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147 ダリエル、都会へ招待される

 俺がラクス村へ帰ると、けっこうな騒ぎになっていて驚いた。


「何これえ……!?」


 多い。

 捕まった犯人多い。


 なんか数十人単位で縄をかけられ数珠繋ぎになっている。


 こんな多人数から襲撃受けたの!?

 せいぜい十人ぐらいからだと思ってたんだけど?


 俺の推察大外れだったなあ。

 ここまで大規模な人員が動いていたとは……。


「はッ!? ということは俺のマリーカとグランは!?」


 何よりもまずそれが気になって我が家に戻る。

 すると普通に無事な二人がいたので安心した。


 襲撃を予測し、しっかり迎撃態勢を整えていたのが功を奏したのか、村に死者はなく、前線の冒険者に少々の負傷者が出た程度で鎮圧できたらしい。


 満点の結果……!


「いや、とても合格とは言えないか……!?」


 この規模の襲撃団は、俺の予測を完全に越えていた。

 そう、もはや『団』の規模だ。


 俺の想像を超える攻撃に耐えきったのは、残って対応してくれたレーディたちの功績であり感謝に耐えない。

 今回の功労者は俺などではなく彼女たちだった。


 レーディたちの報告を聞いて『異様に大きかった敵の規模』『魔法のようなオーラの使い方』といった不穏な報告を受ける。


 ついさっき死闘を繰り広げた赤マントの記憶が早速甦った。

 それら異常なすべてがヤツの筋書きならば不思議と納得がいく。


 本当に何をやってくるかわからないヤツだったから。

 出会ったその場で殺せて『本当によかった』と思う反面『本当に死んだのか?』という不安もまだ残っている。


 かと言って俺にはこれ以上どうしようもない。

 ヤツは死んで、死体の灰すら残らなかったのだから。それ以上どうすればいいというのか。



「……そうか、ローセルウィは死んだか」


 滞在中のセンターギルド理事長へ報告した。

 全ギルドの頂点に立ち、かつローセルウィの上役でもある彼なのだから報告しないわけにはいかない。


「俺は直接見たわけではありませんが……。目撃した者の話によると死体も残らない無残な殺され方であったと……」

「哀れな男だ。身の丈に合わぬ夢を見てしまったらしい。あらゆる破滅は、分不相応な欲望を持った時から始まる」

「それは……、……わかります」


 言われた瞬間ローセルウィだけでなく複数人の顔が浮かんだ。

 最近だけでもピガロやバシュバーザ。


 人は何故、偉大な夢を見てしまうのだろう。

 自分にできることを一つ一つ成し遂げていった結果の、気づいたら偉業を遂げていていましたじゃダメなのか?


 俺は名誉などいらない、歴史に残る必要もない。

 俺が大切にする第二の故郷と家族を守りさえできればそれでいいというのに。


「人間慎ましさが大事だよな」

「その通りじゃ」


 独り言を理事長から拾われた。


「とにかく一連の迷惑をワシからも詫びておこう。センターギルド理事会に所属した者による迷惑じゃ」

「いいえいいえ、お気になされずに!」


 直接迷惑をかけてきたのは理事長じゃないし。

 むしろ理事長さんにはピンチを助けられたくらいなので、こっちから礼を言うべきだ。


「ワシにとっては孫娘の夫。そなたのことはできる限り保護してやりたいと思っている。ミスリル流通に関わる重要拠点に親族が関わっておるのも、考えてみれば悪いことではない」

「はいはい」


 そういう考え方は、俺にとっても悪くはなかった。


 俺の血統に目をつけて、自分のいいように利用せんとする輩はこれからも現れるかもしれない。

 そういう者たちのへのけん制に、現職理事長との血縁というのは非常によく働く。


 これから先またローセルウィみたいなヤツが出てきて、そのたび煩わされるのは面倒だ。

 だからこそ理事長さんの庇護というのは非常にありがたいものだった。


「ただ……」


 俺は心配していることを口にした。


「ローセルウィと一緒にいた人物のことなんですが……。いや、むしろアイツがローセルウィを上手く抱き込み、意のままに操っているように見えました」


 俺自身の見聞きしたことだけでなく、多くの人々から集めた情報を総合すれば、益々アイツの異常さが浮き彫りになる。


 赤マント。

 インフェルノと名乗ったという。


 ヤツはローセルウィと協力関係を結び、俺を勇者に祭り上げるというローセルウィの企てに加担して村を滅ぼそうとした。

 そのための襲撃者百人近くもヤツが用意したらしい。


 いずれも目が赤く血走って洗脳魔法に掛けられていた。

 やはりインフェルノの仕業であろう。

 ヤツが黒幕であったと判明している三勇者暴走事件と手口が重なる。


 しかし詳細がわかってくればくるほどインフェルノというヤツの怪異が極まってくる。


 ヤツが裏に隠れて蠢動する手口のメインは洗脳魔法だ。

 人や魔族などの知性体の感情を暴走させ、術者の意のままに操る魔法。

 言うほど簡単に操作はできないが、とにかく魔法であるには間違いない。


 しかしインフェルノが俺と真っ向からぶつかり合った際、使ってきた闘法は明らかに人間族の冒険者のものだった。


 ここでも矛盾が生じている。


「インフェルノは俺が殺しました。恐るべき敵でしたから……!」


 だからもう安心だ。

 これ以上の対処のしようがない。


 それなのに俺の心からは少しも不安が払しょくできない。


 終わったはずなのに、終わった実感が持てない。


「インフェルノは死に際、誰かに助けを求める言動がありました。ヤツにはまだ仲間がいたのかもしれません」

「なるほど、そちらの調査はセンターギルドで行おう。いつまでもキミたちばかりに苦労を掛けるわけにはいかん」

「お願いします」


 こういうことこそ大組織に任せるべきだろう。

 俺はしがない小村の村長。

 これからは謀事密事に関わりなく穏やかに過ごしていきたい。


「しかし……、これからますますキミの立場は難しくなるのう」

「え?」


 穏やかに過ごしていきたいと思った矢先なのに。


「キミの続柄は特殊すぎる。歴代最強の大勇者アランツィルの息子。現職理事長の孫娘の夫。この二つだけでも腹いっぱいになりそうじゃ」

「はい」

「加えてミスリル流通の拠点となるこの村を取り仕切っておる。実力も勇者級のものを持ちながら、社会的にも無視できぬ影響力……。そんなキミを放置しておくことは、利に敏い連中には到底無理じゃろう」


 と理事長。


「そんな!? アナタの保護を頂けると、ついさっき言ってくれたばかりじゃないですか!?」

「それにも限度があるということじゃ。ローセルウィほど形振りかまわぬことはなかろうが、おぬしを利用しようと思う者は、これから際限なく現れるぞ? そしておぬしもこれから村を守り富ませていきたいと考えるなら、そういった連中を受け入れ、逆に利用していかねばならん」

「う……!」


 そういわれれば、たしかに……!?


「こうなれば……、どうじゃ?」

「はい?」

「一度センターギルドへ来てみては?」


 はいッ!?

 なんでそうなるんです?


「どうせこれからそなたの存在は人づてに明らかになっていく。そのたび興味を持った者が訪ねてきて、対応してでは手間であろう。それならいっそそなたの方からみずからを紹介しに行ってはどうか?」

「センターギルドへですか?」

「あそこなら世の実力者が大抵揃っとるからのう。自分がどういう立ち位置にいて、どのような考えを持っているか知ら示されれば、勝手な期待を抱いてそなたに近づく者も少なくなろう」


『少なく』ですか。

 ゼロにはならないんですね。


 しかしまあそれでもやっとく価値はあるかなと思える理事長のいうことにも一理あるし。

 それに俺も、今では人間族の一人として人間領の中心地に興味がある。


 物見遊山気分で出掛けるのもいいかもしれない。


 マリーカとグランも連れて……家族旅行?


「……それもいいかもしれませんね」


 俺は腹を括った。

 俺は人間族としてラクス村の村長として、センターギルドへ向かう。

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