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悪役令嬢シリーズ

悪役令嬢、現実世界の女子に転移して破滅フラグを回避する

作者: ゅべ

「なっ、何ですの!? これは……」



 私はマリー・アンドインターネット、アンドインターネット公爵家の令嬢。王家の第一王子と幼き日に婚約を結んだパーフェクト淑女。


 私はある日、実家の中庭で優雅にアフタヌーンティーを嗜んでいた。それが気が付けば、どことも分からない狭い部屋にいたのだ。



 寧ろここは部屋なの?



 部屋はベッドらしきものが置かれており、後は乱雑にものが放置されている。とても貴族の私からすれば人が就寝できる場所ではないと思う。


 それに机らしきものの上によく分からない箱が置かれている。


 そしてその箱には何と私の肖像画が飾られている。こ、これは!!


 素晴らしい工芸技術ね!! 小汚い豚小屋だけど、これだけは職人のプライドを感じます。そしてどう言う訳か私の手には複雑な形状をした何かが握られている。



 AとかBとか、これは矢印?



 よく分からないものが私の肖像画と繋がっている。これは何?



『ホホホ!! 貴方のような庶民の小娘など殿下のお近くで同じ空気を吸うことすら不敬ですわ!!』



 え? 肖像画がしゃべった!?



『そ、そんな……。私はただ殿下に手作りのお菓子を……』

『お黙りなさい!! 殿下に食してもらうなどそれこそ不敬ですわ!!』

『そ、そんな……。私はただ……殿下と約束したのです』

『毒味もせずに手作りのお菓子を食べて貰う、それがどれほど危険かお分かりになってらっしゃらない?』

『っ!!』

『あらやだ、これだから庶民は。殿下は国の宝、そんなことすら想定出来ずに食して頂こうと貴方はおっしゃるの?』

『ぐずっ!! 私はただ美味しいお菓子を殿下に……』

『仕方ありませんわね、では私が毒見をしましょう』

『いやっ!! これは殿下に作ってきたんです!! そんな酷いことしないで下さい!!』



 何よ、これ。


 これは映画か何かかしら?


 私はこんな映画に出演した記憶が一切ありませんわ。それにこの相手、庶民の女の子?


 見覚えがありません。それにしてこの相手の子、分かっておりませんわね。殿下の御身を思えば毒味くらいあまり前ではないですか。


 それを気遣って公爵家の令嬢である私が毒味を買って出たと言うのに『酷いことしないで下さい』ですって?



 ふざけないで頂戴!!



 どうして私がイジメたような反応をするのですか!? これだって充分に不敬ですわ!!



 ああ、目眩がする。



 だがこの映画、まだ終わりではないようですね。


 え? で、殿下までご出演されていらっしゃるのですか!?



『そこで何をしているのですか?』

『で、殿下!! アンドインターネット様が私が作ったお菓子を奪おうとするんです!!』



 はあ!? この小娘は何を言ってるのですか!?


 貴方が貴族社会の常識を知らなさすぎだから、私が親切に教えてあげてるのでしょう!?



『これはこれは殿下、ごきげん麗しく』

『ふん、マリーか。またイジメか?』

『滅相もない。私はただ王侯貴族の常識とマナーを教えて差し上げたのですわ』

『余計なことをしおって……』

『はい? 何かおっしゃいましたか?』

『もううんざり何だよ!! お前のそう言う貴族主義なところも、王族だからって毒見のせいで冷え切った食べ物を食すのもな!!』

『で、殿下? 一体何を言ってらっしゃるのですか?』

『もういい、俺はこの娘と生きていく。お前とはこの場で婚約を破棄する、もはやお前は赤の他人。俺に関わるな』



 ええええ!? で、殿下!?


 私はただ本当に娘のこと想ってマナーを教えて差し上げただけですのよ!?


 それがそんな態度をされるなど、酷い……。酷すぎます!!



 私は正気を失って映画が映る箱をガタガタと両手で揺らしていた。そんな正気を失った私だったが、部屋のドアが突如開いてその方向を咄嗟に視線を向けた。




 一人のマダムがそこに立っていた。




 え? このマダム、エプロン姿ですけど、この家のメイドかしら?



「ミツキ!! アンタはまたそうやって徹夜で乙女ゲームなんてやって!! もう朝よ、早く学校に行く準備をしなさい!!」

「ええ!? ミツキって私のことですの!?」

「アンタ以外にミツキがいるかーーーーーーー!! 5秒以内に着替えて下に降りて来ないと朝飯抜きだよ!!」



 あまりの声のボリュームに私ははしたなくも耳を塞いでしまいました。そして、そのマダムによって強制的に着替えさせられてしまったのです。


 どうやらこのマダム、本当にメイドだったようですわ。


 マダムは私の着替えを終えるとバタン!! と音を立てて部屋を後にした。これは減給ですわね、お父様に言ってあのメイドにメンドの何たるかを叩き込まねば。



 この後、私自身が異世界に転移したことを知るのはマダムに言われた通りに一階のリビングに降りてからでした。どうやらミツキと呼ばれるマダムの娘と私は魂が入れ替わってしまったらしいのです。



 そして異世界での生活を通じて知りました。どうやら私は転移をしていなかったら生まれ育った世界でギロチン台にかけられて処刑されるとことだったと。学校のクラスメイトがそう教えて下さいました。



 本当の私ってこの世界でも嫌われ者らしいですわーーーーーーーー!!


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