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185 ドロイエ、訪問している

 こうしてガシタvs出戻り三兄妹の模擬戦は、ガシタの圧倒的勝利で幕を閉じた。


「……なあダリエル?」


 一緒に観戦していたグランバーザ様が言った。


「強すぎんか彼?」

「そうでしょうか?」


 まだまだ詰めの甘いところもあるなあと指導した身としては思うのですが。


「いや私の現役時代、アランツィルが引き連れてきたパーティメンバーにも、ここまでの使い手はそういなかったぞ!? 何あれ? 才能か!? 天賦の才に恵まれたのか!?」


 またグランバーザ様も大袈裟だなあ。


「オレはそんな御大層なもんじゃないっすよ。臆病で弱っちいただの村人っす」

「そんなことを言うヤツがもっとも危険だ……!!」


 グランバーザ様の警戒感が凄かった。


「いや、これでもオレ、少し前までは、てんでダメ太郎だったんすよ? ウデもないクセに自信ばっかり大きくて。今思い出しても恥ずかしいっす」

「それがどうしてこんなことに……!?」


 こんなこと呼ばわりされているガシタ。


「そりゃ、すべてはダリエルのアニキのお陰っす! アニキがオレの性根を叩き直して正しく導いてくれたおかげっす! アニキは俺の恩人っす!」

「いや、そんなことないよ?」


 ガシタが自分を鍛え上げたのはあくまでガシタ自身の成果だよ。


 しかしそれを聞いたグランバーザ様は表情をクシャリと歪めて……。


「そうか……、ダリエルはやはり人を育てる才も人並みならぬな……! ここまでの英傑を育て上げるとは、将器が並々ならぬわ……!」

「いえいえ!?」


 グランバーザ様はお年を召されたせいか、なんかあるとすぐ弱気になる。


 昔の現役時代なら、俺がなんかちょっと手柄を上げても『慢心するでないわ!』と叱り飛ばされたのに。


「だが……、そんな有能なダリエルをつけてなおバシュバーザは使い物にならなかったのだな……。ならば他に誰が指導してもどうしようもなかった……」


 グランバーザ様が弱気なのは老境のためだけではない。

 子息バシュバーザの件はいまだにあの人の中で尾を引いているのだろう。


 歴代最高の英傑といえど、血を分けた息子のどうしようもないほどの不祥事は、お心に痛恨の一撃を加えた。


「大丈夫っすよ! 元気出してください!」


 何故そこでガシタが励ましにいく?


「このオレ! 不肖不才の身ではありますがダリエルのアニキのお陰で何とか一人前になれたっす! あおのアニキを育ててくれたのがアナタなんですから、アニキの手柄はアナタの手柄! このガシタの働きを、どうかアナタの功績として誇ってほしいっす!」


 何なのコイツ?

 なんでこんなに気が利くの男前なの?


 身内だけに却ってやりにくいフォローを、俺に代わってしっかり果たしてくれやがった。


「気遣いすまぬな……。ダリエル、お前は本当によい人材を育て上げた」

「きょ、恐縮です……!?」


 俺自身ガシタの仕上がりっぷりが理想的すぎて困惑を隠しきれぬのですが。


「あのガシタが……!?」

「子どもの頃はただのクソガキでしかなかったガシタ兄ちゃんが……!?」

「こんなに理想の好青年になるなんて」


 そして負けた三人組の視線がいったんガシタへと集中してから、俺へと移った。

 視線には羨望と期待の感情が宿っている。


「つまりこれって、ダリエル様の指導を受ければガシタみたいに一流になれるってことか!?」

「ガシタ兄ちゃんでもここまで仕上がった! ならばオレたちなら!!」

「お願いですお義兄様! アタシたちをA級冒険者に鍛え上げてええええッ!!」


 と縋りついてくるから堪らない。


「嫌だ。俺は村長の仕事で忙しいのだ」


 お前らの指導にまでかかずらわっておれるか。強くなりたいなら勝手に強くなれ。


「騒ぐでないわ小僧どもッ!!」


 うわーッ?


 そこへ恐ろしい一喝が。

 あまりの怖さに金玉縮み上がるわ。


 この怒鳴り声は間違いないグランバーザ様。


「お前たちの面倒はこの私が見てやるといっただろう! ダリエルを育て上げたこの手腕を疑うか!?」

「いいえ疑いません!」「よろしくお願いいたします!」


 三兄妹も瞬時に委縮して、言われるがままに従うのだった。


 これこそグランバーザ様現役時代の気迫。

 三兄妹のダメッぷりが、この御方の英邁を甦らせたか。


「先の約束通り、コイツらは私がきっちり使えるように仕立てておこう。安心するがいい」

「ハイ……」


 別に仕立ててくれなくてもいいんですが。

 でも出来の悪い連中を鍛えることでグランバーザ様に元気が戻るならそれでもいいか。

 この人にはいつまでも元気でいてほしい。


「わかりました。ではコイツらを死ぬまで鍛えてあげてください」

「死んだらダメじゃないの!?」


 スタンビル当人たちの抗議は受け付けない。



 さて。

 そんな風に押しかけ出戻り三兄妹をグランバーザ様にお任せして……。


 それで一段落とはいかない。


 実は今、ラクス村にはもう一人厄介極まる客人を迎えていた。


 その御賓客は、村長宅でマリーカに持て成ししてもらっている。

 三兄妹の件をひとまず片付けて戻ってみると……。


「ただいま……?」


 室内は何とも言えない緊張感に包まれていた。


 マリーカに抱かれているグランくんですら、雰囲気に圧されて沈黙を保っている。

 他にこの応接用リビングに鎮座しているのは二人。


 一人は四天王『華風』のゼビアンテス。


 コイツがここにいるのはもうお馴染みだ。不本意のことながら。


 問題はもう一人の方。


 同じく四天王『沃地』のドロイエ。


 無能揃いと今や散々な評価の当代四天王の中で唯一、まともな評価を得ている人。

 得意とする属性は『地』で、今の四天王は彼女が一人で機能させているようなものだった。


 そんな彼女がラクス村を訪れるのは初めてかなー?


 一体なんで?

 なんで彼女が来た?


「ハイ集合」


 俺はゼビアンテスを引きずって部屋の片隅に移動。

 何故ゼビアンテスか?

 コイツが一番クロっぽいからだ。


「聞かせてもらおうか? 何をしでかした?」

「最初っからわたくしがやらかしたみてーに決めつけんなのだわ! 今回ばかりはわたくしに非はないのだわ!」


 という言い方は、他の件に関しては非があることを意識しているのだな?

 よい傾向だ。


「だからと言って本件にもお前の責任がない証明にはならんがな。言え。どうしてこうなった?」

「だから、やむにやまれぬ事情なのだわ! ドロイエのヤツは前々からアンタのことを探していたのだわ!」


 え? 俺を?

 そんなこと初めて聞いたんだが?


「それなのにこないだアンタの方からノコノコ彼女の前に現れたのだわ! おかげでアンタの所在がバレちゃったのだわ!!」


 えッ? 俺のせい?

 そう言えばこないだ偶然ながらドロイエと再会したことがあった。


 例の『天地』のイダ騒動で魔族側の様子を窺いに行って、消滅したラスパーダ要塞に遭遇してしまったのがいけなかった。


 あんなの見たら詳しい事情を聞きたくなるのはしょうがいないだろう。


 脱出した魔王軍に合流し、グランバーザ様やゼビアンテスと普通に話しているところを目撃されてしまったというわけだ。

 ドロイエにさ。


「あの後徹底的に問い詰められて口を割ってしまったのだわ! でもそれは疑われるきっかけを作ったアナタのせいで、断じてわたくしに責任はないのだわ!!」


 わかったわかった。

 じゃあ今回は一応俺が悪いと言うことにしておいて……。


 でも結局ドロイエは、グランバーザ様がこっちに窺うのに便乗してきてしまったらしい。


 でも一体何故?

 何しに?


 俺のことを探していたというが?


「話は終わったか?」

「はいッ!?」


 ドロイエの方から話しかけられた。

 何この積極性?


「では早速だが私の用件を切り出そう。極めて重要なことだ」


 はい?

 何でしょう?


「暗黒兵士ダリエルに命じる。再び四天王補佐に任じる。貴様の優れた見識能力を魔王軍のために役立てるのだ」

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