表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/226

第38話 ソルはボクの!

「えっ! アラルクを!? ええと、隊商宿はいいの?」


「僕って次男なんだ」


 なるほど、お兄さんがいるのか。それならクトゥさんの跡はお兄さんが継ぐから、仕事先を探さないといけないんだ。


「わかった。アラルクなら大歓迎だよ」


「よかった。働き場所を探していたんだ」


 宿でもよく気が付いていたし、何よりこのガタイは魅力的だ。何度もいうけどこの世界には機械が無いから、どうしても力仕事を避けることができない。ユーリルからも体が大きな人が欲しいって言われていたから、まさに渡りに船。それに、慎重だというのがいい。私たちっていけいけどんどんなところがあるから、ブレーキ役になってくれたらありがたい。


「あ、でも、カインには女の子がいないよ。アラルクにお嫁さんはいるのかな?」


「え、女の子いないの? 僕に相手はいないし……ソルは?」


 すぐさまリュザールが私の前に立ち、手を広げる。


「ソルはボクの!」


 だから、まだそういうわけじゃないのに……


「ねえ、ソル、ボクの隊商でも人を集めてもいいのかな?」


 リュザールが振り向きながら尋ねてきた。


「え、うん、条件に合う人なら」


「わかった、ボクがソルの工房で働いてくれて、アラルクのお嫁さんになってくれる人を探してあげるよ」


「ほんと、じゃあこんな感じの人で――」


 リュザールと二人でアラルクの希望を聞いたんだけど……


「はぁ!? そんな子、現実にはいないよ」


「だって、宿に来た隊商のお兄さんが――」


「あはは、それは見栄を――」


 夕暮れの町を歩きながら、アラルクが話す女の子の幻想にダメ出ししているうちに隊商宿についていた。






「ふ、二人とも辛辣すぎる」


 ありもしないものを求めて結婚しても、上手くいかないからね。


「まだ、条件が厳しいけど……まあ、気を長くして待ってて」


 しかし……リュザールって女の子の気持ちをよくわかっているな。捨て子だったっていっていたし、育ててくれたのがおじいさんって言っていたから、女の子が近くにいたわけでもないはずなんだけど……


「ソル、早く料理をしないと」


 そうだった。みんながお腹をすかせて待っている。

 アラルクと別れ、リュザールと一緒に井戸のそばにある厨房へと向かった。


「羊肉に野菜か……」


 厨房にはいつものように夕食用の食材が置かれていた。

 炒めて、スープを作って……

 いつものメニューか。代り映えしないけど調味料も塩だけだから仕方がないよね。

 早速……ん? なんだか、いつもよりも量が……


「ねえ、ソル。ユーリルって子、ソルの親友だって言っていたよね」


 横を見ると、リュザールが手に持った玉ねぎをじっと見ながら呟いている。


「う、うん」


「その子って昔からカインにいるの?」


「ううん、元々はここからずっと北の遊牧民の出身で、干ばつで住めなくなった町からやってきたんだって。カインに来て30日ぐらいかな。そうだ、隊商宿で働いていたって言っていたから、知っているんじゃないの?」


「北か……ボクの村の隊商はここから北へは行かないんだ。ユーリルって名前に覚えもないし、たぶん会ったことないと思う」


 リュザールが玉ねぎを持ったまま、こちらを向く。


「……ねえ、ソル。ユーリルとは、たった30日くらいで親友になったの?」


 リュザールの目は、不安そうに揺れていた。

 私とユーリルとの関係が気になるんだ。


「ごめんね。まだハッキリとは言えないけど、ユーリルとは間違いなく親友と呼べる間柄になっているんだ」


 そしてそれは、それ以上になることもないし、それ以下になることもない。と、私は思っている。


「……何か事情がありそうだね。ボクに聞かせてもらうわけにはいかないかな?」


 リュザールには、地球にもう一人のリュザールがいると思う。もし繋げることができたら行商人の情報が使えるということになるし、リュザールの武術だって地球で教わることができるかもしれない。それに、何より心強い。


「わかった。ちゃんと話すよ。でも今はご飯を作らないといけないから、あとでいいかな?」


「うん、待ってるね」


 そう言ってリュザールは、手に持った玉ねぎを手早く切り始めた。







「父さんたちはまだみたい」


 時折匂いにつられてやってくる隊員さんの相手をしながらも、何とか日暮れまでに食事の用意を終わらせることができた。仕上がった料理を持って部屋に行っても、父さんたちの姿は見当たらない。


「どうする?」


 料理を並べているリュザールに尋ねる。


「隊商では食べれる時に食べるのが鉄則なんだ」


 なるほど、郷に入っては郷に従えだね。出かけている三人分の料理をとりわけ、隊商のみんなで食事を始める。


「あれ、なんかおかずが足りないような……」

「盛りも少ないぞ」


 方々(ほうぼう)から声が上がる。

 やっぱり気付いちゃったか。


「今日はこれだけしかないんだ。みんな我慢して」


 いつもより量が少ないと思ったから、リュザールに食材担当の隊員さんに尋ねてもらった。そうしたら、バザールが立ってないから直接買いに行って、予算内で買えたのがこれだけだったって……野菜はちょっと少ないくらいだったんだけど、肉が半分くらいしかなくて、みんなが楽しみしている羊肉に塩を振って焼いたものが作れなかったんだ。

 さっきアラルクに聞いてみたら、町全体がそんな感じみたい。なんだか嫌な予感がするよ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=onツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ