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第194話 今の段階でどの程度までやれるんだ?

〇(地球の暦では3月5日)テラ 水の日



 コンコン!

 まだ真新しいドアを叩いて、中に入る。


「パルフィ、来たよ」


「おう、居間にいるから、そのまま入ってきてくれ」


「よいしょっと」


 玄関で靴を脱ぎ、母さんと二人で奥へと進む。


「ここは足が楽でいいね。うちにもやってもらえないかね」


「床を剥がないといけないから、すぐには無理だよ」


「そのまま板を敷くだけじゃダメなのかい?」


「うん、凸凹でこぼこしているから、板が波打っちゃうんだ」


 家の中では靴を脱ぎたいという家主の意向で、板張りになったユーリルたちの新居。新築ならともかく、うちも同じようにするには漆喰で固めた床を壊して基礎部分のレンガを水平に敷き直さないといけないみたい。


「残念だねえ、いっそこと建て直しちまおうかね」


「いい考えだと思うけど、もう少し後の方がいいかも」


 その頃には、ユーリルが地震に強い建物を作れるようになっているはずだからね。

 さてと……


「入るよ」


 居間の入り口に掛けられた暖簾をくぐると、パルフィはお茶の準備をしていた。


「ミサフィさんまで、わざわざすまねえな」


「うちで裸にするわけにはいかないからね、気にしなさんな」


 うちには診察室が一つしかないから、女性の患者さんを診る時にはその人の家に行くことが多いんだ。


「早速始めようかね。一人で大丈夫かい?」


「平気だぜ。よっと……」


 服を脱ぎ始めたパルフィの様子をじっと見つめる。

 なんで手を貸さないかというと、普段の仕草を見ながらおかしなところがないかを調べていくからなんだって。


「よし、動くのは問題なさそうだね」


「おう」


 安定期に入ったパルフィは、織物部屋から鍛冶工房に戻っている。もちろん、金づちを振り回すようなことはせずに、職人さんたちへの指示やアドバイスを中心にやっているみたい。


「ソル」


 母さんと一緒に、紐を使ってパルフィのお腹周りを測る。

 えーと、印の位置は……前回よりも少し後ろだ。


「うん。順調よく育っているようだね」


 そろそろ妊娠五ヶ月に入るパルフィ。お腹も目立つようになってきた。


「そろそろ服がきつくなってきたんじゃないのかい?」


「ああ、だから今コペルに頼んでんだ」


 地球で調べたマタニティ用のデザインをコペルに教えて、今作ってもらっているところ。あと二、三日でできると思う。ちなみにそれは工房のものということにして、次に妊娠した子がいたらサイズを調整して使う予定なんだ。


「そうかい。コペルなら大丈夫だと思うが、念のために言っとくよ。お腹を締め付け過ぎないようなものにしときな。それと、これからつわりは気にならなくなってはずだけど、足がむくんだり腰が痛くなってきたりするから、その時は旦那に揉んでもらったりするんだよ」


 なるほど、メモメモ。むくみ原因はなんだろう。どうしてそうなるのか地球で調べてみよう。


「よし! 変な張りもないようだし、服を着ても構わないよ」


「おう!」


 張り……


「母さん、変じゃない張りもあるの?」


 パルフィが準備してくれたお茶を淹れながら尋ねてみる。


「ソルも妊娠してみたらわかると思うけど、この時期はたまにお腹が張った感じの時があるんだよ。普通はしばらくしたら治まるから気にしなくていいんだが、長く続いたり強めのやつが来るときは要注意だね。パルフィ、もしそうなったらすぐに私を呼ぶんだよ。夜中でも構わないから」


「お、おう」


 緊急を要するんだ。これも調べておこう。


「お茶ありがとうな、ソル。それにしても、おめえもなかなか様になってきたじゃねえか」


「そうかなあ、まだまだだよ」


 薬師になると決めてから時々父さんや母さんについて仕事ぶりを見させてもらっているんだけど、言われたことしかできてない状態。足手まといにならないように必死って感じなんだ。


「なあに、少しずつ覚えていけばいいさ」


「ところでミサフィさんは、ソルが覚えたことを他の村のやつらに教えようとしているのは大丈夫なのか?」


「女の薬師を増やそうとしてんだろう。構わないさ。子供を亡くして悲しむ母親は、一人でも減らした方がいいからね」


 女の薬師の件、実は暁に薬学部を目指すことになったと伝えた時に頼まれたことなんだ。どういうことかというと、カインにはミサフィ母さんがいるんだからソルが薬師になるんならタルブクに来てくれって言われて、そんなの無理って断ったら代わりにうちの女の子に薬師のことを教えてほしいと……それで父さんにそれとなく聞いてみたら、カインに人が増えてきて他の村まで手が回らなくなりそうだからむしろそうしてくれだって。だから、これからこちらで覚えていくことと地球で学んだ知識は、他の村の人と共有していくことになると思う。


「さて、そろそろ失礼しようかね。パルフィ、何か聞きたいことはないかい?」


「それじゃ一ついいか。あ、あんな。夜のことなんだけど……」


 夜……


「今の段階でどの程度までやれるんだ?」


「そうだねえ。パルフィはたぶん双子だから、赤ちゃんの部屋が窮屈なはずだ。だから奥まで……ると刺激が強くて赤ちゃんによくない。それに、そのまま……のはこれまでの経験から避けた方がいいみたいだね」


「でもよ、それだとユーリルがどっちつかずだろう。あたいはあいつにも満足してもらいてえよ」


 そうそう、相手が気持ちよさそうにしているとこちらも嬉しいんだよね。


「それなら、……を使っていかせてあげな。物足りないかもしれないけど、しばらくはそれで辛抱してもらうしかないね」


 赤ちゃんが無事に生まれてくるためだから、ユーリルには我慢してもらおう。

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