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309 地魔獣、人類のために戦う

 地中から……狼が飛び出してきた!?

 しかも巨大な!?


 さっきから想定を超えることが起こりすぎてもう思考が追い付かない!?


「……きゃああああああああーーーーーッ!?」

「今度は何!?」


 遠くより聞こえてくる叫び声。

 悲鳴。


 それはどんどん近づいてきて、最終的には俺に激突した。


「ぐえッ!?」

「いたたたたた……! きゃあッ!? 人を下敷きにしてしまったわ!?」


 俺に激突してきた誰ぞやかが言う。


 何だ彼女? 空から降ってこなかったか?


「……ってキミはレーディ!? なんでこの状況で!?」

「ダリエルさんじゃないですか、お久しぶりです!」


 勇者レーディ。


 ほんの二年ほど前に魔王へ挑んだまま消息不明となり、一部からは死亡説まで出ていた彼女が……。

 ……なんでまた唐突に現れた!?


「ご無沙汰してます! その節は本当にお世話になって……!」

「いや挨拶はいいんだけど……一体何がどうなっているの!?」


 この際だから電撃登場したレーディに一切合切説明してほしいぐらいだった。

 今起きている一連のあれやそれやは、俺には理解できるものが何一つとしてない。


「魔王……闘神様の御厚意で、今までずっと修行していたんです。極魔獣フェンリルを相手に」

「魔獣!? 何!?」

「あの子が閉じ込められている異空間でずっと戦っていたんですが……。なんか急にその空間自体が崩れ出して……。……ギガントマキアさん」


 レーディが水を向けたのは、これまた正体不明な土くれの巨人だった。


 もう唐突に登場したヤツが多すぎて理解が間に合わない。


「ここって地上ですよね? どうなってるんですか? フェンリルは地上に出てきてはいけないんでは?」

『創造主様が決められたのだ。ヤツを封じるための力が断たれた。檻を維持できなくなれば、こちらの世界へ飛び出してくるのが道理』

「一体何故……、フェンリルちゃんが解き放たれたら、この世界も滅ぶんでしょう?」

『その理由を知っているのは、恐らくこやつだ』


 レーディと土巨人の視線がこちらを向く。


「……ダリエルさん! 何やったんですか!?」

「間髪入れず俺のせい!?」


 いや、俺自身どんな事態なのかまったくわかっておらぬのですが!?


 あの巨大な狼は何なんだ?


 今のところ飛び出してきた地点から動かず遠吠えを上げて。

 居合わせた魔王軍兵士や冒険者たちも呆然と注目するばかりだが。


 激しい地震もピタリとやんで、あれは大狼が地表へと駆け上ってくるための振動だったというのが今ならわかる。


 今は別の意味で、場が極限まで緊迫しているが。


「あのワンちゃんは、極魔獣フェンリル。闘神様が作りだした魔獣の中でも最凶最悪と恐れられる一体です」

「いやだから、極魔獣って何!?」


 魔獣については、俺も多少の知識はある。


 炎魔獣サラマンドラ。

 水魔獣ハイドラ。

 風魔獣ウィンドラ。

 地魔獣ギガントマキア。


 かつて魔王様が生み出したという四魔獣は、あまりに強力過ぎるために創造主の制御を受けつけず世界中を勝手気ままに徘徊している。

 その存在は暴威という他なく、偶然にでも出会ってしまえば一方的に殺されるしかない。


 飼い慣らすことのできない凶悪の中の凶悪。

 それが魔獣であったはずだが……。


「魔獣は全部で四体……、四属性をそれぞれ担うモノたちのはずだ。極魔獣なんて聞いたことがないぞ!?」

「魔獣には五体目がいたんです。それこそ世に知られる四魔獣をも凌駕し、本当の意味で魔王……闘神様を倒すことのできる最後の魔獣」


 それがあの狼だと?

 極魔獣フェンリル……!


『創造主様の望みは、あのフェンリルによって達成されるはずだった。しかしそれは叶わなかった……!』


 説明を受け継ぐように土巨人が言う。

 コイツも何なんだ?


『アレはあまりに貪欲すぎ、際限なく……。仮に創造主を倒したとしても、そのあと自分の食欲の赴くまま世界を食い尽くし、すべてを無に還すだろう。それでは意味がない。あの御方は、自分を超えられることで世界がさらに発展することをお望みなのだから』

「だからフェンリルは封印された。次元を分断された異空間に……!」

『しかしたった今フェンリルの封印は解かれた。これがあの御方の意志であることは間違いない。それはつまり……』


 土巨人は言う。


『この世界に存在する価値はないと、あの方ご自身が判断されたということ。フェンリルの牙をもってこの世界に終止符を打つ。強すぎるあの極獣に務まる役目はそれぐらいのものだからだ』

「つまりあの狼は……」


 ……この世界に設定された崩壊装置?


『フェンリルは今のところ、創造主を滅ぼしうる唯一の可能性。しかしそれが達せられる時、世界も同時に滅びる。創造主様が、この世界に失望なさるとしたらその理由は一つだけ……!』

「そ、それは……!?」

『もっとも期待をかける人類が、あの方を超えようとすること……あの方を倒さんとすることをやめた時だ』


 ……!?

 それってまさか……!?


 俺がベゼリアに乗せられて人間族魔族の和解を決めちゃったから!?

 だからもう人類は魔王様を超えるつもりはないってことで、滅ぼすことに決めた!?


 そのための装置があの大狼ってことなら……。


「やっぱり俺のせい……?」

「ほうら! また何かやったんですねダリエルさん!」


 魔王様は全知全能。


 ここでの経緯もきっとどこかからつぶさに見守っていたことだろう。

 世界中どこででもあらゆることがわかるお方だ。


 そこで俺の決断を見届けて、この世界への興味を失ったとでも!?


『フェンリルを解き放った……。そのこと自体がもう破滅の容認。この世界は、あの方に見捨てられたのだ……』


 震える土巨人。


『……しかし、この地魔獣ギガントマキア。今日こそは創造主様のお考えに歯向かいますぞ。私もこの世界で数千年と存在し続けてきた。この世界の在り方も理解しているし、好んでもいる』

「ギガントマキアさん……?」

『今さらアナタの一存だけで壊されてなるものか!!』


 土巨人から放たれる気迫が凄まじい勢いだ。

 それこそ地を揺るがし、地面の上にあるものすべてを薙ぎ倒さんばかりに。


『創造主よ! アナタより賜った我が使命はまだ終わってはいない! 私の意志で終わらせない! フェンリルを抑え込み、現世に影響をもたらしてはならぬという職責を、私自身の判断で執行する!』

「えッ? なんだ!?」


 周囲からも異変が巻き起こる。


 地面が盛り上がり、小山のような大きさまで土が膨れ上がったと思ったら、形が整い、人の身なりとなって独りでに動き出す。


「あれは土巨人……、が、たくさん増えた!?」


 見る見るうちに数を増やしていき、状況に理解が追い付く頃には百体以上にまでなっていた。

 これではちょっとした軍団だ。


 しかし土人形一体一体の体躯が巨大なため、充分に圧倒される大軍団ともいえる。


 突如現れた軍団に、居合わせた魔族人間族も驚き戸惑うばかり。


『人の子どもは下がっておれ、これから始まるのは魔獣と魔獣の戦い。お前たちの想像を超える激戦となろう』


 一番最初にいた土巨人は、さらなる変化を遂げようとしていた。


 元のサイズよりさらに肥大化し、他の土巨人よりも遥かに巨大な威容を見せつける。

 その体表から魔力? オーラ? とにかく目に見えるほど濃厚な生体エネルギーが噴出し、その様は豪奢なローブで体を飾るかのようだった。


 それはまるで、新たに呼び出した土の巨人軍団の指揮官であるかのように。


「これが……ギガントマキアさんの戦闘形態?」

「ちょッ!?」


 さっきからチラホラ言っているけれど、あの土巨人の名前がギガントマキア?

 さすがに聞き覚えがあるというか……。

 その名は……。


「サラマンドラやウィンドラに並ぶ……四魔獣の一体!?」

「そうです。地魔獣ギガントマキアさんは四魔獣における最強格として、自分たちよりさらに一段上の存在であるフェンリルちゃんを監視する役目を与えられたんです」


 役目!? 誰から!?

 そりゃ決まっているなあ……。


「魔王様か!?」

「そうです、ギガントマキアさんはミスリル鉱山よりさらに奥深くの地中で、ずっと封じられてきたフェンリルちゃんを見張ってきた。ちゃんと封印が機能して、もし封印の綻びを衝いて脱走しようとするなら、それを食い止めるために……!」


 魔獣はもう魔王様に従わないものと聞いていたが、そんな律義な魔獣がまだいたんだな。

 しかも、監視対象であるフェンリルが完全に現世へ抜け出した今なお、ヤツを抑え込もうとしている。

 全力を挙げて。


『全軍突撃! こうなったからには餓鬼界に押し戻すことも叶わぬ! ならばやるべきはただ一つ、極魔獣フェンリルを滅殺せよ!!』

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― 新着の感想 ―
[良い点] レーディちゃん、お帰りw [一言] 鉱山大魔神様の名前ギガントマキアさんっていうんですね…名前の通り一人で巨人大戦始められるんですね。なるほどなるほど。
[気になる点] ダリエルの悠長さ
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