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第39話 女のことは私もよくわからんから

 父さんたちが帰って来たのは食事の終わりごろだった。


「みんな揃っているようだな。そのままでいい、話を聞いてくれ」


 セムトおじさんは、食事に加わらず先に話をするみたい。


「この町の長と話してきたのだが、状況があまりかんばしくない。みんな知っての通り避難民がたくさん集まって来ていて、食料の問題が出てきているらしい」


 食料か……やっぱり。


「近隣の村に支援を求めようにも、盗賊がいるためになかなか上手くいかない。このままでは町にいる避難民の中に、食べることができずに新たに盗賊になるものが出てくる可能性がある。そうなってしまったら我々だって商売が上がったりだ。そこで、この周辺に潜んでいる盗賊どもを一掃まではいかなくてもいくつか潰し、盗賊になっても未来はないと見せつける必要があると思うが、みんなはどうだ」


 そうだそうだと賛同の声が上がる。


「ちょうど今、このコルカにいくつかの隊商が集まっていてな、そこで有志を募って討伐隊を組むことになった。命にかかわることだから強制はしないが、この町の長から参加してくれたものには、落ち着いた後しばらくの間この町で行商する場所の便宜を図ってくれるという確約をもらっている」


 おおー、いい場所で商いができるというのは、行商人としてはのどから手が出るほど欲しいんじゃないかな。


「期間は30日ほどの予定だが、この周りにいる盗賊を討伐してしまったらそこで終わりだ。希望する者は明日の朝までに返事を頼む。話は以上。食事を続けてくれ」


 私は急いで、取り置きしていた三人分の料理をおじさんたちに持って行く。


「お疲れさまでした。ご飯食べてないんでしょ?」


「ああ、ぺこぺこだよ。ソルは気が利くし、いいお嫁さんになりそうだ。なあ、タリュフ」


「ええ、あとは相手がいてくれたらいいのですが」


 二人ともリュザールの方をちらちらと見ちゃって……


「ち、ちゃんと考えているから。それで、おじさんも討伐に参加するの?」


「ああ、私がいかないと誰もついてこないだろう」


 隊商を率いるというのも大変なんだ。


「それで、リュザールは?」


「無理強いはできないが、できたら付いて来てほしいな。あいつがいてくれると安心して後ろを任せられるのだよ」


 おじさんがそう言うってことは、やっぱりリュザールの腕前はすごいんだね。

 えっと、リュザールは……もうすぐ食事も終わりそう。でも、ちょっと物足りないのかな。空になった器を眺めている。お代わりがあればいいんだけど……


 視線を感じ振り向くと、父さんたちがニヤニヤと……


「と、ところで父さん、私たちはどうするの?」


「ああ、ここで診療所を開くよ」


 私たちは予定通りということだね。


「それと、避難民の一部を村で引き受けることになった。何人か工房で雇ってもらいたいのだがかまわないかい?」


「もちろん。人手は多いほどいいよ」


「ただ、村の者はいきなり人が増えるのを嫌うからね。もしソルのほうでも雇いたいものがいたら、私にも一声かけてくれないか」


 確かに村の人も急に新しい人が増えたら困るだろう。


「今は一人……いや、二人かな。一人は鍛冶職人の女の子で……」


「ん? その鍛冶職人というのはパルフィかい?」


 おじさんも知っているんだ。


「うん、ユーリルのお嫁さんにどうかと思って」


「ほぉ、ユーリルの……義兄さん、パルフィとはどんな子なのですか?」


「女の子なのだが鍛冶の腕がよくて、我々もよく仕事を頼んでいるよ。ただ、嫁にするとなるとあの性格はどうなんだ? ユーリルに相手が務まるのか?」


 あはは、ユーリルは頼りなさそうに見えるもんね。


「大丈夫。パルフィは自分が認めた相手には尽くすと思います。ユーリルならパルフィも納得するはずです」


「ま、まあ、女のことは私もよくわからんから、あとは本人たちに任せよう。それであと一人というのは?」


「僕です」


 振り向くとアラルクが立っていた。


「あー、お兄さんが結婚するんだね。さっきクトゥが話していたよ」


「はい、僕が出ていくのを待って結婚することになっています」


 うわ、そんなに切羽詰まっていたんだ。

 ん? でもどうして……

 あ、そうか、このあたりでは兄弟が一緒に住んでいるところにはとつがないんだ。確かに結婚したはいいけど、どちらの子かわからないってなったら大変だもんね。


「アラルクはともかく、パルフィは親父さんの許しはもらえるのか?」


「それはこれから説得するって言ってました」


「あの親父さんを……ふむ、私も討伐が落ち着いたら、直接行って話してみよう」


 おじさんが手伝ってくれたら百人力だよ。


「さあ、父さんたちも早く食べて、遅くなっちゃうよ」


「わかった……しかし、本当に量が減っているんだな」


 父さんたちは、少なくなってしまった一人分のお皿の中身を覗いている。


「ああ、これはなかなか大変なことを引き受けたのかもしれないな……」


 おじさんは、大きなため息をついた。

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