことが気になるんだろう。
「借りてるんだ。しばらくうちで預かることになるから、お世話してもらえるかな」
「わかった!」
「ユーリルもお願……」
ユーリルはパルフィを見て口をパクパクしている。
……放っておこう。
そうだ、ルーミンは?
「ソルさん、お帰りなさい」
振り向くと少し女の子らしい体つきになったルーミンが、ニコニコとした笑顔で立っていた。
「ルーミン! すごい!」
「えへへ」
地球で聞いていたけど、改めて見るとびっくり。もう少しで標準体重くらいになりそう。
「それで、ソルさん。その方々はどなたですか?」
ふふ、ルーミンったら台本通りにしゃべってる。
「鍛冶職人のパルフィと工房で働いてくれるアラルクだよ」
ユーリルはまだ口をパクパクしていた。
「カァル」
一通りみんなの挨拶がすむまで、馬のそばでジッと座って待っていた白色の毛並みの美しいけものに声を掛ける。
「ニャオン!」
そのけものは一鳴きすると10メートルほどの距離を一瞬で詰め、飛び込んできた。
「カァル! 大きくなったね!」
一か月でこんなに……見違えるようだよ。
「毎日ご飯もたくさん食べるんですよ。私もそれにつられて食べてました」
へぇー、地球で何も言ってなかったじゃん。私を驚かそうとしてくれたんだね。
「それじゃ、行こうか」
カァルを先頭に再び家までの道のりをみんなで歩く。
「ソルさん、タリュフさんたちはどうされたんですか?」
私の隣を歩くルーミンが聞いてきた。
ユーリルは馬を引きながらパルフィにべったりだし、テムスはアラルクにまとわりついている。
「父さんは、新しい住民を受け入れるために村の人たちに話に行っているよ」
「ということは、工房にも新しい方が来られるんですか?」
「うん、何人か来てくれることになっているんだ」
「それは助かります。糸車をいくら作っても、って……そうだ、ソルさん聞いてください。ようやく糸車を作れるようになったんですよ!」
さすがはルーミン、ここでも打ち合わせ通りに話をしてくれている。これなら私がいない間のことをうまい具合に教えてくれるだろう。
「そうなんだ! 村の人にはもう配ったの? 喜んだでしょう」
「はい! 皆さん喜んで下さいました……で、ソルさん」
ルーミンが近づいてきて耳元で囁く。
「樹先輩さんが言っていた通りになりましたね。ユーリルさん役立たずです」
元々は、ユーリルとルーミンでこちらで起こったことを私に教えてもらうようにしていたんだけど、たぶん無理だなと思って、夜寝る前に海渡にパルフィが来ることを伝えていて正解だった。
「あーあ、あんなに必死になって、逆効果になりませんか?」
ルーミンの視線の先には、パルフィの横について自分を何とかして売り込もうとしているユーリルの姿がある。
「ま、まあ、大丈夫じゃないかな」
パルフィもユーリルに頑張ってもらわないと家に連れ返されちゃうから、多少のことは目をつぶると思うけど……
あれ? 意外といい感じかもパルフィもユーリルの話を感心したように聞いているよ。ん?
「ルーミン姉!」
テムス。アラルクのところにいたんじゃ……
「なに? テムスくん」
「アラルク兄が話が……もが……」
慌てた様子のアラルクがテムスの口を塞いだ……
「えっと……?」
「い、いや、何でもないよ。気にしないでルーミンちゃん」
アラルクが答えて、テムスを連れて行ってしまった。
「何なんでしょうね、ソルさん」
「はは、なんだろうね」
うーん、これはあれだな。アラルクがルーミンのことが気になってテムスに何かを聞いたんだな。それをテムスが直接聞こうとしたんじゃ……
でも、ルーミンにはジャバトがいるし……いや、まだルーミンの気持ちはわからないのか。ということはアラルクにもチャンスが……
「へ? 服を?」
「うん、全部ね」
家に着いた私たちは母さんたちに到着の報告をしたあと、いつものように女部屋にパルフィを連れてきた。
「みんなの前でか?」
「パルフィさん、私もひん剥かれて全部見られたので安心してください」
ルーミン……
「ひ、ひん? あたい、来る場所間違えたかな……」
そう言いながらもパルフィは着ている服を脱ぎ始める。
少し褐色がかった肌に筋肉質な肉体。それに、
「胸が大きい。何を食べたらそうなる?」
「知らねえよ」
コペルの言う通り、豊満で形のいい胸がそこにはあった。
服の上からしか見てなかったけど、これなら奴も大満足だろう。
「さてと、それでは、えへへ……」
ルーミンの手がパルフィの胸に向かう。なんか手つきが……
「……ほぅ、これはなかなか」
「おめえ、なんだかいやらしいな」
「そうですか? 気のせいですよ」
全然説得力がないね。
「あ、ちょっ、お前!」
「すみません、手が滑って……はい、問題ないようですね」
わざとだな。最後にガッツリと掴みやがった。
「ルーミンってたまに男の子みたいになる。秘術の練習の時も目つきがいやらしい」
ルーミンとコペルは私がいない間も練習をしていたと言ってたけど、ルーミンは結構楽しんでやってたみたいだ。
「秘術? ってなんだ?」
「秘術は旦那を虜にするために必要。練習をおろそかにできない」
「旦那を! そいつはいい事を聞いたぜ。あたいも教えてもらえるんだろうな」
「うん、それにはまずパルフィが健康か調べる必要がある。早くここに座る。そして、足を広げる」
「おうよ」
パルフィはコペルに言われた通り、絨毯の上に座って、膝を立てた足をパカっと大胆に広げた。
これがパルフィの……
「そこの二人! 目が男の子!」
コペルが振り向いて私とルーミンを指さした。
だって、気になるじゃん……




