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第113話 もっと強くなれそう

「お腹いっぱい。よその家だというのに、あまりの美味しさにがっついてしまった。恥ずかしい」


 客間についた暁は、赤い顔をしてお腹をさすっている。

 詳しい打ち合わせをしたいからと言って、夏さんの家までついてきたのだ。


「おばあちゃんも喜んでいたよ。こんなにたくさん食べてもらえるのは久々だって」


 いつもは夏さん一人だって言ってたから、うるさくなかったのか心配してたけどよかったのかな。


「そういえば、遠野教授って風花の家のことを知っていたみたいじゃん。暁も知っていたのか?」


「俺? ……知らないよ。俺が知っている立花さんは秋一さんだけかな」


「あ、それはおじさんの名前」


「うそ! 建設会社の人?」


 風花がうんと頷く。


「マジか。俺の家を建てた人だ」


 へぇ、そうだったんだ。世間って狭いね。


「すげえな」


「はい、さすが樹先輩です」


 ん? 何のこと?

 竹下と海渡の方を見る。


「別にぃー」

「気にされなくていいですよ」


 何だろう……


「でさ、テラの俺ってどんなやつなの? さっきは名前しか聞けなかったからさ。もちろんイケメンだろ」


「イケメン……まあ、そこそこかな。それでね――」


 エキムのことを教えてあげる。


「ま、マジ、もうすぐ子供ができるの!? ……ということは、やってるってこと?」


 暁は、左手の親指と人差し指で丸を作ってその中に右手の人差し指を入れた。


「そうじゃねえのか。テラでも、コウノトリが赤ちゃんを運んでくるわけじゃねえからな」


「クソォ、俺まだなのに……」


 まだなんだ。


「ねえ、俺の奥さんって可愛い? 会ったことある?」


「可愛いよ。チャムはね、テラの僕の幼馴染なんだ。一つ年上で頼りになるお姉さん」


「へえ、チャムさんって言うんだ。それに、お姉さんかぁ」


 暁の顔がデレデレと……


「どうやら、暁さんも年上の方がお好きなようですね」


 海渡が耳打ちしてきた。うんと頷く。

 それで、竹下と気が合うんだ。


「そうだ。テラの君たちのことも教えてよ」


「わかった。僕の名前がソルで――」


 改めてテラの名前で自己紹介を行う。


「竹下以外は性別が違ってんだ……樹たちに女の子のことを聞くのはマナー違反?」


 うんと頷く。


「わかった。気を付ける」


 竹下も暁も紳士で助かるよ。


「それで、どうやったらテラと繋がるの? 今日、今から繋げることってできる?」


「今日は無理かな」


 すでにテラのエキムがカインから離れてしまっている。


「どうして? もったいぶらずに頼むよ」


 地球とテラとで繋がる条件を話す。


「そっか……テラかこっちで樹と手を繋いで寝て、逆の世界で近くにいる必要があるんだ」


「あと、テラじゃ基本的に難しいだろうな」


「なんで?」


「テラのお前が結婚しているからさ。ソルと一緒に寝たのがバレたら、たとえ何もしてないとしても義父のセムトさんが殺しに来るぞ」


「こ、殺しって、地球よりも厳しいじゃん」


 基本的に浮気がばれたら村を追放なんだけど、セムトおじさんはチャムのことを大切にしていたから殺しに来るというのもあながち間違いじゃないような気がする。


「ちなみに君らはどうやって繋がったの?」


「俺は樹」


「ボクも樹」


「僕はソルさんです」


「竹下と海渡はわかるけど、風花も樹と? 一晩一緒?」


 うっ……


「暁さん、風花さんはこの日のためにお母さま方を巻き込んで策略を張りめぐらせてきたのです。何があったのかは、想像するに硬くはないでしょう」


 は、恥ずかしい。

 風花の顔が真っ赤だ。風花はお母さんたちの計画に乗ってって言ってたけど、もしかして……


「くかぁー! こんな身近に経験者がいるとは……あ、そうだ、テラは文明が発達してないって言ってたよな。性に関しては寛容だったりするのか?」


「うーん、場所によるな。今住んでいるカインは厳しいけど、俺(ユーリル)が前にいた町では結婚前に試してみるっていうのが普通だったぜ」


「ちゅうことは、テラの竹下……ユーリルは経験済み?」


「……まだ」


「なんで? 不能なの?」


「ちゃうわ! 成長が遅かったんだよ。だから、女の子から男として見られてなくて……」


「樹、そういう世界なの?」


「うん、子供を作れるかどうかが重要な要素の一つになってて、精通してないと相手にされないこともあるね」


 竹下のそばに行き、暁が肩をポンポンと叩く。


「へんな慰め方すんなよ。去年ちゃんと出るようになってんだから、来年には結婚するつもりなんだって」


 暁がこっちを見る。


「ほんとなの? こいつに相手がいるの?」


「いるけど、まだ結婚できるかどうか決まってないよ」


 パルフィのおやじさんとのことを話す。


「マジ! 戦って倒せって、すげー楽しそうなことやってんな! それで、テラのソルと俺が会えるのはいつ頃になりそうなんだ」


「もうすぐ山に雪が降り始めるから、春までは無理かな」


 風花が答える。


「春か……春休みなら大丈夫?」


「樹」


 風花がこっちを見たので、首を横に振る。春の中日(春分の日)の頃には村の雪は溶けているんだけど、東の山の上の方は真っ白だ。


「そっか……ゴールデンウィークあたりとかに何とかならない? そこを外すと俺が旅行に行けるのは夏休みになるんだ」


「その頃ならたぶん大丈夫。エキムがカインに来るように手配しとくよ」


「なあ、エキムを呼ぶんじゃなくて、ソルがあっちの方に行くのはどうだ。せっかくならシュルトの方を見といたほうがいいと思うんだけど」


 シュルト……治安が悪くなってるんだよな。行けそうなら行って状況を確認した方がいいかも。


「あと、何か質問は?」


「うーん、一度整理してからでいいか。情報がありすぎて頭パンパンだわ」


 突然違う世界と繋がると言われても混乱するよね。


「それでは、僕から質問です。暁さん、遠野先生たちの秘密って何ですか?」


 そうそう、それは気になる。何かの組織に入っているみたいだし。


「……誰にも言うなよ」


 コクコクとみんな頷く。


「俺と父さんは忍者の末裔なんだ」


 に、忍者!!


「ぶ、分身の術をしてください!」


 分身の術! 見たい!


「いや、それは無理」


「えー、残念ですぅ」


 漫画のようにいかないの?


「じゃあ、何ができるんだ?」


「えーと、竹下ちょっと立って」


 こうか?と言って竹下が立ち、その正面に暁も立った。


「握手しよう」


「握手?」


 竹下が右手を前に出して……


「へ? ……い、痛てぇ!」


 いつの間にか暁が竹下の後ろに回り、竹下の左腕を極めていた。


「風花、見えた?」


「うん」


 見る練習をかなりやったと思ったんだけど、まだまだみたい。


「暁さん、それが忍術ですか?」


「忍術というより、武術の一種かな。漫画やアニメで出てくるような技はほとんど無いんだって、あいつら全然(しの)んでねえだろう」


 そういえばそうだ。


「で、暁さんの手に持っているものは?」


 腕を極めてない方の暁の手には見慣れたものが……


「あ、俺の財布! というか、早く離してくれ、痛いんだって」


 暁は竹下を解放し、財布も返した。


「俺たち忍者の役割は、あるじの安全を確保することと情報収集。だから、派手な事なんてなんもない地味な仕事さ」


「財布をちょろまかしたのも情報収集のうち?」


「ちょろまかしたと言われると困るけど、昔は書状とかを手に入れる必要があったからそのための技なんだ。今はスマホを手に入れることが多いかな」


 なるほど。今はスマホが書状の代わりってわけね。


「でもですよ。スマホのロック画面ってどうやって外すんですか? 死んだ人のスマホを遺族の人が開けようとしても、携帯会社の人でも開け方をわからないって記事を読んだことがあります」


「あ、それは鈴木さんたちが得意で、あの一族の人に預けたらなんとかしてくれる」


「一族ということは鈴木さんも?」


「うん、あちらは情報解析が専門の忍者だね」


 すごい、現代社会にもそんな人たちがいたんだ。


「ふぅ、問題ない。それで、組織って言うのはなんだんだ?」


 竹下は極められた左腕をぐるぐると回しながら聞いている。


「それは本当に言えないんだ。ごめん」


 暁があるじにためにって言っていたから、国か何かなのかな。


「さっき鈴木さんが頼みごとをするかもって言っていたけど、風花や僕たちに暗殺の依頼をするってことは?」


 さすがにそれは手伝うことができない。


「ないない。さすがに現代社会でそれは無理だよ。たぶんだけど、国賓が来た時や天皇陛下がどこかに行かれたときはどうしても人が集まるじゃん。もちろんSPの人たちが身辺警護をするんだけど、目が行き届かないこともあるからさ。その時に、観衆に紛れて怪しい動きをする人がいないか探ってくれとかだと思う。俺にもたまに依頼があるし」


 なるほど、そういうことなら協力できそう。


「さて、俺はそろそろ失礼するけど、樹たちは明日どうするんだ? もう帰るのか?」


「ううん、明日は風花に案内してもらって東京見学するつもり。帰るのは明後日」


「東京見学……なあ、明日俺も来ちゃダメかな」


 おおー、東京在住の暁がいてくれたら心強い。


「もちろん、来てくれたら助かるよ」


 みんなもうんと頷く。


「みんな、明日もよろしくな」


 待ち合わせ場所を確認した暁は軽やかな足取りで帰っていった。


「驚きの連続でした」


「ああ、すごい秘密を知ってしまったな」


 ほんと、忍者がいて、いまだに活動してるとか信じられない。


「ん? どうしたの?」


 風花がやけに機嫌がいい。


「もっと強くなれそう」


 はは、風花はそうだよね。


「お客さん帰ったんだろう。お前たち早くお風呂をすませな」


 外から夏さんの声が聞こえる。


「私はおばあちゃんのところに行くね。みんなは先にお風呂に入って休んで」


 立ち上がろうとする風花に声を掛ける。


「風花、あっちの明日もよろしく」

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