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第104話 もしかして、武道オタクの人?

〇10月13日(金)地球



「ほんとに、いきなり切り替わった!」


 今日の風花は朝から興奮状態。

 昨日リュザールは、ちょうど切り替わりのタイミングのころに見張り当番だったらしく、こちらで海渡が経験したいきなり切り替わるのがあちらでも起こるのかの検証をすると言って張り切っていたのだ。


「やっぱり、時間は……わかんねえか」


 時計がないもんね。


「いやわかるよ。星を見てたから。ちょっと待って、今確認する」


 風花がスマホのアプリを起動した。

 今はほんと便利だよ。緯度と経度と時間を入れたらそこから見える星を教えてくれるんだから。


「で、何時だった?」


「あの星がここだから……えっとね。0時くらいかな」


 0時……


「僕たちは3時15分くらいだったよね」


 みんなが首を縦に振る。


「日本とキルギスは時差が3時間、ウズベキスタンは4時間」


 竹下もスマホで検索中。


「リュザールたちがいる場所はカインよりもキルギスよりだから……時差を考えると、やっぱ同じタイミングで切り替わってるようだな」


 時差か……


「ということはですよ。日本とイギリスとは9時間差じゃないですか。ヨーロッパに旅行に行った時は夜の9時ごろ切り替わるということですか?」


「だな。ちなみにアメリカだと昼の時間帯だぜ」


 そ、それは大変だ。


「でも、わかっていたら対処できるんじゃないの。ボクももうそろそろかなと思って、ユルトの外に腰かけてその時を待っていたんだ」


 それで、星を見ていたんだ。


「僕もその時間帯は包丁を持たないことにします」


 将来免許を取った時は、運転する時間を考える必要がありそう。


「つまりだ。これから繋げるやつが見つかった時は、前もって言っとかなきゃいけねえな。昼ごろ変わることもあるって」


 思わず海渡を見る。


「もしかして、あの子のことですか。もしそうだったときには、そうしないといけないでしょうね」


 ふふ、海渡ったら素っ気ない態度しているけど、気になっているのバレバレだよ。

 あとは、


「それで、風花。エキムはやっぱりそうなの?」


 今回のタルブク隊に、急遽工房の視察ということで村長むらおさの息子でチャムの旦那さんのエキムが同行することになったらしい。


「うん、昨日は交代の時間までは同じユルトで隣同士だったから寝返りした振りをして体を近づけてみたんだけど、やっぱり気になる匂いしてた」


 リュザールはエキムに初めて会った時から何か惹かれるものがあったらしくて、そこで匂いを嗅いでみたというわけだ。


「ということは、こっちにも俺たちと同じようにエキムがいるということだよな。同い年……もしかして山下とか?」


「ぶっ!」


 思わず吹き出してしまった。


「ないない。絶対ないよ」


 山下の匂いを嗅いだことは無いけど、その可能性は低いと思う。だってあいつは竹下と違って年上が一切ダメ。同級生でも、自分よりも一日でも早く生まれていたら無理という徹底っぷり。つまり、年上のチャムと結婚したエキムと同じ人格というのはありえない。まあ、竹下もそのことは知ってて言ってるんだと思う。


「とにかく、カインについたら樹たちも匂いを嗅いでみて」


「わかった」


 と言ったものの、あちらでは女の子だからどこまで近づけるかわからないんだよね。







「それで皆さん、今日はサボらないでくださいね」


 散歩の終わりに海渡が念を押してきた。


「ん? 武研だよな。サボるつもりは無いけど、なんでだ?」


 そうそう、海渡がわざわざ言うのには何か理由があるはず。


「由紀ちゃん先生から昨日の夜連絡がありまして、本日お客様が武研に来られるそうです」


 由紀ちゃんのお客様って……


「もしかして、武道オタクの人?」


「よくわかりませんが、風花先輩の技を見たいそうですよ」


 風花の技を?


「風花、大丈夫?」


「うん、相手が誰だって負けないよ」


 そういう意味で聞いたんじゃ……風花の技は由紀ちゃんも知らないくらいだからあまり人に知られない方がいいと思ったんだけど、この様子ならそこまで気にする必要はないのかな。まあ、変な人を由紀ちゃんが連れて来るはずもないし。








「みんな揃っているか」


 武道場のドアが開き、由紀ちゃんとスーツを着た少し白髪の混じった中年のおじさんが入ってきた。

 部員一同、先生たちの前に整列する。


 それにしてもこのおじさん、何か様子がおかしい。普通の感じをわざと出しているというか……

 あ、風花が警戒態勢に入った。


「今日は東京から私の師匠筋にあたる方に来ていただいた。詳しくは言えないがとある場所で武術指導をされておられる……」


「あー、戸部くん、俺は堅苦しい話は苦手なんだ。えー、俺の名前は遠野。しがない教師だが、今日は君たちが使っている技を見せてもらいに来た。立ち合いをお願いすることもあるかもしれないが、その時はお手柔らかに頼む」


 お手柔らかにって、この人たぶんかなりできるよ。なんでかと言われると……そう、目つきがセムトおじさんたちと同じだ。風花もそのあたりの事を感じ取っているのかもしれない。


「先生がしがないのなら、私はどうなるのですか。謙遜されておられるが、遠野先生は東大の教授だ。それに警視庁のSPの武術師範でもあられる」


 おおーとみんなから声が上がる。

 ははは、由紀ちゃん、さっきはとあるところって言ってたのに警視庁ってばらしてるよ。

 あーあ、遠野教授は頭を抱えちゃってるし。


「ま、まあ、そういうことだ。今日はよろしく頼む」


「「「押忍!」」」


 確かSPって要人警護をする人のことだよね。その人たちを指導するってことは、遠野教授は実戦的な武術ができるってことかな。

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