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189 『天地』のイダ、訪問する

 魔王軍四天王『天地』のイダ。


 現役の人ではない。かなり過去に四天王の座についていた御方だ。


 かなり過去とは言うが、それこそ途方もない過去。

 具体的には何百年か昔のこと。


 普通ならそんな人、現代に生き残っているわけがない。


 しかしいる。


 過去歴代の四天王の中で最強クラスと言っていい数人の中に間違いなく入る、四天王イダが。


「やあ」

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!?」


 俺は悲鳴を上げた。

 そりゃ上げるわ。


 つい先日、レーディや彼女の仲間たちがどんな目にあわされたことかコイツに。

 俺も危うく殺されそうになったしね!


 そこで俺はもう即刻行動に出た。

 悲鳴を上げつつヘルメス刀を取り出し、剣形態に伸ばして斬りかかる。


「ぎゃああああああッ! うぎゃああああああッ!」

「おいおい、落ち着きなさい。冷静さを保ちなさい」

「ぎゃああああああああああああああああああああああああッ!! おぎゃあああああああああッ!! きゃー! きゃー!」


 くそッ!?

 なんでコイツ真っ二つにしても生きてるの?


 ヘルメス刀の刀身は確実にヤツに届いて、脳天から股下まで突き抜けて一刀両断しておるんだけど。

 斬り分けた傍から断面くっつけて再生してんじゃねーよ!


 不死身か?

 こんな凶悪極まる再生魔法なんて存在しないはずだけど!?


「うーん? 今この時も私の周囲には空間歪曲が働いていて悪意ある攻撃を逸らすはずなんだが? なんで当たり前のように突破して私を膾切りにできる?」


 くっそ!

 当たり前のように斬った傍からくっつきやがって!


 こうなったら横に斬ってやる!

 えいッ!

 上半身と下半身を斬り分けてやったと思ったのにくっついた。


「だからなんで空間歪曲が効かないのだ? 前に会った時はチラリと見かけただけだが、あるいは現役の女勇者よりキミの方がヴァルハラに昇る資格があるのでは?」

「うわあああああッ!?」


 こうなったらコイツがバテて再生しなくなるまで斬り続けてやるううッ!

 鞭形態に変えて粉々に打ち砕くのもいいな。


「活きのいい強者だ。挑むというなら迎え撃たねば非礼になる。共に殺し合いを愉しもうではないか」


 おお!? やんのかー!?

 来るなら来てみろ愛する妻子は必ず守ってみせる!


 本格的に戦闘モードへ入ろうとするところへ……!


「おやめなさいッ!!」


 うおッ!?

 ……ビクッとした。


 なんだ今の声は?

 たしかに鋭い大声ではあったけど、それだけではない何か妙な感じが……!?


 おかげで俺は硬直して動きを止めてしまった。

 不覚。

 しかしそれは相手も同じようで『天地』のイダも叱られた子どものように身を竦めている。


「……イダ殿、軽率な振る舞いは控えるよう約束したばかりのはず」

「いや待って。これはね? 向こうから仕掛けてきたので仕方なく……!?」


 女性だ。

 女性が一人立っていた。


 二十代半ばといった年頃で、鍛えていることが一目でわかるスラリと引き締まった肉体。

 そして肌の色は、イダと同様不自然なまでに白かった。


「……アナタも、一目見た瞬間に斬りかかってくるとは何事ですか。言葉もなしにいきなり行動とは、まるで獣のよう。まさにあの男そのものだわ」

「いえ、そこのヤツとは因縁があってですね。なのでタイムレスで斬っていいかなと……!?」

「口答えしない!」

「はいッ!?」


 なんだろう?

 このお姉さんに叱られると身が縮む思いがして、反論の言葉もうまく出てこない。


 何やら俺自身、生まれつきこの声に抵抗できなくなっているような……!?


「まったく男どもというのは……!?」


 女性は呆れた溜め息をついてから、気持ちを切り替えキッとした表情となる。


「ゴタゴタのために挨拶が遅れましたが、まずはご安心を。私たちはアナタと敵対するために訪れたのではりません」


 それをあっさり信じろと?


「信じるか信じないかはアナタの自由。しかし私たちはあの御方……、アナタの言う魔王の意向でここへ伺いました。アナタには、あの御方の意思に逆らうことはせぬはず」

「うぐッ!」


 たしかに。

 真の出自が判明して人間族として住み暮らすようになった今でも、俺は魔王様への忠誠心をそこそこ持っているぞ!


 そんな魔王様の名を出すコイツらは、本当に一体……!?


「名乗らせていただきます。私もこちらのイダ様も、魔王様の名を果たすため地上へと降り立ったヴァルハラの使徒……」


 白い肌の女性は、済んだ声で言った。


「そして私の名はエステリカといいます」



 とにかく仕方がないので、この二人を家に上げる。

 そして応接間を兼ねたリビングへと通す。


 そこには別件の客人であるドロイエとゼビアンテスもそこにいたので、遭遇した時はもうパニックだった。


「イダ様!? なんでこちらに!?」

「ありえない場所でとんでもねー御方と出会ったのだわ!!」


 気持ちはわかる。


 付き添いの女性の名前……エステリカとやらに聞き覚えはないがもう一人は確実に、歴史に名を残した超偉人。


 そんあ『天地』のイダにお宅訪問されるなんて、なるほど現実感がない。


「ここを訪ねたのは、まず詫びを入れるためだ。すまん」


 リビングのソファに座って、歴史上の偉人が頭を下げる。

 なんで?


「あれから魔王様に叱られてな。本来の役目を忘れ、人間族の領土を荒らし回った挙句、現代の勇者と激戦を演じてしまう。しかももう少しで皆殺しにしてしまうところだった」


 あの時。

 追い詰められた『天地』のイダは本気の攻撃を繰り出してきた。

 あのままではレーディ始め多くの戦友たちが生き埋めにされてしまうという寸前のところで信じがたい現象が起き、イダは目の前から消え去った。


 信じがたい現象というのは、何やら巨大な手が天空から降ってきて、そのデカ手がイダの全身を鷲掴みにして天空へと戻っていった。

 という素っ頓狂な現象であった。


「じゃあ、あの手ってやっぱり……!?」

「それ以上は口に出さぬ方がよいかと」


 エステリカさんなる女性から制された。


「このように現世へ迷惑をかけ、強制召還を受けたイダ様ですが、しかしヴァルハラへ戻すわけにはいきません。この方にはまだ現世に手果たさねばならぬ大事な使命があるからです」

「あの赤マントですか?」

「左様。こちらではインフェルノと呼ぶ方が通りいいようですね」


 ここ最近起きた事件、そのほぼすべてに関係し、暗躍していた人物。

 いや、人と評していいのだろうか?


「アナタにはイダ様から多大な迷惑をかけてしまいました。あの御方も憂慮し、アナタになら事情を説明してもよいと許しをいただいています。これまでアナタが被った迷惑の賠償として」


 ……まあ。

 ここ最近なんか色々と起こりすぎているからな。


 それが何故引き起こされたのか、その理由も知らされず蚊帳の外に置かれるのは気持ち悪いものだ。

 ガッツリ当事者の扱いをうけているのにな。


「どうします? アナタの周囲で起きたあらゆる災厄の内情をお聞きになりますか?」

「……わかりました。説明してください」


 それをもって先日イダが人間領内で暴れ回ったけじめとしようじゃないか。

 実際迷惑をこうむったレーディらには何のけじめにもなってないがな。


「いいでしょう。では改めて宣言しますが私たちの目的はインフェルノを討伐すること。イダ様も、そして今ではこの私も、そのために現世へと遣わされました」


 インフェルノ……。


「俺も一度だけですが直接会いました。そして戦った」

「ならばおわかりでしょう、あの者の異常さが」


 たしかに。

 単純な戦闘力だけでも間違いなく、俺が過去見てきたものの中でもトップクラスの強さだった。

 グランバーザ様やアランツィルさんを見てきた俺の目から見てもだ。


 それだけでも異様だというのに、ヤツがまだ生きているというのが理解できない。


 俺は、ヤツを倒したはずなのだ。

 脳天にヘルメス刀の刃を入れて股下まで斬り下した。ヤツは左右真っ二つになって、何故か炎上し、死体は灰も残らず焼き尽くされて地上から消え去ったはず。


 なのにヤツはまだ生きているという。

 どういうことだ?


「ヤツは既に死を超越しております、だから殺されても死にようがない。ヤツは既に一度死んでいるのです。そして地獄へと落ちた」

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