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第18話 やってたの?

「ああ、痛てて……おぉー、いい匂い。すげえ、美味しそうじゃん。ほら、聞こえる? お腹がきゅーきゅー鳴っているぜ」


 確かにお腹の音が聞こえるけど、竹下ってば、頭をさすっているよ……


「まさか、やってたの?」


 続けて入ってきた海渡に尋ねる。


「いえ、やってはいませんでしたが、僕の声に驚いて飛び上がった拍子に上の棚で頭をぶつけていました」


 海渡の声に驚くところが怪しい……


「竹下くん、きみは何か変なサイトを見ていたんじゃないのかね?」


「み、見ていません……」


 これは……あとで履歴を調べなきゃ。


「まあいいや。ほら、早く座って。残しても仕方がないからみんなで全部食べるよ」


 テーブルの上には、家にある一番大きなお皿に山のようにプロフが盛り付けられている。傍から見たら、『これパーティーサイズ?』と聞かれそうな量だけど、僕たちだけで食べちゃうよね。食べ盛りだし。


「はい、手を合わせて。いただきまーす」

「「いただきまーす」」







「これ、ヤバ、ウマ。いくらでも入る」


「ん、うんっ、ほんっと美味しいね、語彙力がなくなるよ」


 あれだけあったプロフも、すでに半分以上が僕たちのお腹の中に吸い込まれてしまっている。


「はい、思った以上の出来でした。ただ、実際は羊肉らしいですから少し違うかもしれないです。あむ」


 海渡は、取り皿の中から羊肉代わりの牛肉を箸でつかんで口に中に放り込んだ。


「テラの羊はかなりうまいからな。いい方にバケそうだ」


 羊の味が違うのは、きっと食べている草が違うからじゃないかな。それに、すぐ目の前で飼育しているから新鮮で臭みもないんだ。


「味付けはどう? あっちに合わせて塩加減を抑えてみたんだけど」


「いいと思うぜ。テラで塩は貴重だもんな」


 あちらで塩といったら岩塩。それもカインでは採れないので、セムトおじさんの隊商の人たちに頼んで持ってきてもらっている。日本のようにふんだんにあるわけでもすぐに手に入るわけではないので、やっぱり薄味になっちゃうよね。


「それで、お米なんだけど、ユーリルが働いていた町では作っていた?」


「いや、俺んところは北の方だし乾燥していたから、食べる分の麦がやっとだったぜ」


 なるほど、たまにセムトおじさんが持ってくるお米は南の方からだったのかも。


「カインでお米を作れるかな?」


「うーん、俺はまだ夏の暑さを経験してないから何とも言えないけど、標高が高いからギリギリ行けるかどうかじゃないか」


 カイン村の標高は大体1200メートルくらい。盆地だから冬は寒いけど夏の暑さなら僕たちが住んでいる九州にも負けてない。


「試しにやってみて、ダメだったら、ユティ姉のところの村長さんに頼んで作ってもらおう。これを食べてもらったらきっと協力してくれるはずだよ」


 ユティ姉の出身地のバーシはカインの隣村だけど、標高は700メートルくらい。温かいし近くに川も流れているし、きっとお米も作れるはずだ。


「そうなると、やっぱり運ぶ手段を考えないといけないよなぁ。麦やら米やらを馬に括り付けて運ぶのは大変そうだぜ」


「ねえ、お二人ともその話はあとにして、先に食べてしまいませんか?」


 そうだった、せっかくの料理が冷めてしまう。僕たちは残りのプロフを一気にかきこんだ。






「ふぅー、食った食った。もう入らない」


 昼食を終えた僕たちは、テラのことを話し合うために僕の部屋へと集まっている。


「僕はまだいけそうな気がします」


「……最近海渡、よく食べるね」


 今日も三人の中で一番食べてた。


「なんだかこのところ、お腹が減って仕方がないんですよ」


「育ち盛り?」


「なのでしょうか……」


「って、これまでも結構食ってたぞ。海渡、お前気を付けないとぽっちゃり体型になるんじゃないのか?」


 海渡は少し垂れ目だから、ぽっちゃりでも可愛いんじゃないかな。


「あわわ、それは大変です。僕がたくさん食べそうになったら止めてください」


「りょ!」


 成長期で必要な分を補給しているのならいいんだけど、度を越しているようなときは声を掛けてあげよう。


「それで、さっきプロフを食べたときの続きなんだけど、よくよく考えてみると実際問題としてカインで米を作るのは現実的じゃないと思うんだ」


「どうして? 嵩張かさばる物は隊商にお願いしにくいから自分たちで作らないといけないでしょ」


「まあ、そうなんだけど、カインでは綿花も作っているし主食用の麦も必要だ。それに羊や馬の牧草地も減らすわけにはいかないから、米まで作る余裕はないんじゃねえのか」


「でも、他のところで作ったお米を運んでって、セムトおじさんたちにお願いするのは申し訳ないよ」


 セムトおじさんのような行商人は、何人かで集まって隊商を組み、村々を廻っている。その時に使っているのは馬やラクダで、その背中に荷物や商品を括り付けて自分たちは歩いて移動しているのだ。つまり運べる量に限りがあるから、嵩張って値段も安い穀物なんかはなかなかお願いしにくい。だからといって高い値段で運んでもらったら、プロフが高級料理になってしまう。せめて月に一、二回は食べられるくらいにはしときたい。


「だから俺は、運ぶ方法を変える必要があると思っているんだ」


「運ぶ方法?」


「ああ、テラに荷馬車を導入したらどうだろうか?」

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