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第23話 これから教えるのは門外不出、一子相伝の秘術

「あれ、ユーリルたちは?」


 居間には母さんだけがいて、のんびりとお茶を飲んでいた。


「まだだね。その子が今度来た子かい?」


「うん、ルーミンって言うんだ」


「ルーミンです。よろしくお願いします!」


「いい挨拶だ。私はミサフィ、無理にとは言わないが、これからは私を母親だと思ってくれても構わないよ。ルーミンもコペルとソルと同じで私の可愛い娘たちだ」


「はい! ミサフィ母さん」


 うんうん、これでもうルーミンはうちの子だよ。


「ところで母さん、ユティ姉は?」


 診療所を閉めているみたいだから、こっちにいると思ったんだけど……


「夕食の準備をしているよ」


 そっか、家族が増えたから早めに……おっと、手伝わなきゃ。


「コペルいくよ。ルーミン、今日は……」


「わ、私もやります」


「長旅で疲れているんだろう。無理しなくてもいいんだよ」


「いえ、働かせてください!」


「そうかい。ソル、頼むよ」


 私はうんと頷き、ルーミンを連れて隣の台所に向かう。





「ほぉー、これは驚いたね」


 ユーリルが来たと言って台所にやってきた母さんは、見事な手さばきで野菜を切っていくルーミンを見てそう呟いた。


「でしょ」


 ルーミンがユティ姉に挨拶をして、私がやりますと言って包丁を手にした途端、ものすごい勢いでそこに積んであった野菜が食材になっていく様は圧巻で、みんなポカンと口を開けて見とれてしまっていた。


「えへへ、なぜだかこれだけはうまくなっちゃって、あまり料理はしないんですけどね」


 この手さばきといい、最初会った時の匂いといい。やっぱり……


「お義母さん。二人増えると聞いて食事の用意が大変だと思っていましたけど、ルーミンちゃんがいてくれたら何とかなりそうですよ」


「ほんとだねえ。いい子が来てくれたものだよ」


「はい! 料理のことならお任せください」


「うん、頼りにしてる。あ、そろそろお義父さんたちが帰ってくるころじゃない。急ごう!」


 私たちはそれぞれの持ち場に付き、料理の仕上げにかかった。






「ソル、見てきておくれ」


 料理はあらかた完成して後は運ぶだけなんだけど、父さんたちがまだ帰ってこない。

 居間を覗くと、ジャバトがユーリルとテムスと一緒にカァルと遊んでいた。笑っているところを見ると、こちらも問題なかったみたいだ。


「ねえ、ユーリル、父さんが……」


「ふぅー、雨が降り出してきたよ」


 お、ちょうど帰ってきた。

 雨が降り出したと言ったけど父さんとジュト兄はそんなに濡れていないから、今降り出したばかりなのかも。


「お帰りなさい。座って待ってて、すぐに準備するね」


「ソル、ちょっと待てくれ。それでどうだった?」


 父さんの目は台所に向けられている。たぶん、ルーミンのことを気にしているんだと思う。だって、あの体だもんね。


「大丈夫だったよ」


「そうか、よかった。あとのことはソルたちにお願いしていいかな?」


 父さんも思春期の女の子は難しいよね。それにルーミンは……


「うん、任せて!」


 私が助けてあげないと。







 食事を終えた私たちは、台所で沸かしたお湯の入った桶を抱えて部屋へと移動した。


「ほら、カァル、足を出して」


 居間から私たちの部屋までは中庭を通る必要があって、そこには屋根が付いてないから雨が降ると地面が濡れてしまう。私たちは靴を履いているからいいんだけど、カァルは素足なので拭いてあげないと部屋の中に入れるわけにはいかなくなってしまうのだ。


「にゃ」


 足と一緒に雨に濡れた体も拭いてあげ、さっぱりとした表情のカァルはふわぁとあくびをして、お気に入りの敷物の上で丸くなった。


「お湯が冷めないうちに、私たちも拭こうか」


 桶の中のお湯を使ってそれぞれの体を拭いていく。


「私、お母さん以外に体を拭かれたの初めてです」


 普通そうだよ。私だってコペルが来るまでは一人で拭いてたもん。でも、人にしてもらうと背中とかの手の届かないところを拭いてもらえるから、スッキリして気持ちがいいんだ。


「準備万端。ルーミン、よく聞く。これから教えるのは門外不出、一子相伝の秘術」


 門外不出はまだしも一子相伝は言いすぎだよ。というか、これもコペルがしてくれるのかな。


「ひ、秘術ですか!?」


「そう、これを会得えとくしたら。旦那さんは思いのまま」


「ごく……いいなりってことですね」


「早速、実践。……ソル、ここに」


「わ、私!?」


 え、いや、だってルーミンは……


「ソル! 早く! 時間は貴重!」


 とほほ、どうなっても知らないよ。

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