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154 ダリエル、都に上る

 俺。

 センターギルドへやってきた。


「遥々来たぜ?」


 ラクス村から。

 ここが人間族の中心地なんだな。

 人間族の領域内に無数にあるギルド支部。その中心にして頂点にあるのがセンターギルドであるらしい。


 センターギルドが振るう権力は人間族の中で最高のもの。

 都市を統べる総督や、国家を治める国王ですらおいそれとは逆らえない。


 何しろ冒険者のすべてを統括するのがギルドなのだから。

 ギルドには登録した冒険者に闘神の加護を与え、オーラを開放させることができる。

 魔法を使う魔族や、モンスターとまともに戦えるのがオーラを使える冒険者だけならば、その戦力は貴重。


 誰にもその価値を否定されず君臨することができるというわけだった。


 いまやギルドの中心、センターギルドが本拠をかまえる街は、人間領の中心として大いに栄えていた。


「ここがセンターギルドなのねー?」


 俺と同じ馬車に乗って旅してきた妻マリーカが言う。

 その胸には二人の宝物グランが抱かれていた。


「マリーカもセンターギルドに来たの初めて?」

「もちろんよ。アタシみたいな田舎者じゃなかなか来れないもの」


 そういうものか。

 彼女が生まれたラクス村は率直に言って田舎。


 しかも中央たるセンターギルドからは遠く離れている。

 田舎者の懐余裕から見ても、物見遊山に出かけるとして一生に一度あるかないかのことだろう。


 大なり小なりの差はあれど、すべての人間族にとってセンターギルドがそういう場所であるのは間違いない。

 特別な場所。

 もっとも栄え、もっとも豊かで、もっとも美しく、もっとも神聖。

 それが中心地というものだろう。


 それは俺から見ても同様で、俺の目から見たセンターギルドの様子は……。


「ちょっとショボいなあ……」


 という感じだった。

 同じ中心地ということで、どうしてももう一つの方と比べてしまう。


 魔王城。


 魔族の方の中心地ね。

 魔王城は第一義として魔王様の居城であるが、それを兼ねて魔王軍の本営であったり、周囲に城下町があったりと結局のところ魔族領の主都としての機能を充分に果たしていた。


 当然ながら中心地であるだけに市井の住宅からして勢を凝らして整備され、非常に美しい街並みだった。

 対して今目の前にある人間領の主都センターギルドも、ギルドに務める関係者の住宅なのか広大な住宅地が広がり、その住民を客として商業も発展している。


 充分に大都市と言っていいが、しかしどうも……。


「ショボいなあ……」


 という印象を持ってしまう俺である。

 もちろん魔王城と比べれば、という話で本来は充分凄いんだろうが。


 魔族たちは都市建設の際にも魔法を用い、より快適な住環境を実現しようと作り込む。

 そういう際に使われるのは主に土属性の錬金術だが。


 魔法がない人間族の街では、そうした細部のテキトーさが粗になって目立ってしまうようだ。

 俺自身、前半生を魔王城で育ったせいか、両者の違いが余計に浮き彫りになる。


 田舎のラクス村では気づかなかったが、この辺りの違いを参考にできないものか?


 これからラクス村もまだまだ発展させていかねばならない。


 人間領では行き届かない、魔族領における住宅の細部の作り込み。

 魔法なしでもある程度真似できるはずだ。

 それらを駆使してよりよい村づくりに生かしていけないか?


「早速いいアイデアが浮かんだな」


 こういうことがあるから旅はいい。

 ラクス村村長としての仕事をお休みしてまで都会に出てきた甲斐はあったかなという感じだ。


「あら、グランも都会が珍しいの?」


 さっきまで母の胸でスヤスヤお昼寝していた赤子が起き出して、周囲の喧騒をキョロキョロ眺める。

 彼にとっては初めて見るものばかりだろう。


 赤ん坊に長旅させていいものかと出立前は不安だったが、やはり連れてきてよかった。

 たとえ物心ついていなくても、幼く多感な頃に見聞きしたものは必ずや感性を磨いて財産になるはずだ。

 末は博士か大臣になるこの子のためにも、もっとたくさんのものを見て回らせよう。


「ほーら、グラン。ここが都会だぞー! 馬車がたくさん行ったり来たりしてるぞー!」

「もうアナタったら。あまりはしゃがないでください田舎者みたいでしょう」


 こうして家族の触れ合いを満喫する俺だったが、そればかりにかまけているわけにもいかない。

 我が第二の故郷ラクス村から大都会にまで出てきた理由はちゃんとあるのだから。


 目的をつつがなくこなし、しっかり観光も終えて。

 速やかにラクス村へ戻らなくては。



 俺がセンターギルドですべきことは、無論そこにいる偉い人々との目通りだ。


 俺の出生が本格的に知れ渡りつつあるからな。

 大勇者アランツィルの血統。

 それを正当に引き継いだ俺には相当な価値があるらしく、なんか色々企む連中にとっては美味しいらしい。


 俺としてはそんなん関係ない、やるなら余所でやってくれと言いたいところだが、俺のことを利用したい輩が向こうからはい寄ってくるからしょうがない。


 実際ここ最近はそういう流れで面倒ごとに巻き込まれることもあったので、今後繰り返すことがないようしっかり自分の立場を表明しておくことが目的であった。


 ここセンターギルドで。


 ここに来れば何やら企みそうな権力者はあらかた揃っているのだから、そんな彼らに俺を見てもらうことで『俺は利用されませんよ』ということを上手く伝えられれば御の字。


 そんなこと可能なのか?

 仮にも相手は権力の中心センターギルドで権謀術数を繰り広げて生き残ってきた妖怪たちだ。

 素朴な片田舎の村長が丸め込まれずにいられるかと言われれば心もとないところだが、まあ大丈夫であろう。


 俺だって心底純朴であるつもりではない。

 かつては魔王軍の四天王補佐として交渉事も繰り返してきたし、相手の裏にある一物ぐらいある程度見抜ける自信がある。


 それに俺には強力な後ろ盾もいるからな。


 まずは大勇者アランツィルさん。


 一応俺の実父ということになるのだが、俺の意を組んで俺の味方になってくれることだろう。

 歴代最強と名高い勇者の影響力は伊達ではない。


 元々あの人自体権力を毛嫌いする傾向があるから、益々権力闘争に俺が巻き込まれるのをよしとしまい。

 可愛い孫も。


 そんなわけでアランツィルさんがセンターギルドで待っているというので、喜んで力になってもらおうと思っている。


 さらにもう一人。

 俺にとっても意外な味方。


 センターギルド理事長。


 なんと驚いたことにウチのマリーカのお祖父さんに当たるという。

 理事長といえば権力の中枢でもっとも欲に塗れているべき人だが、まあだからこそ俺を利用されないように取り計らってくれるだろう。


 あの人としては既に権力の頂点にあるのだ。

 今さら切り札などいらんだろうし。


 ああ、そう。


 それからこの旅にもう一人の同行者がいる。


 レーディだ。


 正規の勇者である彼女。最近何やらで彼女の立場が揺らいでいるが、それも止めるためにセンターギルドへ戻ってきた。


 修行の成果を報告し、勇者の務めを果たしているという立証のための帰還だが……。


「……うう、心細い」


 何やら不安げだった。


「心配です……! ギルド理事会は無理難題しか言い出さないから、今回もどんな無茶を言い出すか……!?」

「心配し過ぎだろう。レーディは村での修行できっちり強くなっているし、それを見せればもう文句言う人もいなくなるよ」

「そんな楽天的なことは、ダリエルさんが理事会を実際見たことがないから言えるんです! ……はあ、一体どうなることか」


 レーディの不安と、俺の思惑と、あとグランの好奇心を混然一体にしながら。

 センターギルドでの滞在が始まる。

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