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第五話 自業自得



「この事案は今日迄にやっておけと伝えたであろう!!」

 帰宅する時間となって、やっとフラりと現れたアレク王子の怒号が生徒会室に響いた。まさに棚上げという。



 結局あれから、サボり魔の王子のために仕事をやるのはバカバカしいという結論となり、皆で放棄していたのだ。

 楽しくお茶会を開いて、アレク王子の悪口……陰口を叩いていた。


 そのお茶会の場を作った事で、アレク王子がいかに遊び呆けているかを知ったサーチは、アレク王子を見限り始めていた。

 婚約者であるメリッサ的には複雑だが、自分の苦労を知って同情してくれる仲間が増えるのは有り難い事である。



 マーガレットとの浮気を【真実の愛】と思い込まされていたサーチだったが、テラスからたまたま見えたリースに驚愕。知らない男子生徒と仲良く歩く姿を見て、こういう事かと完全に理解した様だった。

 ちなみにそのサーチはテラスから飛び降り、現在リースに詰め寄りに行っていていない。

 リースの行動が浮気ではなく、ただ歩いていただけ……であって欲しいと願う皆だった。



「何を黙っているんだ!!」

 沈黙したまま誰も口を開かないので、アレク王子はさらに憤慨していた。

「大変申し訳ありません。メリッサ様は具合が悪いと早退なされましたので、"代わりに"会長の指示がありませんと案件が進みません」

 わざとらしく、会長のお前がメリッサの "代わり" なんだよと嫌味を含ませ、マークは書類の束をアレク王子の目の前にすべらせた。

 メリッサはお茶会がお開きになってすぐ、皆に見送られ先に帰宅していたのだ。アレク王子が来たら具合が悪いと口実にするためだ。

 とはいっても、良く目を通せばサインだけで済む様にしてあるモノばかりである。読む気があればの話だが。



「何? 私に黙って帰ったのか」

 アレク王子は眉を寄せた。

 皆に伝えて自分に伝えていかなかったメリッサに、アレク王子は少しだけ不服そうだった。

「生徒会の時間なのに "何故か"殿下がいらっしゃらなかったもので」

 何故かを強調し、マークはニコリと笑って見せた。

 しかし、目は1ミリも笑ってなどいない。暗にテメェサボってんじゃねぇよ! と言っているのだ。

「……っ。私とて忙しいのだ!!」

 マーガレットと会うから?

 皆は半目だった。

「さようでこざいましたか。では、我々はこれにて失礼致します」

 王子の話を適当に流し、マークはソファから立ち上がった。

 王子のために、これ以上時間を割くのはバカバカしいからだ。



「待て!! これを私一人にやらす気なのか!!」

 アレク王子はバンと机を叩き、慌てた様に皆に言った。

 マークどころか、マリアン達まで扉に足を向け始めたからだ。 

「殿下。"副"会長であるメリッサ様はその量を "いつも" お一人でこなしておられましたわ」

「あのメリッサ様でさえ出来たのですから "会長"である殿下ならお一人で "簡単" に出来るでしょう」

「いつも、会長の手腕には脱帽致します」

「「「では」」」

 と全員一斉に頭を下げた。

 皆は合わせた様に持ち上げながら落とすという、奇妙な言動をし足早に扉に向かった。

 アレク王子が "浮気"で忙しいように、こちらは "勉強"で忙しいのだ。尻拭いなどしたくない。



「なっ!」

 まだ何か言い足りないアレク王子が、皆の背に向かい言いかけていた……が、全力で聞こえないフリをした。

 振り返ってしまえば、ほだされてしまいそうだからだ。〇〇程可愛いモノである。美形で可愛いから余計なのだ。

 だから、心底嫌いにはなれない。厄介なお方だと、皆は溜め息を吐くのであった。

 





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