表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/35

第七話 ヤキモチ 



「え? 結局、誰も手伝わなかったの?」

 次の日、生徒会室に来たメリッサは、皆の話を聞いて驚いていた。

 後はどうにかするから、帰ってイイと言われ帰路に着いたけれど、まさか本気で誰も手伝わないとは思わなかった。

「マーガレット嬢とやればイイと思って、気を利かせてみた」

 マークは微塵も思っていない事を白々しく口にする。

 浮気相手とされるマーガレットは、一般の部の生徒だ。いわゆる爵位があれば入れる部類。その中でも真面目に勉学に励む者達も勿論いる。だが、アレク王子と四六時中ラブラブしていて、勉学を学んでいる気配はなさそうだった。

 そんな彼女が、生徒会の仕事を手伝える訳がない。マークは適当かつ嫌味を交えて言ったに違いない。



「それで? 出来ていたの?」

 やってやれない事もないだろうけど、いつもブラブラ遊んでいる彼が真面目にやったのだろうか?

「出来てたわよ。一応」

 友人とは云え普段はなるべく敬語を使うマリアンが、敬語も忘れ苦笑していた。

 出来ていなかったら文句の1つや2つ、言ってやろうと意気込んで来ただけに、何処か肩透かしみたいでガッカリだった。 

「やれば出来るんだよなぁ」

 だから、余計にイラっとする。マークはそんな声が混じっていた。

「それで、当の殿下は?」

 相変わらずいる様には見えないが、メリッサは一応辺りをキョロキョロ。うん、安定していらっしゃいません。

「いる方が奇跡。"使えない輩め" って書類を放ってマーガ……じゃねぇや中に……えっと」

「構わないわよ。事実を」

 口を濁すマークの小さな優しさに笑いつつ、メリッサは訊いた。

 嘘を吐かないのも、ある意味優しさだ。

「マーガレットさんの所?」

「安定しているわね」

 もはや、呆れを通り越して感服する。

 かつて、自分の所にここまで通ってくれただろうか?

 考えても通って来てくれた覚えが全くない。それはもう、悲しいくらいに。



「ところでサーチとリースは?」

 あの2人もここにはいない。書記であるサーチの手伝いに良く来ていたのだが、最近見ていない。

 あれから、何もなかった事を祈るのみ。



「あ~」

 訊いた途端にマークは遠い目をしていた。

 何かがあったのは確かな様である。

「マリアンは知っているの?」

 婚約者のマークから聞いているのかと、メリッサは訊いた。

「私もまだ、聞いてないのよ」

 そう言ってチラリと婚約者を見た。丁度訊こうとしていた処だった。

「教えてくれるかしら?」

 これでも友人として、サーチもリースも心配しているのだ。

 なるべくなら円満に解決して貰いたい。



「ナンか大変?」

「「マーク」」

 肩を落としておどけたマークに、メリッサ、マリアンはハッキリ言えと詰め寄った。

 大変? とアバウトな答えは待っていないのだ。

 こっわと1つ声を上げ、マークは渋々口を開いた。



「結論から言うと、リースが一緒にいた相手は、ただの同級生だった」

「あぁ。やっぱり同級生」

 メリッサとマリアンは、やはりそうだったかと安堵した。

 あのリースに限ってとは思っていたが、話を聞く限りやはり浮気ではなさそうだ。同級生とたまたまいただけで、何の問題もないだろう。では、何処が大変なのか。

「サーチっていつもあぁだろ? だから、構って欲しくてわざと見せつけてたんだってさ」

 マークは両手に頭を乗せ、ソファにもたれ掛かった。

 聞いてみれば実にアホらしい話だった。

「何ソレ。ヤキモチを焼かせたかったって事?」

「そういう事」

「あ~」

 マリアンは思わず呆れた様な声を出してしまった。

 だけど、くだらないとは言えなかった。考えてみるとサーチは、いつも妙に生真面目で真っ直ぐだ。だから、わざとこの生徒会から見える処で見せつけ、自分を本当に好きか試したかったのかもしれない。



「それの何が大変なの?」

「サーチの嫉妬深さが半端なくなった」

「半端ない?」

 メリッサとマリアンが顔を見合わせた。

「彼女の周りに男が近付いていると、どういう理由で近付いたのだと身分を調べられ関係を調べられ……排除みたいな?」

「「あ~」」

「俺も例外なく近寄れない」

 マリアンが疑問を口にしてみると、マークがお手上げとばかりに両手を挙げ苦笑していた。

 どうやら、無関心から超絶な束縛に変わった様だ。極端過ぎる。親友でもあるマークでさえも、ことごとく調査されたとの事だった。



「ちなみに、お前等も調べられているからな?」

 他人事の様にしているメリッサとマリアンに、マークは半笑いを浮かべた。

「「は?」」

 女である自分達が、何故調査されなければならないのかが分からない。そもそも今更、身分を調査する必要性が見出だせない。

「男はゴミ屑。使えない女は(ちり)

「……何ソレ」

 メリッサは押し黙り、マリアンは唖然としていた。

 サーチ曰く、リースに近付く男は問答無用で排除。リースに要らぬ情報や知識を、与える可能性のある女は不利益。どちらももれなく排除だそうである。

「え? リースはそれでいいのかしら?」

「しらねぇ」

 マリアンが心配そうに訊いてみれば、マークは空笑いしていた。


 






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ