0 プロローグ
「無職ニート」
それに一番当てはまるのは俺だ。
22歳にもなってまともな職につかず、なんならアルバイトすらしていない。
社会不適合者とでも呼んでくれ。
親の優しさに縋り、ネトゲに逃げる毎日を送っている。
FPS、MMORPG、いろんなジャンルのゲームに触れてきた。
ゲームをしている時は何もかもわすれることができた。
ここが俺の生きる場所であり、逃げる場所でもあった。
生きててよかったと思うときはゲームでめちゃいいプレイをした時だけだ。
なぜこうなってしまったのか、そんなの簡単だ。俺が死ぬほど面倒くさがりだからだ。
家から出るのが面倒くさい。なんならこの部屋から出たくない。
アルバイトをしていた時期もあったが、さぼりすぎて「明日から来なくていいよ。」と言われてしまった。
でも俺は恵まれていた。
なぜかって?
俺は間違いなく器用だった。やりたいことがあったら人の何倍も速く習得することができた。
映像編集、ブログ、ゲーム配信、ネットの影響でいろんなものに手を出してみた。
どれも人並み以上にはできるようになった。
親も応援してくれた。こんな俺を応援してくれるなんて、なんて良い親なんだ。
ただすぐ飽きてしまうのが俺だ。人並み以上にできるようになると飽きてしまう。
いわゆる器用貧乏ってやつだ。
一つのことに熱中してもすぐできてしまい飽きてしまう。
特技がどんどん増えていくが、どれも中途半端すぎてあるだけ無駄だ。
そろそろ何かやらなきゃと思っていても体が動いてくれない。
(俺はどうしてこんな人間なんだ...)
そんなことを毎日思いながらネトゲと睨めっこする日々だ。
そんな平凡とは言い難い日を過ごしている時ふと、たこ焼きが食べたくなった。
近くのホームセンターにたこ焼きのキッチンカーがあることを思い出し、久しぶりに外に出ることを決心した。
久しぶりの外は日差しが強く、30秒は頭痛が止まらなかった。
目の奥がズキズキする感じ。たまには外に出なきゃなーと感じた。
徒歩10分ほどのホームセンターに到着。普段外に出ない俺は少し額に汗をかいていた。
案の定たこ焼きのキッチンカーを発見。
定番のソースもいいが、さっぱり系のネギ塩味にした。
お気に入りのエナジードリンクを自販機で買い、たこ焼きとエナジードリンクを食らいながらゲームをすることを想像し、少しテンションが上がった。
そんな時だった。
赤信号なのにも関わらず、蝶々に気を取られ追いかけている少女を発見。
そして前方にトラックを発見。よそ見をしているのか、減速する様子がない。
(これは.....まずくないか???)
俺は助けることを決心した。
その動力源は、なんか助けたらめちゃアニメのヒーローみたいでかっこよくね?という厨二心だった。
助けれる自信もあった。
なんせ俺は9年間野球をやっていたこともあり、高校時代は50m6.3秒という俊足の持ち主だった。
しかし、高校卒業後、まったく運動をしていなかった俺は想像以上に衰えており、50m9.5秒という鈍足になっていた。
だが、助けると決めた俺はエナドリとたこ焼きを投げ出し少女に向かって一直線。
頭の中ではトラックより先に走り抜ける予定だったが...
少女を抱えたところでトラックに吹き飛ばされた。
3mほど吹き飛ばされただろうか、宙を舞っている時は意識があった。
走馬灯ってやつを生まれて初めて見た。
中学生の頃、野球で逆転ホームランを打った時のこと。
高校時代、彼女に振られ数日飯が喉を通らなかった時のこと。
親の笑顔。
色んな事が一瞬で脳内を通過した。
そして俺は地面に頭を強く打ち死んでしまった。
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目の前が真っ暗だ。
目を開けるという感覚はない。ただ真っ暗ということだけわかる。
体がある感じがしない。
(?? どうなってるんだ?)
そんな時、一瞬声が聞こえた。
「「 君は力が欲しいか? 」」
(な、なんだ?)
俺は一瞬戸惑った。
この状況を理解したわけではない。
だが、俺は即答していた。
「「「 欲しい!! 」」」
その言葉を最後に、目の前が光に包まれるような感覚になった。
最後に微かに声が聞こえた
その声は歓迎しているとは少しかけ離れ、少し恐怖を覚えるような雰囲気だった。
「俺の世界へようこそ」