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第145話 子育てってどうしたらいいんだ?

「アルバンさん、シュルトに避難民は来てますか?」


 挨拶をすませた後、シュルトまでアルバンと馬を並べて情報交換をすることにした。


「アルバンでいいよ。年はたいして変わらないだろう」


 聞いてみたら、二つ上の17歳だって。


「避難民は北の町に引き受けてもらったけど、まだ結構残っていてさ。どうしたらいいのか……ああもう、頭が痛い」


 やっぱり困っているみたいだ。


「その年で町長の仕事って大変だね」


 カインで村長をしている父さんだって大変そうなのに、シュルトにはたくさんの人がいてそれに避難民まで……


「町の長老たちと相談して、何とかやっているよ」


「ということは、砂糖の話もその人たちと?」


「できたら頼む。俺だけだと、誰もついてきてくれそうにないんだ」


 町長になったばかりだからかな。


「それは構わないけど、ボクたちそんなにシュルトにいられないよ」


「わかった、町に戻ったらすぐに知らせを出す。砂糖が手に入るんだ。たぶん明日には集まってくれると思う」


 それなら、ユーリルとパルフィの親父さんとの決着にも間に合う。


「それで、ソルたちはカインから来たって言ってたけど、カインってあのカインか?」


 あのカインって……


「もしかして、噂になっているの?」


「ああ、いろんなものを作るすごい女の子がいるって……もしかして、もしかする?」


 アルバンがこっちをじっと見てくる。

 うぅ……


「ねえ、アルバン、シュルトに糸車は届いている?」


「あ、ああ、春にやっと一台だけ。無理してコルカに隊商を出した甲斐があったってもんよ」


 助かった。リュザールに感謝だ。


「まだ一台なんだ……それはどうしたの?」


「とりあえず俺のお袋が管理している。誰か一人だけのものになったら不満が溜まるからな。共同して使うようにしているんだ」


 うん、その方がいいと思う。


「ところでお前たち、今日の宿は決まっているのか?」


「隊商宿に泊まろうと思っているよ」


「んじゃ、今日は俺の家に泊まれよな」


「え? いいの?」


「もちろん、大事なお客様だし、何より、いろんなことを聞かせてくれ」







 アルバンたちと一緒にしばらく進むと、道の近くにユルトが見えるようになった。


「ここはシュルトの中?」


「もうちょい先から」


 まだ、町の外なんだ。


「ということは、避難民が町の外まであふれかえっているってことか」


「そういうわけじゃないけど、町の者とちょっとごたごたしててさ。ケンカになる前に話し合って一部の人たちをこっちに移ってもらったんだ」


 こういう時はお互いさまなんだけど、一度に知らない人たちがたくさん押し寄せてきたんだから嫌に思う人がいても仕方がないと思う。


「それでアルバン、この人たちに仕事は?」


「無い。今まともに隊商が出せるのが北の町くらいしかなくて、品物がだぶついているんだ」


 職人さんの仕事も減っているのかも。


「食料は足りているの?」


「北の町から融通してもらって何とか……」


 やっぱり……

 リュザールの方を見る。

 うんと頷いてくれた。アルバンには先に話しておいた方がよさそうだ。


 アルバンの家に到着した私たちは、荷物を男女別の部屋に運び込んだ後で居間へと集まった。ちなみに、タルブク隊の人たちは隊商宿に泊まると言ってここには来ていない。他の行商人や旅人と情報交換をしたいみたい。


「ま、好きなところに座ってくれ」


 アルバンの家の居間もカインと同じように厚手の絨毯が敷いてあるだけ。しきたりも一緒のようなので、それぞれが適当な場所に腰を下ろした。


「えっと、その子は?」


 正面のアルバンのひざの上におチビちゃんが座っていて、こっちを向いて手を伸ばしている。


「俺の子。可愛いだろう」


 手を伸ばすと指先をキュッと握ってくれた。

 ヤバ、めっちゃ可愛い。


「そういや、去年来た時にそろそろって言ってたっけ。いつ生まれたんだ」


「ああ、夏にな」


 夏ということは10ヶ月目くらいかな。


「どっちだ?」


「女の子。コリンって言うんだ」


 コリンちゃんか。


「俺のところもそろそろなんだ。よかったら嫁にくれない?」


 エキムったら、まだ男かどうかもわからないのに……


「嫁か……やっぱり嫁に出さないとダメかな? こんなに可愛いんだぜ」


 アルバンは、ニコッと笑ったコリンちゃんに頬ずりしている。

 手元に置いておきたいのはわかるけど……


「アルバンさん、結婚させないとコリンちゃんから一生恨まれますよ」


「え? 一生……ジャバト、それ本当なの?」


「はい、女の子はいい伴侶に巡り合って、幸せな家庭を築くという夢を持っています。それが叶えられなくなってしまうのですから、恨まれて当然です。僕が言うんですから間違いないです」


「ぐっ……し、仕方がない。嫌われたら困るから嫁に出すことにする。でも、なぜジャバトが言うと間違いないんだ?」


 ははは。


「私もそうした方がいいと思うよ。お嫁に行くって憧れるからね。そしてエキムはエキムで生まれてくる子が男の子だったら、コリンちゃんのいい旦那さんになるように育てないといけないよ」


「も、もちろん! ……って、子育てってどうしたらいいんだ?」


 みんな黙ってしまった。私たちにいくら地球の知識があると言っても、子育ては未経験。指南書みたいなのはありそうだけど、その通りやっていいものなのだろうか……


「ま、まあ、それは今度ということで、アルバン、ちょっと話を聞いてくれるかな」


 砂糖もだけど、アルバンには色々と頼まないといけないことがあるんだ。

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