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第107話 だから、早く繋げてくれ!

〇10月16日(月)地球



 朝の散歩を今日から10分遅れで集まることにした僕たちは、早速話を始める。


「竹下はエキムの匂いを嗅いだの?」


「いや、まだだぜ」


「それにしては、あっという間に親しくなっていましたね」


 そうそう、初めて会ったはずなのに、短時間であれだけ仲良くなるものなのかって驚いてしまった。


「何か知らんけど、気が合ってな。それに、風花の言うのもわかる。たぶんこっちにエキムがいるわ。お前たちと同じ感じがするし」


 それは僕も思った。


「明日工房に来たときに、匂いを嗅いどきたいね」


「だな」


「それで、こちらにエキムさんがおられた場合ですが、仲間に引き入れますか?」


 エキムが住んでいるのはタルブク。あちらの情報ってなかなか手に入らないから、仲間になってくれたら助かるし、


「糸車にしても機織り機にしてもだけど、カインからシュルトまで売りに行くのは大変じゃないかな。エキムに仲間になってもらって、タルブクあたりで作ってもらったほうがよくない?」


「樹に賛成。それに、今のようにシュルトが危ないのがわかってても、カインからじゃ何もできないよ。タルブクに誰かいてくれた方が助かる」


 あと、カインからコルカあたりだけが裕福になっていったら、シュルトの人たちが嫌な気分になってしまうかもしれない。


「じゃ、機会を見て明日話すか」


 みんなでうんと頷く。





〇(地球の暦では10月17日)テラ



 一通り工房の中を見学したエキムを外に連れ出し、ユーリルが私たちの事情を説明している。


「――というわけで、俺たちはこことは別の地球という世界でも生きているんだ」


「え? 何? みんななの?」


 四人で首を縦にふる。


「糸車とかこの荷馬車とかも、もしかして地球というところにあったりする?」


「まあな」


「マジかー。こんなすごいものをどうやって考えついたのかって思っていたら、そういうことか」


「ごめんね」


 二番煎じなんだ。


「みんな最初から?」


「いや、最初からはソルだけで俺たちは最近だな」


「最近? どうやって?」


「こちらでも地球でも、同じ日にソルの近くにいて、どちらか一方で一緒に手を繋いで寝る必要があるんだ」


「ソルと……そういえばチャムも言ってたな。ソルが新しい道具を作るたびにカインは暮らしやすくなっていったって……もしかしてソルって神様か何かなの?」


 か、神様!?


「ち、違う!」


「いや、あながち間違いじゃねえかも。ソルがいなかったら俺ら繋がってねえし」


「うん、ボクは初めての行商でソルに助けてもらった時からそう思っていた。そういえば後光が指していたかも」


「はい、ソルさんは女神さまです!」


 あぅー……勘弁してほしい。


「まあ、俺は今の暮らしが良くなるのなら何だっていいよ。それで、わざわざ俺にそのことを話すということは、俺も繋がる可能性があるということ?」


「たぶんな。それを調べるために匂いを嗅がせてくれないか?」


「それくらい構わないけど。匂いでわかるんだ……」


 ということで、早速エキムの匂いをみんなで嗅いでみる。


「うっ、なんか恥ずかしい」


 わかる。臭くないか心配になるんだよね。でも、


「うん、悪くない」


 ここにいる三人と同じ。


「合格ってこと? それで、俺はどうしたらいいの?」


「念のために確認するが、エキムは地球と繋がっても平気か?」


「かまわないよ。だって、こんな便利なものがあるんだから、きっとみんな幸せに暮らしているに違いないからね」


 幸せか……


「あのね、地球でも不幸なことや悲しいことは起こっているし、それをはかなんで自ら死を選ぶ人だっている。もしかしたら、地球のエキムもそういう境遇かもしれない」


「なんで? 地球も食べるのに苦労するような世界なの?」


「そういうところもあるが、こっちほどじゃねえな」


「わからない。食べることができるのに、なんで……」


 私にだってわからない。でも、その人の立場になって初めて気づくことがあるのかも。


「もし……もし、あっちの俺がしょうもないことで悩んでんのなら、ガツンと言ってやる。だから、早く繋げてくれ!」


 地球のエキムが悩んでいるのかどうかもわからないけど、


「ごめんね。まずはあちらのエキムを見つけないといけないんだ」


「そっか、同じ日にって言ってたね。しばらくお預けだな。それで、他に何か気を付けることとかある?」


 こちらと地球と繋がったときの注意点を伝える。


「真夜中に突然切り替わるということと、あちらの記憶を覚えている……もし、死んでしまったら、その時の状況もということだね」


 エキムは考えている様子。

 死んだ時の記憶がいつまでも残る上に、当然ながらあちらとの繋がりは切れてしまう。もしかしたら精神を病んでしまうかもしれない。これは、盗賊と戦いで相手の命を奪ってしまったときに気づいたこと。


「それでも、こちらのみんなの暮らしが良くなるのなら……」


 エキムは納得してくれたようだ。


「お願いします。早くあちらの俺を見つけ出してほしい。一日でも早く村人の生活をよくしたいんだ」


「エキム、気持ちはわかるが、見つけ出すことができない可能性があることを知っててくれねえか」


 地球には80億くらいの人がいる。その中から一人を見つけるのは至難の業だと思う。


「そうか……まあ、繋がらなくても今までと同じというだけだろう。その時は、いろいろと協力してくれよ」

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