表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王弟殿下の恋姫 〜王子と婚約を破棄したら、美麗な王弟に囚われました〜  作者: 神山 りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/35

第二十一話 両親の思い

 


 【1週間後】




 アレク王太子と侯爵令嬢メリッサの婚約白紙。

 アーシュレイ王弟殿下とメリッサの新たな婚約は、瞬く間に王都を駆け巡り国全体に広まっていた。



 王都以外では王弟アーシュレイの純愛だと噂されていたが、王都では根強くアレク王子の浮気が原因だとされていた。

 何故なら、学園に通う貴族の多くは2人の婚約の白紙の原因が、アレク王子とマーガレットの事だと知っているからだ。

 学園での事を、子供から聞いた大人達が社交場の噂として話し、それが使用人から庶民へと流れたためである。

 今や貴族でも恋愛結婚は多い。それ故に、アレク王子の浮気は世の女性からは大ひんしゅくものであった。

 勿論、原因の一端であるマーガレット家も渦中にあり、社交場では白い目で見られている。



 だが、それも一時的なもの。

 下級貴族マーガレットが射止めたのが、この国の王子。良識を問う者、妬む人も多いが、次第に身分を越えた愛だとすり替わっていくだろう。

 何故ならば、あのアーシュレイ王弟殿下が、やっと迎えた婚約相手が甥の元婚約者メリッサである。

 アレク王子より人気がある彼の話の種が、瞬く間に成長を見せ大きな花を咲かせたからだ。



 庶民は、くだらない醜聞より人気のある話が、尾やヒレを付け一人歩きする。

 愛する者が、アレク王子の婚約者に決まってしまった憐れな王弟。

 しかし、愛の力で取り返した純愛。

 王都では劇まで上演され、アレク王子の浮気より、2人の結婚を祝福するムードになっていたのである。



 劇では、王子の浮気性に苦しむ令嬢が王弟に慰められ、次第に本当の恋を知るラブストーリーになっているらしい。

 くしくも、アーシュレイの思惑通りに、事が運んでいるのである。




「王都はもう凄いですわよ。お嬢様!!」

「まだ婚約ですのに、結婚ムードですわ!!」

「お嬢様の侍女をやっていて本当に良かった。なんだか嬉しくて」

「アレク殿下なんて捨ててしまって大正解!!」

「王都は今、お嬢様と王弟殿下一色です」



 街を見て来た侍女達が、メリッサに事細かく説明をしてくれたのだ。

 王都は華やかな雰囲気で、フォレッド侯爵の使用人というだけで、お祝いのメッセージと花や菓子を貰えるのだと。

 アレク王子との婚約が決まった時にはなかった、お祝いムードに侍女達は嬉しそうな表情をしていた。



「そ、そう」

 メリッサは苦笑いしていた。

 アーシュレイは嫌いではないし、好きか嫌いかと言われれば好きである。アレク王子と比べるまでもない。

 だが、自分の結婚を皆にここまで喜ばれると、内心複雑である。制約結婚だと知らない侍女達には、申し訳なくて仕方がなかった。

 自分がこの状況で、他に好きな人が出来たりしたら、落ち込むだろうと心配である。



「この状況を読んでいたのか」

 王城から帰宅した父が、開口一番に言った言葉がそれだった。

 陛下と王妃に、アーシュレイとの結婚を了承した旨を伝えれば、2人は既に知っていた。

 メリッサの両親に許可を貰うより、先に手を回し断れない状況にしていた様である。

 メリッサを息子アレクの妻に出来なかった事を、王妃アマンダは嘆き惜しみ、国王陛下は終始渋い顔をしていたそうだ。

「ここまで騒がれてしまっては、当分の間はメリッサの相手など探せる訳がない」

 隣国にしても結婚式が終わり、大分経った後でなくては打診さえ出せない。

 それが国内であれば尚更である。王弟の妻を下賜されるにしても、ある程度熱りが冷めない限り、受け口などある筈もなかった。



「食えない」

 父は、堪らず舌打ちをしていた。

 アレク王子相手なら多少自分が優勢な立場を取れるのに、あの王弟アーシュレイ相手では、取るどころか取られる未来しか視えない。

 父が1番嫌いなパターンであった。




「……」

 そんな父を見てメリッサは思う。

 やはり、アーシュレイとの結婚を決めて良かったと。

 どう転んでも父は宰相である。国が1番、娘は良くて4番か5番だ。



 アーシュレイと結婚をしていなかったら、アレク王子との婚約は白紙にならなかった可能性大だし、政治の駒として隣国へ行かされたかもしれない。

 妻の手前は一応、メリッサを阻害しない人物を探しただろう。だが、全く知らない相手と、愛を育めるかと言われたらノーである。




『共感や尊敬出来る人とーー』




 アーシュレイの言葉が耳に残っていた。

 確かにそこに愛がなくても、相手を敬う気持ちがあるとないとでは全然違う。それがなければ、妻として支える気になれないのだから。




「殿下と添い遂げても良いと思うわよ? メリッサ」

 そんな父を愉しそうに見ていた母が、メリッサの肩をポンと叩いた。

 殿下とは勿論、アーシュレイの事だろう。

「あの方にも確かに思惑はあるけれど、貴方の事を大切に思う気持ちに嘘はなかったわ」

「……はい」

「幸せになるのよ? メリッサ」

「はい」

 そう言って、母ローズはメリッサを優しく抱きしめた。

 もうすぐ嫁ぐ娘を、名残惜しむ様に。

 

 



















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ