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第111話 何? テラ? みんななの?

「エキムだ……」


 竹下の呟き声が僕たちの耳に届いた。


「「「!」」」


 ま、マジ!

 ど、どうしたら……そうだ、匂いを嗅いで……


「みんな、どうしたの? 遠慮しないで、ほら」


 な、中に入ってから考えよう。


「えーと、道場はこっちなんだけど、おやじから30分ほど遅れるからよろしくって言われてんだ。二階に上がってくれる」


 なるほど、一階のほとんどが道場になっていて、二階から上に住んでいるんだ。


「お袋が出かけてて、凝ったものは出せないけど」


 居間に通された僕たちの前にペットボトルのお茶が注がれる。


「えーと、改めまして、俺は遠野とおの(あかつき)


 暁君って言うんだ。おっと、僕たちも……


「僕は――」


 僕、風花、海渡、そして、


「――で、俺が竹下剛な。よろしく」


 竹下の順で自己紹介をする。


「なるほど……みんな幼馴染で、立花さんと立花君は苗字が一緒だけど親戚でも何でもなくて、さらに、立花さんはつい最近までこの近くに住んでた!」


「う、うん」


「おやじから面白いやつらが来るって聞いてたけど、ほんとだったよ……で、今までに何人殺したの?」


 こ、殺し……


「何のことかな?」


「俺もね、小さい頃からおやじに仕込まれていてだいたいのことはわかるんだ。立花君と中山君は一人か二人、そして立花さんは……」


 遠野君が言い淀んでしまった。


「なあ、俺は?」


「んー、竹下君はまだっぽいな」


 そんなところまでわかるんだ。


「ねえ、みんな話しちゃお」


 元々遠野教授に話すつもりだったし、竹下がエキムと言うのなら、エキムなんだと思う。僕も初めて会った時から気になっているしね。それならちゃんと話をして、繋げていいか確認した方がいいはずだ。


「――というわけで、俺たちは地球とは別の世界、テラでも生きているんだ」


 竹下が代表して説明する。


「え? 何? テラ? みんななの?」


 四人で首を縦にふる。


「それで、テラは危険な世界で盗賊たちが幅を利かせているのはわかったけど、俺も繋がるかもってどういうこと?」


「本当に繋がるかどうか確認するために、遠野君の匂いを嗅がせてくれる?」


「暁でいいよ。俺も下の名前で呼ばせてもらうね。匂いか……それくらい構わないけど、そんなんでわかるんだ」


 ということで、早速、暁の匂いをみんなで嗅いでみる。


「うん、悪くない」


「だろ。ドア入った途端、この匂いがしてびっくりしてさ」


 暁の残り香を吸ったのかな。


「合格ってこと? 何が違うの?」


「俺たちの匂いを嗅いでみたらわかるぜ」


 暁は竹下に近づき、驚いた顔をした。


「え、うそ……」


 それから、僕、海渡、風花の順に匂いを嗅いで、


「ヤバ、こんな安心感のある匂いって初めてだわ」


 安心感……確かにそうかも。


「だろ」


「どういうわけ?」


「どうしてかはわからないんだ」


「超自然的な何かがあるのかな。それで、俺はどうやったらテラと繋がるの? というか、テラの俺ってどんな奴? さすがに知ってないと怖いわ」


 それもそうだ。


「確実ってわけじゃねえから、間違っていたらごめんな。名前はエキム。年齢は一緒だな。俺たちの隣村に住んでて……」


「おーい、暁。帰ったぞ」


 下から声が……


「あ、おやじだ。後から詳しく聞かせてくれ。道場に行こう」


 一階の道場は中学の武道場よりも少し狭く、端っこに中年の男性が一人で立っていた。


「鈴木さん、いらっしゃい」


「やあ、暁君、遅くなってすまなかったね。その子たちが今日の主役かい?」


 僕たちは鈴木さんに自己紹介をする。


「ふむふむ、立花樹君に、風花君、竹下剛君に中山海渡君ね。僕は鈴木。そうだ、鈴木はよくある名前だから下も教えよう。鈴木(じゅん)。遠野君と同じ大学の教養学部で教鞭をとっている。一応肩書きは教授。今日はよろしく」


 みんなでよろしくお願いしますと頭を下げる。


「鈴木さん、父さんは?」


「道着に着替えに行ったよ」


「あ、私も」


「風花、こっち」


 暁は風花を女子更衣室に連れて行く。


「へぇ、あの暁君が女の子を呼び捨てに……余程、気に入ったのかな」


「あ、あのー、鈴木教授。僕たちの旅費まで出していただいてありがとうございます」


「いいって、いいって。夢にまで見た九幻流を間近で見られるんだよ。これくらいの出費は痛くも痒くもないさ。それに、君たちの話にも興味があるからね。後からいいから、ちゃんと聞かせてもらえるかな」


 はいと答える。

 僕たちの事情を話すことが、遠野教授の技を教えてもらうための条件だからね。






「さあ、いよいよ始まるよ」


 着替え終わった遠野教授と風花が道場の中央で対峙している。


「今日は風花の技を鈴木さんに見てもらうのが目的だから、勝ち負けは関係なし。おやじ、そこんとこよろしく」


「それは分かっているが、暁、いつの間に風花君を呼び捨てに……」


「まあまあ……それでは、始め!」


「ちょ、おま! ああ、もう、風花君行くぞ!」


 暁の合図で試合ならぬ、風花の技披露が始まった。


「おや、遠野先生の動きが……」


「風花が技を出しやすいようにしているみたいだな」


 前は防戦一方だったのに、今回は風花に余裕があるように見える。微妙な手加減を簡単にできるということは、やっぱり遠野教授と風花との間にはかなりのレベル差があるみたい。


「ふん、ふん! おお、そこでこの手さばきは!」


 鈴木教授、前のめりになっているよ。

 あ、手だけがちょいちょいと……


「ねえねえ、風花くんの技は最初からあんな感じだったのかい?」


 目を離したくないのかな。


「はい、そうです」


 最初に見たのはリュザールの時だったけど、ずっと訓練しているから今では風花の時も変わりなく動けるようになっている。


「うーん、型は間違いないんだが……」


 型は……


「おっ!」


 風花がうまいこと遠野教授の懐に潜り込んだ。


「ほぉー!」


 道場の中央には、仰向けになった遠野教授に片膝をついて手刀をあてている風花がいた。


「おい、暁!」


 遠野教授が声をあげる。


「え……あ、は、はい、そこまで!」

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