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第27話 いや、待てよ。ちょうどいいのか

〇(地球の暦では5月29日)テラ



 ちゅん、ちゅん……

 朝だ……

 いつものように布団の上で一伸びして起き上がる。ふと見ると、すぐそばでコペルとルーミンが寝ていた。そういえば、昨日は二人と手を繋いで寝たんだった。


「う、うーん……」


 ルーミンが動き出した。起きるかな……


「あ、あれ? あれ? ……ここは?」


 キョロキョロと……ふふ、戸惑ってる。


「あっ!」


 ルーミンと目が合う。来るかな……


「わっ!」


 やっぱり飛びついてきた。


「おはようございます。ソルさん!」


「おはよう、ルーミン。よく眠れた?」


「はい!」


「えっと……海渡?」


「です! 樹先輩!」


 よかった。ちゃんとこちらでも繋がっているみたい。


「うーん、何?」


 おっと、コペルも起きちゃった。そういえばコペルとも手を繋いで寝たけど……


「おはよう、コペル」


「おはよう。二人とも朝から元気」


「はい! コペルさん! おはようございます!」


「!」


 ルーミンは私から離れ、コペルに抱きついた。


「元気すぎ。何かあった?」


「ここにいるのが嬉しいみたいだよ」


 私はルーミンの頭を撫でているコペルにそう答える。


「秘術の練習がお気に入り?」


「あはは、そうかも」


 そうじゃないけど……いや、そうなのかな。まあ、何でもいいや。


「ところでコペルは何か夢を見なかった?」


「夢……見た。テムスが可愛い服を着てくれた」


 いつもと変わりないか……地球にコペルと同じ人格の人はいないのかな。なら、普段通りに……


「ほら、二人とも朝の準備に行くよ。急いで!」







「改めて見ても惚れ惚れするね」


 母さんの言う通り、ルーミンは昨日と同じ手際でどんどんと料理を仕上げている。

 もしかしたら、ルーミンと海渡は私がいなくても繋がりかかっていたのかも。今日は海渡の記憶を得ているからわかるんだけど、包丁さばき自体は昨日とそんなに変わらないんだよね。


「あのー、ミサフィさん、もしお米があったら手に入れてもらえませんか?」


「米を? この村で作っているところはないから義兄さんに頼まないといけないけど……まさか料理に使うのかい?」


「はい、新しい料理を思いついたので試したいんです」


 おぉー、ルーミンはプロフをお披露目するつもりだ。


「へぇー、新しい料理にね……。わかった、あんなパサついたものが何とかなるとは思えないが、ルーミンの頼みだ、義兄さんに仕入れてきてもらうよ。量はどれくらいいるんだい?」


「できたらこれくらい――」


 あとからルーミンに聞いたら、12~13人分のプロフを作るためのお米を頼んだと言っていた。これくらいの量なら隊商の人の迷惑にもならないし、セムトおじさんやサチェおばさんも食べることができるだろう。さっと必要な人数分を簡単に計算できるって、さすが総菜屋の息子だよね。


「さあ、ルーミンのおかげでおいしそうにできた。急いで並べて朝ごはんにしようじゃないか」








 工房の建設を午前中で終えた私とユーリルは、セムトおじさんの家へとやってきた。ルーミンも来たがっていたんだけど、さすがに昨日の今日だからコペルと一緒に裁縫をしてもらうことにしたんだ。今はコペルに糸車の使い方を教えてもらって、嬉々として回しているんじゃないかな。糸車を作るときに地球で一緒に調べたけど、現物は初めてで朝から興味津々で見ていたからね。


「二人ともよく来たね。早速だが、ユーリル、こちらには慣れたかい?」


「はい、みんな優しくて、家族みたいに可愛がってくれて……セムトさん、俺をここまで連れてきてくれてありがとうございました」


 ユーリルの目には涙が……家族を病気で亡くしてからずっと他人のところで暮らしていたから、気が休まることが無かったのかもしれない。


「ユーリル……」


 ユーリルの背中をそっと撫でてあげる。


「ふむ、ソルはユーリルと一緒になる気はないのかな?」


「え? ……はは、ユーリルとは一緒にならないです」


「そんなに親しげなのにかい?」


 慌ててユーリルから離れる。


「ごめんなさい。ユーリルとは真の……うん、親友にはなれそうだけど、恋の相手にはならないかな」


「ユーリルの方は?」


「俺もソルの近くにいたいけど、結婚相手じゃなくて同じ仲間としての方がいい」


「……そうか、残念だが二人がそういうのなら仕方がないな。ソルにちょうどいいかと思って連れて来たんだが……それではソル、ジャバトはどうだい?」


「あ、セムトさん、ジャバトにはソルとは別に好きな子がいます」


 ユーリルから驚きの情報が……思わず顔を見る。ウソを言ってる時の表情じゃないな。


「そうなのか、相手を聞いてもいいかな?」


「ルーミンです」


「ほんと!」


 思わず声が出ちゃったけど、これはしょうがないよ。


「うん、初めて会った時から気になっていて、ここに来る旅の間に思いが募っていったんだって」


 昨日竹下はそんなこと何も言ってなかったじゃん。……あ、そうか、ずっと本人(海渡)が近くにいたから言えなかったんだ。


「うーむ、ジャバトもダメとなるとまたいちから……ん? いや、待てよ。ちょうどいいのか」


 何? 何がちょうどいいの?


「それで、二人は今日はなんの用でここに来たんだね」


 おっと、結婚相手を探してもらうためにここに来たんじゃなかった。本題があったんだ。私たちはセムトおじさんに聞きたいことを伝えた。

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