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第154話 な、何をやらかしたんですか。竹下先輩!

「がはは、お前すげえやつだったんだな。さすがパルフィが認めただけのことはある」


 周りのざわつきが収まらない中、ファームさんはユーリルの肩をバンバン叩いている。


「痛い、痛いって」


 ユーリルは痛がっているけど、まんざらでもない様子。


「おお、すまねえ。あまりに嬉しくてな」


 ユーリルとファームさんとの戦い。早めに決着が付いたから倒されたファームさんが納得いかないと言うかと思ったけど、実にあっさりと負けを認めてくれた。


「でも、大変だったね」


「ああ、まさか他のやつの相手をさせられるとは思わなかったぜ」


 ファームさんがいきなり倒れてしまい、何が起こったかわからない周りの人たちから『ファーム、手を抜くな!』とか『やらせだ!』とか声が上がった。そして、それを聞いたファームさんが『ならお前たちが俺の婿と戦ってみろ!』となり……


「皆さん不思議そうな顔をしてますよ」


 ジャバトが指さす先、ファームさんに負けず劣らず屈強な男たちが一様に首をひねっている。みんな腕に覚えのあったはずなのに、ユーリルに触る事さえできずに瞬殺だったからね。


「ユーリル、お前は本当にできた婿だ。五人を相手に息も切れてねえのには恐れ入った。これなら安心してパルフィを任せられるぜ」


 ファームさん、あっという間にユーリルのことが好きになったみたい。


「それで、いつ孫の顔を見せてくれるんだ」


「え、ええと……」


 はは、気が早い。ユーリルも困っているようだし、ここは私が……


「ファームさん、まずは私の父さんが結納品を持って挨拶に参ります」


「ソルちゃんの……そうか、ユーリルにはおやじさんがいねえんだったな。問題ねえ。それに、結納品なんてものは無くても構わねえがしきたりだ。キッチリとすませてパルフィに恨まれねえようにしねえとな」


「はい。そして、父さんと結婚式の日取りを決めて下さい」


「日取りか……ソルちゃん、一番早いのはいつ頃だ?」


 私たちがカインに帰った後に父さんがこっちに来てだから……


「秋ぐらい?」


 ギリギリだけど、無理したら何とかならないかな。冬になったら動けなくなるから。


「秋か……ということは、へへ、次の次の夏には俺にも孫が」


 ファームさんほんと気が早いけど、すぐにおじいちゃんになれるような気がするよ。





〇6/2(日)地球



 朝の散歩の時間、昨日のことを海渡たちに報告する。


「おぉー、これでようやくユーリルさんはパルフィさんと一緒になることができますね。おめでとうございます竹下先輩」

「にゃー!」


「おう! カァルもサンキューな」


 竹下、嬉しそう。一年間の修行の成果だもんね。


「それで、式は……来年の春ですか?」


「いや、今年の秋らしいぜ」


「はぁ!?」


 海渡がこっちを見てきた。


「はは……ゴメン。ファームさんの勢いに負けて、早ければ秋ごろって言っちゃった」


 海渡がなんてこったいって顔してる。


「で、間に合いそう?」


 一応パルフィには、決着がついたらすぐに結婚になるかもと言っていたけど……


「仕方がありません。コペルと一緒に尻を叩いて急がせます」

「にゃ!」


 やっぱりあまり進んでなかったんだ。

 何が進んでないかと言うと、テラで女の子が結婚するときに持っていく物。いわゆる嫁入り道具。日本ではタンスとか布団とかがそうなんだけど、あっちでは色々な大きさの布、それも色鮮やかな物をもっていく。その布は新居で敷物だったり布団に使ったりするんだけど、あちらにはタンスがたくさんあるわけじゃないので荷物の目隠しにしたり、天井から吊るしたら部屋の間仕切りとかにもなる便利グッズなんだ。


「テラの女の子は大変だね。できることがあったら言ってね」


「僕もお手伝いします」


「二人ともありがとう。大丈夫だよ。これは女の子の楽しみでもあるんだ」


 新しい生活を思ってひと針ひと針仕上げ、あっちの女の子は心を高めていく。結婚前にそういう作業をするから、テラの人たちってずっと仲がいいのかも。


「これで今回の旅の目的も果たせましたね。ちょっと早いですが、集まってパーッと騒ぎますか?」


 そうしたいのはやまやまなんだけど……


「集まってはもらうけど、中学にね」


 ほら、来た。


「中学!? まさか……」


「はい、今日はみんなで武研だそうです!」


 凪ちゃん、久しぶりにみんなが武研に集まると思って嬉しそうにしているけど……


「武研……な、何をやらかしたんですか。竹下先輩!」


「すまん、海渡。ファームさんとの戦いでリュザールを怒らせた」


「リュザールさんを……とほほ、今日は足腰が立たなくなるかもですぅ」


「え? 足腰……あ、あのー、どうしてこんなことに?」


 凪ちゃん震えている。そういえば、凪ちゃんが繋がってからこういうのは初めてかも。


「ユーリルがファームさんとの戦いの時に絶好のチャンスを逃したからね」


 風花が竹下をじろりと睨む。


「だから、どうしたらケガさせないで済むかを考えてたんだって。許してくれよ」


「それは、経験が足りてない証拠。考えなくても体が動くようになっとかないと、いざという時に間に合わないよ」


「で、でも、ユーリルさんはその後五人の人をあっという間に倒しましたよ」


「そうだね。でもね、凪ちゃん、最初に死んでたら後はないんだ」


 風花が心配するのはそこ。命にかかわることに関しては妥協してはいけない。


「えーと、凪ちゃんが武研に入ってから半年、ジャバトと繋がってから一か月ちょっとか……ちょうどいい、これまでは体づくりを優先していたけど、今日からは本格的にしごいていくよ」


 凪ちゃんがえっ!? という表情をしてる。


「本当ですか! 僕、皆さんと同じくらい強くなりたいです!」


 はは、嬉しい反応だったんだ。


「にゃー?」


「カァルもおいで、一緒にみんなを鍛えよう!」


 カァルの動きに合わせるのか。今日はハードなものになりそうだよ。

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