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第160話 香辛料ってやっぱインドなのか?

「「「いただきまーす」」」


 お昼過ぎ、無事に完成したカレーをみんなで頂く。


「おかわりはあるから、遠慮しないでね」


 ご飯は一升炊いたから大丈夫だと思うけど、もし足りなかったらパンにつけて食べてもらおう。


「う、うま」


 暁と竹下は甘めのカレーに、お好みでカレー粉を足して食べている。


「コクがあってうめえな」


 穂乃花さんと風花と凪ちゃんはそのままの味でよさそう。


「今日も上出来でした!」


 僕と海渡もこの味で十分。


「いやー、これは本格的に香辛料を探さねえといけねえな。テラでもカレーを食いたいわ」


「それは竹下に同意だけど、香辛料ってやっぱインドなのか?」


「はい、暁さん。リュザールさんたちにお願いしないといけないのです」


「香辛料もか。南に向かう隊商にゴムを頼んだばかりなんだけど……ボクも食べたいし……凪ちゃん、また絵を書いてくれる?」


「はい、お任せください!」


 ふふ、これで香辛料もそのうち届くはず。


「よう海渡、カレーの材料はみんなインドで揃うのか?」


「いえ、一部は中南米が原産のようなので、これと同じ味にはできないかもしれません」


「そうか……まあ、味が多少違ってもあっちのみんなも喜んで食うだろう。暑い日にカレー食って汗かいて風呂に入る。かぁー、今から楽しみだぜ」


 パルフィたち鍛冶工房組は、常に火を使っていて暑いうえに体力勝負。カレーがあると疲労回復も早いかもしれない。


「あっ、思い出した!」


 突然、暁が立ち上がった。


「風呂だよ、風呂。カインから戻ってきた職人が風呂のことを村人に話しちゃってさ。何とかしてくれって、泣きつかれて大変なんだ」


 予想した通りだ。お風呂の味を知っちゃったら、女の人はもう元には戻れない。


「それで穂乃花さん、うちの鍛冶職人を早く帰してもらうことってできないかな」


 タルブクから来た職人さんのうち一人の女の子が鍛冶に興味を持ったので、途中から鍛冶工房に移って修行している。糸車と違って鍛冶は覚えることがたくさんあるから、他の職人さんがタルブクに帰ってもその子だけは残っているんだけど……


「無理だな。今のあいつは何か起こった時に対処するすべを持ってねえ。あたいの弟子から死人を出すわけにはいかねえんだ」


「うう、俺も村で事故があったら困る……」


 経験がないと、万一の時に逃げるのが先か被害を食い止めるのが先かわからない。知識ではわかっていても体が動かないことがあるし、それを穂乃花さんは心配しているんだと思う。


「まあ、あいつも覚えようと必死で頑張っている。早ければ雪が降り出す前に戻せるかもしれねえぞ」


「ほんと!」


「ああ、だから、鍛冶工房を作って待ってな」


「わかった、早速取り掛かることにするよ。でもほんとよかった、時期がわかればなんとか抑えられる」


 何か動きがあると人は待つことができるからね。


「ん、うま。よし!」


 竹下がカレーのおかわりに立った。


「あ、僕も」


 凪ちゃんまで。


「負けていられませんね」


 海渡もか……


「なあ、樹。これもしかして、急がないと無くなっちゃうパターン?」


「かもね」


「ヤベっ」


 暁が残りのカレーを掻きこみ始めた。

 ふふ、僕も急ごう。







「みんな、おかわりは?」


「俺はいい」

「僕ももう十分ですぅ」


 女の子たちはさすがに無理みたいだし、暁もお腹を擦っている。

 鍋いっぱいあったカレーがほとんどなくなったよ。ちょっとだけ残っているけど、これは夜ごはんにしないで明日の朝パンにつけて食べることにしよう。


「それじゃ、話の続きをしようか。何かある人!」


 海渡から手が上がった。


「暁さん。大豆とか小豆とかはどうなりましたか?」


 中国方面が原産のものについては暁に頼んでいる。


「シュルトとケルシーの隊商に探してもらっているけど、まだ返事はないぜ。そういやさっき絵って言ってたよな。どういうことだ」


 暁の携帯に凪ちゃんが書いたインドゴムノキの絵を送信する。


「へぇー、よく特徴をとらえているな。なるほど、これをテラで書いて隊商に渡すってことか。俺もやってみようかな」


「暁は絵を描けるの?」


「美術は3」


 3?


「3ってお前、課題を出したらもらえる点数じゃないのか?」


「そうとも言う」


 それなら僕と竹下と一緒だ。画力も似たり寄ったりかも。テラの中国から全く違う物が届いても困るし……


「凪ちゃん、大豆と小豆の絵も描いてくれる?」


「はい、カインに戻ったら描いてみます」


 確実に手に入れるには、言葉だけじゃなくて絵があった方が間違いないだろう。


「他に何かある人」


「はい」


 穂乃花さんから手が上がった。


「以前ソルには言ったんだが、そろそろ硬貨を作り始めようと思っているんだ」


 あ、そうだった。硬貨の図柄について話し合わないといけなかったんだ。


「ソルに? ボクとしては一日でも早く普及してもらいたいから構わないけど、どうかしたの?」


 みんなにパルフィから言われたことを伝える。


「ふーん。ボクたちはお金を使うようになると便利になるから、村々を回ってそれを説明していこうとしていたんだけど、お姉ちゃんはそれだけじゃ難しいって考えているんだね」


「ああ、いくら便利になると言っても理解してもらうのは難しいんじゃねえのか。前例がねえからな」


「そこは、糸車を買うにはこれからは硬貨じゃ無いとダメとか言って、使い方を教えたらどうかな」


「まあ、その時は無理してでも使うだろう。でも、その後はどうするんだ。また麦に戻っちまうんじゃねえのか?」


「そ、それは……」


 地球の歴史を調べても、物々交換から貨幣制度に移る時にどんな硬貨を使ったとかは出てくるんだけど、どうやって広めたかはわからなかった。だから、とにかくお願いして使ってもらおうとしていたのだ。便利になったら、たぶん自然に変わっていくんじゃないかって……


「俺、鍛冶のことも硬貨のことも詳しくわかんないんだけど、穂乃花さん、硬貨にデザインってどんな感じのができるの?」


「ソルにはある程度はできると言ったが、元になる絵がちゃんとしてたらかなりのものを仕上げてみせるぜ」


 みんなで凪ちゃんを見る。


「が、頑張ります」


「ということは、こういう感じにできるってこと?」


 暁が財布から500円硬貨を取り出した。


ふちの刻印は厳しいが、表裏は近い感じにいけるはずだ」


 おぉ-、そうなんだ。パルフィと穂乃花さんが繋がってからの技術の進歩がすごい。


「ならさ、俺にいい考えがある」


 次の瞬間、暁の口から発せられた言葉に僕は耳を疑った。

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